一番の理解者
いつも通りの日常が戻ってきた。今日は学校だ。はっきり言って気分はよくない。憂鬱だ。睡眠不足ではない。現に、しっかりと俺は早起きができている。だけど、楽しいはずの学校生活に何か引っかかりを覚えている。
なぜだか知らないがそんな気がした。本能的にそう感じる、その程度であるが・・・。
「今日もあいつが起こしに来るのだろう。」
そう思っていた。そこで少しドッキリを仕掛けてやろうと思った。いつもマイペースに引きずられ、度肝を抜かれているが今日こそは・・・。
そう思い、俺はリビングの陰に隠れた。これでやつを待つだけである。時刻は7時。普段は7時30分起床だから、あと30分後にあいつは来るはずだ。それまでは朝食を軽めに取っておくことにしよう。
1時間後・・・・
「こない・・・」
あいつが来ない。用意周到に準備をしておいたはずなのだが・・・。
時刻はもうすぐ8時を回る。
「クソッ、時刻はもうすぐ8時だぞ。もしや・・・あいつの身に何かあったのか?もしかして昨日のか・・・?
やむを得ん・・・、今すぐ確認だ。」
残念なことに俺は携帯を持っていない。だから直接見に行かなければならないというのが面倒だ。
隣の家の玄関はたいてい開いている。これで盗まれないのが不思議なのだが・・・・。数年でまだ一度も盗まれたことがない。もしかすると気づいてないだけなのだろうか。
何はともあれ、かばんは一階にあったから、まだ家にいる。リビングを覗くがいなかった。
おそらく上だろう。高速で階段を駆け上がり奏の部屋に入る。
「おい遅刻するぞ! って、いない・・・?」
俺は度肝を抜こうとしたのに逆に抜かれてしまった。
「ねぇ。」
奏の声がした。後ろを振り返ると彼女の指が俺の頬に突き刺さった。奏は着替えまでも全て済ませていた。
逆に謀られたようだ。
「おまえ・・・待ってたのか。」
「やっぱり来たね・・・。」
読んでたとばかりの表情だった。
おそらくこいつに勝てる未来はしばらく来ないんじゃないか・・。しばらく固まる。しかし奏はなりふり構わず、
「ほら、いくよ~。早くいかないと遅刻するからね。」
とせかしてきた。
そうして俺はあきらめのため息をつく。
「俺のことを一番よくわかってるのは俺じゃなくてお前だよ」
というと。
「当たり前じゃん。」
と返ってきた。それが俺が待ち望んだこの問いについての答えなのかもしれない。
第六幻 おしまい