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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

未確認思考物体な彼女

作者: 小川和布


 宇宙人がいるかという質問をされたら迷うことなく私は否定するだろう。


 サンクロースを信じたり、白馬に乗った王子さまに夢みる年代はとうに過ぎさってしまった。まあそんな可愛げのある子どもではなかったかもしれないが。


 だがこの学校というゆりかごのなかで宇宙人がいるかもしれないという噂があればきっと私は迷わずに飛びつくはずだ。


 好奇心は猫をも殺すというが退屈だって猫をも殺す。ようはバランスだ。生きていくにはほどほどの刺激が必要なのだ。


「はぁ……」


 だからか最近の私にはどうにもため息がつきない。


 何もすることがないわけではなく今もクラスメイトなるものたちと図書室で勉強会のようなものに参加させられているのではあるのだけれど。


 勉強中は静かな分様々なことを考える。しっかりと取り組んでいるのは一部だけだ。


「うーん(この問題、全然わかんない。でも聞くのも恥ずかしいし)」


「あーこの問題意地悪だよね。こう解くんだよ」


 困っている名前も定かではないクラスメイトの手助けをする。少しはこの時間つぶしの会を有意義なものとしたい謎の使命感からだ。


「あ、ありがとう(やっぱり家路さんって頼りになる~ スタイルもいいし、羨ましい~!)」


「それはどーも。でも今週の私は先週より五百グラム増量中だよ」


「え?」


「いやこっちの話。そろそろ次の授業の仕度したいから、教室に戻るね」


「そっか次体育だもんねー(やだなあ。保健室で寝てよ)」


 勉強道具を片付けていると視線というか思考が流れ込んでくる。


(家路さん、行っちゃうのかあ。もう少しお話したかったな)


「あー……一緒に行く?」


「うん! 片づけるからちょっと待ってね(やったあ!)」


 パタパタと慌てて片づけるクラスメイトを待ちながら、自分の八方美人さ加減に内心で苦笑する。こうなっているのは私の生来の力のせいだ。


 人間は思考する際に微弱な電気信号を発生させるという。


 私は遠くからその電気信号を読みとることができる超能力者である。簡単にいうと人の考えていることが分かるのだ。


 この力があればパーフェクトなコミュニケーションを取ることも容易で、私自身クラスのなかでもそれなりのポジションにいる。


 だが他人の二面性につねに晒されているというのはあまり好ましいものではない。昨日までの好意が悪意に変わり、陰口を叩いた人が次の日には感謝の想いを胸に抱いていたりする。人の心は移ろいやすく、また脆い。


 なにもかもあけすけの凸凹なじゃがいもたちは緩やかに私の世界をくすませていく。そう考えるのは少しひねくれすぎだろうか。


 クラスメイトと他愛のない話をして別れたあとに更衣室で体育着に着替えた私は教室の机に突っ伏して時間を潰していた。すると制服姿の女生徒がバタバタと駆けこんできた。


「よーイエジー お前相変わらずいつも眠そうだなー」


「おー」


 生返事で返した私の頭の上に学生鞄がどさりと置かれる。


「なんだそのリアクション。社長出勤の不良友人にかける言葉はそれだけか」


「いや知らんし。いつもの体育だけ受けるってやつじゃん。寒いのによくそのために来るよ」


 彼女は宮村といって私の幅だけは広い交友関係の中で唯一親しいと思える友だちだ。


 宮村はとっても思考が単純である。おそらく裏表がないというより思考と口が直結しているのだろう。だからか行動もすごく直感的だ。面倒くさければ学校に来ないし、誰かと話したいというだけで午後だけ来たりすることもある。


