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第八話「忠義者と裏切り者」

 (せば)めに狭めた結界は、彼女たちが身動きが取れないまで小さくなっていく。

 そのまま五人とも、がっちりと結界で固定する。


「……」


 ――少しだけ、頭がくらりとした。

 相手を潰さないように気を遣いながら結界を操るのは骨が折れる。

 いくら魔力があると言っても、それを操作する頭は一つしかないんだから、負荷がかかるのは当然のこと。


 時間短縮にはなったけれど、あまり効率のいいやり方じゃなかったと反省する。


「さて。ウィルマはどこにいるのかしら?」


 おかっぱの暗殺者に問い質すと、彼女は高らかに笑い声を上げた。


「は、ははは! 我らがこんなことで口を割ると思うのか!? 殺すなら殺せ!」

「こういうことになるけど、いい?」


 私はその辺にあった花瓶を指さし、彼女たちと同じように結界で覆った。

 パン! とわざとらしく手を鳴らし、極限までそれを小さくする。


 何物も通さない結界は、こうして縮めることで万物を潰す万力に変化する。

 それを実演して見せたのだけれど、


「くどい! 我らは誰も依頼主を裏切ったりはしない!」

「そいつがとんでもない悪党でも?」

「当たり前だ!」

「そう……残念だわ。じゃあ、ここであなたたちとはお別れね」


 私は手を上げ、手を鳴ら――






















「そうだ。いいことを思いついた」


 ――そうとしたところで、手を止める。

 おかっぱメイドは覚悟を決めた目をしている。

 脅しには屈しないだろう。

 けど……他はどうかしら?


「一分間の猶予を与えるわ」

「はん。無駄だと言ってるだろう」

「その間、少しずつ結界があなたたちを圧し潰していく。一分間、誰も喋らなければ全員仲良く『一瞬で』葬ってあげる」


 はっきりと死を宣告すると、うち一人が顔を歪ませた。

 私はその子に向き直って、にこりと微笑みを向け――救いの糸を垂らした。


「けど、ウィルマの居場所を一番早く教えてくれた子は無条件で解放するわ。その場合、それ以外の子は『地獄の苦しみを味わって』死んでもらう」

「……なに?」

「こう見えて人を治す仕事もしているの。逆に言えば、()()()()()()()()()長生きできるかもよーく知ってるわよ」

「――っ」


 暗殺者たちが、一斉にお互いの顔を見合わせる。


「はい、スタート。時間は一分よ。いーち、にーい」

「にっ、二階東のベッドルームです!」


 さっき顔を歪ませたポニーテールのメイドが、十秒もしないうちに吐いた。

 見込み通りこのチーム、忠誠心が強いのはおかっぱメイドだけのようだ。


「な……貴様ぁ!」

「この裏切り者!」

「なんで……なんでぇ!」

「はいはい、喧嘩はあの世でやりなさい――みんな、仲良くね」


 その言葉を聞いたポニーテールのメイドが、再び顔を歪ませる。


「や、約束は……?」

「こっちを殺そうとしてきたのに、そんなの守るわけないじゃない」

「そんっ、な……」


 ぴしゃりと言い切ると、彼女は魂が抜けたように放心した。


「じゃあね、バイバイ」


「やだぁぁぁー! やめてやめて!」

「お願い何でもします!」

「嘘つき! 嘘つきぃ……!」


 口々に命乞いやら罵倒をする暗殺者たちににこりと微笑んでから、私は手のひらを掲げて、ひときわ大きく手を鳴らした。


 ――パン。


「……なんちゃって」


 叩いた音の大きさに肝を潰し、四人が泡を吹いて気絶した。


 もちろん殺す気なんてない。

 そこまでしてしまったら、ルビィが気に病む可能性があるからだ。

 誰も殺さない。

 それはこの復讐劇の大前提だ。


「き……貴様ぁ! よくも私をコケにしたな! 絶対に許さんぞ!」


 おかっぱメイドだけは腰を抜かしながらも意識を保ち、気丈に私を睨みつけていた。

 こういう手合いは放置したくないけれど、仕方がない。


 記憶が飛びますように、と願いを込めて、物理的な衝撃を頭に加える。


「聖女チョップ」

「ほげぇ!?」


 おかっぱの暗殺者は床に顔をめり込ませ、そのまま動かなくなった。

「おかっぱメイドの記憶が消えたのか気になる」と思った方はブックマーク・★★★★★をお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] いいぞ! もっとやれ!ww
[一言] >それはこの復讐劇の大前提だ 最低限の良識あって良かった、これないと下衆と鬼畜の食い合いという、なろう系でよくある馬鹿話になる所だし。 しかし家が広いという話だが、国有数の金持ち貴族という…
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