いろちゃんとなっちゃん
タララー ラララ ラララララー
携帯のアラームが鳴る。設定してある音楽は〝海岸で〟。
私は眠い目を擦りながら、アラームを解除する。隣に目をやると、なっちゃんがいびきをかいて寝ている。
「なっちゃん、起きて」と、声をかけても起きないのはわかっているから、先に起きてベットから下りる。
トイレを済ませたついでに、ユニットバスの小さな洗面台で、ばしゃばしゃ顔を洗い、目を覚ます。
すっきりした。
テーブルの上に置いたスマホでYouTubeを見る。この朝のYouTube時間は、誰にも邪魔されないし外も静かだし、一日の中で一番好きな時間だ。
私はアニメを見るのが好きだったけれど、なっちゃんがYouTubeを見たまま、寝落ちしていたことがあって、何となくなっちゃんが見ていたYouTubeの続きを見たことがあった。
それはナチュラルな暮らしを紹介している、女性のYouTubeだった。その日から、私はそのYouTubeがお気に入りになったのだ。
時間をかけてコーヒーを淹れたり、パンを手作りしたり……何気ない日常が流れるだけだけれど、見ていると落ち着く。
そして、そんな暮らしをいつかしてみたいなぁ、と思う。
朝はナチュラル暮らしを、夜はアニメを見ることが、私のルーティンだ。
気がつくと七時半になっていた。
「なっちゃん! 起きて!」
とベッドにいるなっちゃんに声をかける。しばらく反応がなかったけれど「遅刻するよー!」と言いながら、スマホのアラーム音をわざと耳の近くで聞かせると、ようやく
「うーん……まだ眠いよぉ」
と言いながら、しぶしぶ起きた。
「いろちゃん、おはよう」そう言って、欠伸する。
なっちゃんが私と同じように、トイレを済ませて顔を洗っている間に、私は朝ごはんの用意をする。
私達が毎朝食べるものは決まっている。
私は全粒粉の食パンにバターを乗せたトースト、なっちゃんは牛乳をたっぷりかけたグラノーラ。飲み物は二人ともお茶だ。
ベットの前にある、小さな机の上にそれぞれの朝食を並べた時、なっちゃんがユニットバスから出てきた。
「いただきます」二人でそう言って食べ始める。
「いろちゃんは、どうして全粒粉のパンにこだわるの?」
なっちゃんがグラノーラを混ぜながら訊く。
「糖質オフだから」
「なるほど、体のこと考えているんだ」
と、なっちゃんは言った。
家を出るまで後三十分。なっちゃん、洗い物しないだろうなぁと思いながら、食パンを齧る。
十分程で朝食を終えたら、次は着替え。
洗濯物を畳むという習慣がないので、窓の前に干されたまま、もしくはベットの足元に放られたまま、の服の中から今日の一着を、私となっちゃんは選び出す。
それぞれ忘れ物がないか鞄の中をチェックしたら、玄関へ。今日も無事八時十五分に、家を出ることができた。
二人で並んで歩く。
「今日もいい天気だね」
「あの犬かわいいね。なんていう種類だろう?」
二人で他愛ない話をする。
さて、いつも通りわいわいと、子ども達で賑やかな、門の前まで来た。
「じゃあ、いろちゃん! 今日もいっぱい遊んで。お友達と仲良くね」
「うん! なっちゃんもお仕事頑張って!」
そう言って別れる。
私は「おはようございます!」と、門にいた先生に元気よく挨拶をした。
「いろはちゃんのご挨拶、いつも元気でいいね」先生に言われてうれしくなる。前に友達の姿を見つけて、私は園庭を走り出した。




