第一話
初投稿です。
性転換ものって胸の奥がキューってなって熱くなるんですよね。
「出て行けアスケードよ」
朝早く呼び出されたと思ったらこれだ。
「なぜですか!父上!」
俺は親父の言ったことに反発する。追い出されるに値する理由が本当に思い当たらないのだ。
「わが家系は代々〈感情力〉を賜っているのは知っているな?」
「はい。いずれも膨大な力だと聞き及んでおります」
親父は、そうだな、と相槌を打ってから再度口を開き
「お前以外の三人は〈喜〉〈怒〉〈哀〉と、どれも強いものばかりだ。それに引き換え、貴様の〈楽〉はなんだ!弱すぎる!」
と喚き散らした後で
「わかりました。では出ていきますね。今までありがとうございました」
「なんだその態度は!出てけと言われてほんとに出てくやつがいるか!!そこは”ごべんばさい!強くなるから見捨でないでぐださい!”と泣きながら懇願するのが常識だろうが!!!!!………………もういい。今日は自室に戻りなさい」
「しかし……」
「命令だ。自室に戻れ」
「いや、やっぱり出ていきますね」
そう告げると親父、いや、ワーシー王は大層驚いた表情を見せる。
これからどんなに楽しい生活になるかなぁ、と思いを巡らせながら王の間を抜けると三人の男たちがいる。数分前まで兄弟だった奴らだ。まあ俺は養子だから血なんてつながってないんだけどさ。
「よう、元弟と兄さんたち!マジサンキューな。そしてあばよ!」
彼らは、国王同様に驚いた表情をしている。それを尻目に、俺は王宮を出る。
「しかしあいつら、フツメンの俺と違ってイケメンのくせに間抜けな顔をしてたな」
「まあ無理もないか」
俺の〈楽〉が国王の感情力を上回ったのだから。
国王の感情力は〈崇拝〉
何をしても崇拝してくれるその力は非常に強力だ。それゆえに、誰しもがその力の前では盲目な信徒のようである。無論、俺も例外ではない。
ーーーーはずだった。「出ていけ」と言われてから俺の〈楽〉の力が高まっていき、ついには、あの野郎を上回ったのだ。
「マジで力に溺れた典型例だったな……」
だが、能力を引き出してくれたという点のみで鑑みれば最高の親父だったぜ。
……冗談はともかく、これからどうしようかねえ。なんか面白いことでも起きねえかなあ。
そう思いながら、街に向かって歩いていると
「ん?」
小さい四角形が落ちている。
これは……本で読んだことがある。
確か……
「ゲーム機?」
そう、携帯型ゲーム機だ。空想上のものだと思っていたが、まさか実在するなんて……!
「どれ、さっそくつけてみよう」
しかし、ボタンは何個もある。どれを押せばいいのだろう。
「まあでもこれかな」
俺は、唯一黄色いボタンを押す。すると、いきなり明るくなった。
「おおっ」
起動しただけで感動してしまった。実際にプレイする際は比べ物にならないほど楽しいし、感動するんだろうな。
しかし、ここである疑問が浮かぶ。
「一体どんなゲームだ?」
そう、ゲームのジャンルだ。アクションかRPGか。或いはーーーー
「『感情爆発!?恋愛ゲーム!』」
手に持っているそれから音が出た。どうやら恋愛ゲームのようだ。それほど興味をそそられないジャンルとタイトルだが、初めてゲームをやれるというだけで楽しみだ。
そう思いながら灰色のボタンを押す。いよいよ始まるのか。
俺は思わず背筋を伸ばす。
すると、起動したときの比にならないほどの光が出る。
――――そこで俺の意識は途切れた。
目を覚まし、辺りを見回す。異世界に来たーーーーなんてことはなく、見慣れた風景だった。
だが記憶と異なる光景が二つ。まず、先ほどまであった携帯ゲーム機がなくなっている。
そしてもう一つ。三人の女に囲まれているということだ。それも、もれなく全員美少女である。