 それが私的には結構楽に思えたりする。退屈なのは嫌だけど面倒なのはごめんなのだ。


「早く制服<それ>脱いだら? もう授業はじまるよ」


「いきなり来た私に痴女になれってのかよー」


「だって下に体育着きてるじゃん。もともとそのつもりでしょ」


「お見通しかー なんかお前との会話はなんか一言飛んでるような気分になるんだよなあ」


「へへ、楽でしょ」


「まあなー」


 着替えた宮村と一緒に次の授業の場所であるグラウンドへ向かう。その時だった。


「きゃっ」


 扉から飛び出た瞬間に廊下を歩いていた女生徒とぶつかってしまったのだ。女の子は軽く尻餅をついてしまった。私が大きい方というのもあるがそれにしてもその女子は体格が小さかった。


 しまったという感情が湧きおこる。こういった不始末は謝れば、表面上ではそれとなく流されるが内心では容赦のない罵倒をされることが経験上多い。


「おっと、ごめん。大丈夫だった?」


 即座に謝って、起こそうと手を取る。その際に私を見上げる彼女の顔が目に入り、パチクリと私は目を瞬かせた。


 肩まで伸びた絹のようになめらかな純白の髪。くりくりとしている大きな瞳に均整の整った顔立ち。


 まるで神さまが自分のために美という概念をひたすらに注ぎ込んで作った精巧な人形といってもいいほどに彼女は綺麗だった。


「あの……平気だから」


「あっごめん」


 我を取り戻した私はパッと彼女の手を離す。そのままその女子は行ってしまいその後姿を私はただ見つめていた。


「どうしたんだよイエジ。おーい、きいてんのかー」


 宮村が後ろで騒いでいるが内容なんて耳に入ってこない。だって私のテレパシーが通用しない相手なんて初めてだったのだから。


 それが彼女と私のファーストコンタクトだった。


 ***


 私はあの超絶美少女のことを知りたくて知りたくて体育の授業中も全然身に入らない状態だった。今まで生きてきて心の声のうるさい人間はいれどまったく心の声が聞こえてこない人などいなかったからだ。


「宮村。私がぶつかった子のこと知ってる? あのめっちゃ可愛い子」


 宮村を捕まえた私は木陰でさぼりながらあの女生徒のことについて聞くことにした。


「あーあの自称宇宙人の」


「なにそれ知ってるの!? ちょっと、教えてよ」


 気になる単語が聞こえ、私は思わず強く迫ってしまう。


「知ってるも何もめちゃ有名よあの子。たしか半年前くらいにうちらの隣のクラスに転入してきたんだよ。最初のうちは男子たちが騒いでたから覚えてる。名前はたしか間宮だっけな」


「その言い方、なんかあったの?」


「いや何も、とびきりの変わり者だったってだけ。とにかく、同じクラスの奴らに聞いてみなよ。多分かなり評判悪いぜー (それにしてもこいつが他人のことについて聞くなんて珍しいな)」


 そうして私は素直に体育の授業のあと間宮という少女のいるクラスへと訪れていた。宮村に深く聞いて心を読んでもよかったがあの快活な友人から陰口は聞きたくなかった。


 適当に見つけた生徒に話を聞く。どうやらあのぶつかった生徒はいないみたいだ。


「あー間宮さん、浮いてるよねー 。この前なんかさー」


 その子の話によるとあの少女は自分のことを他の星から来た異星人だと自称しており、校庭に巨大な絵を描いたり、教室の窓ガラスを一面ピンクに塗ったりしたこともあるのだとか。


 それが本当なら、聞きしに勝る変人だ。


「まじありえないっていうか、頭ヤバ過ぎだよね(というか顔がいいからってちやほやされててムカつくわ)」


「……ああもうその辺で。ありがとう、参考になった」


 ヒートアップしそうだったので途中で会話を打ち切り、別の生徒に話を聞く。


「ああ、あの子ね。そんなに知ってるわけじゃないけど、いつも一人でいるわね。お昼はいつもいないけど、一緒に食べる友だちとかもいないんじゃないかしら。誘っても母船との交信の時間だとか適当な理由つけて断ってるし(ああいう子がクラスにいると雰囲気悪くなるのよね。また転校でもしてくれないかしら)」


