第3話 ついに、来ちゃったか〜
ー雷鳴召喚術とはー
雷鳴召喚術は、闇の魔術とされていて、ATSS魔術の一つである。
この魔術を唱えた後は、空が一時的に曇天に変わり、激しい爆音がする。
その後、晴天に戻るが、魔術の効果は初日で起こるものではなく…
効果は、召喚魔法発動後から約1日の間で起こるとされている。
召喚に成功すると、冥界の魔王を召喚することができ、世界を破滅させることが可能である。
ただ、法律上、この魔術の使用は禁止されている。
万が一、使用者がいたのならば、厳しい処罰が下されるだろう。
もし、召喚が成功してしまった場合は打つ手がなしだ。
その時は、歯を食いしばって、死を覚悟するしかない。
魔王を倒そうとする勇者でもいない限り、希望はやって来ない。
「…と、まぁ、こんな感じかな…」
ラオンは、妹に読み聞かせながら、ざっと本の内容を確認した。
[これ、普通にまずい状況なのでは…?]
そう考え、焦りながら妹に尋ねた。
「父と母に見せるべきだよね…?」
ローズもどうやら同じ考えをしていたらしく。
静かに頷いて、図書室から立ち去った。
「…にしても、中庭広いよなぁ…」
ラオンは独り言のように呟いた。
いつもは、思っていてもそんなことはしないのだが…
今回はしょうがなかった。というか、そうするしかなかった。
というのも、さっきから妹との会話が全くない。
原因は明確だったが。
[やっぱ、本の内容を見て愕然としてるんだろうな…]
ラオンは、ため息をついて妹を見守る。
会話がないのは、喧嘩したからとか、そんな可愛い理由ではなく…
命の危機を知ったからだった。
最悪なことに、図書室から王室までは、少なくとも数十分はかかる。
つまり、その間、ずっと沈黙が続く。
ローズを気遣ってやりたいが…
すごい “話しかけないでオーラ” が出ていて、話しかけづらい。
いつ話そうか、なんて声をかけようか。
そんなことを考えて、かれこれ十分。
ついに王室に辿り着いた。
「失礼します。お父様とお母様に用があって参りました。」
「失礼します。妹と同じです。」
ラオンとローズ。2人揃って礼をして、王室に入った。
「2人揃ってどうした? 何か問題でもあったのか?」
王室に入って、1番最初に声をかけてきたのは王だった。
王にしては、珍しく察しのいいことに驚きつつ、ラオンは口を開く。
「えっと… 大変なことになりまして…」
意味ありげに語るラオンを見て、何か不審に感じた女王は、心配そうに言った。
「大丈夫?何かまずい気配がす…」
そこで、突然、また爆音がして女王は黙った。
空が闇に包まれていく。
天候が急に嵐になり、雷鳴が絶えず轟く。
しばらくして、晴天に戻ったが…
その間、ラオン達は沈黙していたが、ラオンがぼそっと言った。
「ついに、来ちゃったか~…」
※ATSSとは、「黙示録二十秘技」(Apocalypse Twenty Secret Skills)の略で
法律で禁止されている20種の魔術のことである。