「あっ、やっと目を覚ましたみたいだね、アー君。ふふっ、喜ばしい限りだよ」
長い金髪に碧眼の娘が、いの一番に声をかけてくる。
「貴男が目覚めなかったら、怒りで頭がどうにかなってしまいそうでしたよ」
続けてショートカットの娘。燃えるような紅色の髪に翡翠色の瞳。彼女はロングスカートを身に着けている。
「えっと、あなた方は……」
俺は当たり前の疑問を口に出す。すると、水色の髪の娘が泣き出した。因みにツインテールだ。
「私たちのこと覚えてないんですか……?とても哀しいです……」
彼女たちのことは記憶にないが、思い当たることがある。
会話の節々に感情を交えるこの感じ。
いやいやまさかな……。
「すみません、名前を教えてもらってもいいですかね……?」
俺は恐る恐る名前を聞いてみる。
「ふふふっ、ハラルだよ。覚えてくれたら嬉しいな。」
「スモーシーです。鼓膜に焼き付けてください」
「ピ、ピリーネです。あ、あの、よろしくお願いします。」
……………………な、
「ナニィィィィィィッッッ!?!?!?!?」
覚悟はできていても、実際にその名を口に出されると吃驚するしかない。美少女たちが発したその名は、元兄弟たちと同じものだ。
だが落ち着け俺よ、寧ろこういうのを求めていたではないか。
呼吸を落ち着かせて今一度彼女たちを見る。
元がイケメンだけあって、女体化すると非常に可愛い。控えめに言って天使の様だ。
「もう、そんなに驚かなくてもいいじゃないか。まあ、アー君の様々な表情を見られるのは喜ばしいことだけどね。」
ふふっ、と微笑むハラル。泣きぼくろが妙に妖艶だ。
ふむ、どうやら嫌悪はされていないように見える。
よし!この俺のモテ話術を披露するか!
「え、あ、そのー、あ、ありがとうございます……」
ダメだ!王宮にいた頃はもっぱら周りに男しかいなかったため女性への免疫が付いていない!
そんなこんなで恥ずかしがっていると、水色ツインテール娘のピリーネからハイライトが消えたような気がした。
あどけない雰囲気がガラリと変わる。
「哀しくなるので、“私の”アスケードに色目を使わないでください。姉さま」
「ふふっ、“私の”だって。妄想癖は怖いなあ」
一番怖いのは、この状況でピリーネを煽れるハラルだけどな。
「愚姉も愚妹もいい加減にしてください。私とアーケイドさんが怒りますよ?」
兄弟間、いや、姉妹間の冷戦をスモーシーが止める。
こいつ、女体化する前も結構怖かったんだよなあ。
「お願いですから、俺を巻き込まないで下さい」
俺は肩をすくめる。
それから暫く。
どうやら彼女たちとは幼馴染という関係らしく兄妹というわけではないということが分かった。
そういや元の世界でも俺だけ養子で血の繋がりは無かったな。
まあそんなことはさておき、改めて見ると本当に可愛いよなぁ。性格もどことなく良くなっている気がするし、いい匂いもする。おまけに、三人とも俺に好意がありそうなんだよな。
…………。
……!
いや別に良からぬことを閃いたわけではない。決して。
―――あの王はどうなっているんだ?
「あ、あのー。ワーシー王、彼のことなんですが……」
なんとなく答えが予想できそうだが、聞かないわけにはいかないような気がした。
「確かに女王は凛々しいけど、男扱いは可哀想です……アスケード」
「な、なななななななな」
三姉妹は同時に耳をふさぐ。
「なるほどね」
「「「えっ」」」
あっけにとられたその顔は、俺が王の間から出てきたときにみたあの表情を想起させるには十分であった。
私のために時間を割いてくださり誠にありがとうございます。
「冒頭三行しか読んでいませんが期待を込めて☆5です」
「うーん。今日はネットの接続が悪かったので☆1です」
程度で構いませんので、評価や感想お待ちしております。