 その後も何人かに話を聞いたが宮村の言うとおりあまりクラスメイトと友好な関係を築けてはいないらしい。


 なんか気分悪いなあ。他人の悪意には慣れているのでいつもは気にならないがなぜかもやもやとした感情が胸を焦がしている。間宮さんとは知り合ってすらないのに可笑しな話だ。


 だが彼女たちの会話の節々にあった宇宙人に関連する単語は気になった。もしかして本当に宇宙人ではないのかという思いがよぎる。到底信じられないけど人間と頭の造りが違うのならテレパシーが効かないのも納得できるし。


 ただ本当に宇宙人だった場合、なかなか接触は困難になりそうだ。人とのかかわりをさけている節がある上にテレパシー無効と脳内リテラシーが万全ときた。


 人間に捕まえられた宇宙人の写真みたいな醜態をさらすことなどないだろう。


 帰り道、駅近くにある繁華街の中でスーツを着たスカウトマンっぽい人に声をかけられている同じ高校の女生徒を見つけた。


「あれ?」


 遠くからでも目立つ白髪は同じ学校では一人しか思い浮かばない。間宮さんだ。


「ついてこないで。私、怒らせると怖いですよ。火とか吹きます」


「もうしつこくしないからさ。ね、ちょっとお茶するだけだから」


「もうそれで満足してくれるなら……」


「おーい。いいってよ」


 スカウトマンの男が合図をすると一人の男性がやってきた。あらかじめ物陰に隠れていたようだ。


「えっ、二人でお話しするんじゃないの」


「えーそんなこといったあ?」


「今から行くとこ店の連中、みんな友達だからゆっくり話せると思うよ〜」


「いやどんだけいるんですか!」


「いいからいいから」


 自然に男たちが間宮さんの両隣に入り込み、がっちりと逃げられないようにしている。


「まじか。捕獲されかけてる」


(ちょろい、ちょろい。やっぱスーツ着てるとみんな騙されてくれるわ)


(こんな上玉逃がすかよ。多少強引にでも店に連れ込んで──)


 というかよく思考を読めばアイドルとかのスカウトですらない。悪質なナンパ男たちだ。


 そういえば学校でアンケート目的とかで誘われて被害にあう女生徒がいたとのことで注意があったような。心の読める私にとっては関係のないことなので流してたが。


 しかしこのまま間宮さんをほうっておくわけにはいかない。


「おっ奇遇だね~」


 背後から間宮さんの肩を叩く。ピクリと肩を震わせたあとにおずおずと振り向いた。

 胸元に手を置きながら不安げに揺れている瞳は私を見つめている。


 めっちゃ可愛い。この男たちは論外だがナンパの一つもしてみたくなるのは仕方ないことなのかもしれない。


「もしかして友だち? どう君も一緒に」


 こういう手合いは背後に何があるかわからないから慎重にやり過ごそうと思っていたのだが──。


「来て!」


「えっ!?」


 運命的な出会いに私の胸は知らず高鳴っていたのだろうか。胸に置かれている間宮さんの手を取ると一目散に駆け出していた。


 走る。走る。走る。


 気づけば私は目的地の駅から遠く離れている少し寂れた商店街まで来ていた。


 ここまで来たら大丈夫だろう。さっきのナンパ男たちは学校に伝えて対処してもらおうかな。


「つ、疲れたー! こんなに走ったの久しぶり」


 息と前髪を少し整えて間宮さんと向き合う。


「はぁ……はぁ……あ……ありがとう。でもなにも逃げなくても……」


「ははーん。さてはアイツらのことわかってないなー 。あのままだと君は……そー解剖的な目にあってたよ」


 素直に言っていいのか迷って変に答えてしまった。「なに言ってるんだろうこの人」と言った目で見られている気がする。


 間宮さんの心はぶつかった時と同じようになにも見ることができない。そして今は二人きり。なにを言ったらいいかわからないなんて、今まで生きてきてはじめての経験だ。


 だからこの時の私は本当に緊張していた。


「本当に大丈夫だったんだよ。だってわた──」


「わたし、超能力者なんだ!」


 そして気づけば私は間宮さんの両手を握って、大胆な告白をしていた。


「はい?」


「だから超能力者なんだよ。テレパシーが使えるというか人の心とか思考みたいなものが電波として勝手に頭の中にはいってくるというか。応用して他の人と頭の中でやり取りなんかもできるの。前者を受信、後者を交信って呼んでるんだけど──」


「ちょ、ちょっと落ち着いて」


 間宮さんが当然ながらびっくりしている。ついでに私もびっくりしている。

 ぺらぺらと口から勝手に私の秘密がまろびでてしまった。


 私はこの力を隠している。というかこんなことを喋っても妄想癖に憑りつかれた変人にしかみえないし、相手が仮に信じたとして勝手に心を読む人間なんて薄気味悪いだけだ。つまり話したとして一文の得にもならない。


 アホか私は。いやこれも宇宙人の力なんだろうか。異星人を洗脳して、情報を吐き出させた上で操り人形にでもしようというのか。

 でもSF映画で見る人類に囚われた宇宙人の末路は大抵解剖の様な気がするから、それよりはましかもしれない。野蛮だぞ人類。


 とりあえず困惑している間宮さんをどうにかしようと頭をフル回転させる。


「そ、そう宇宙人でしょ? 間宮さんって」


「え? うん。いやなんで私の名前」


「いやー人に言えない秘密を持つもの同士、すごい奇遇だなー」


「別に私は隠してないけど」


「そうですか」


 やっぱり心が読めないと円滑なコミュニケーションをとるのは難しい。


「本当に心を読めるのなら今の私の思考を読んでみて」


「それがおかしくて。なんでか君の思考は読めないんだよね」


「やっぱり嘘臭い」


 信用できないのは当然だが素直に言われると胸が痛い。私がどうしようか無言で頭を悩ませていると間宮さんは何か思いついたように「わかった。それじゃあ少しつきあって」といった。


 ***


 きぃと軋む音を響かせながら木製の扉を開く。私は商店街の中にあったアンティークショップへと赴いていた。間宮さんがいうにはここの主人であるおばあちゃんはある悩みを抱えているらしく、その悩みを解決すれば信用してくれるというのだ。


 間宮さんは外で待っていると言ってついてこなかったがこのチャンスを逃す訳にはいかない。


 アンティークショップといっても大きな家具はほぼなく、外国製の古びた食器や小物が主としてところせましと並べられている。おそらく客の持ち込みであろうテレビやスピーカーなどの家電もあったりしてどことなくリサイクルショップのような趣きも感じさせる。


 その中の一つにあった長方形のラジカセに私は目をつけた。


「おっこれ私が持ってるのと同じやつ」


 私が好きなピンク色な上にすっきりとしたデザインで部屋の中のインテリアとしても違和感がないために結構気に入ってたりする。


「へえ、若いのにいい趣味してる」


 いきなり背後から声をかけられて、私は背筋をこわばらせた。振り向くと恐らく店主であろう腰の曲がった老婆がそこにいた。この人が間宮さんの言っていたおばあちゃんかな。


「わっ! 後ろからいきなり声を掛けないでくださいよ~」


「ちゃんと言ったよ。冷やかしならごめんってね(あれ? この辺ではみない子だねえ)」


「あはは、これが冷やかしじゃないんだなあ」


 まあ商品を買う目的で来たわけではないので間違ってないかもしれないけどね。


「おばあちゃん、何か困ってる事あるでしょ?」


「あんたに話す悩みなんてないよ(なんだいこの娘は藪から棒に)」


「まあまあちょっと、孫に軽く話す感じでいいからさ」


(最近寒くて、身体の調子がおかしいのはたしかだけどこの子に話してなんになるってんだよ)


 ふむ、身体の調子か。たしかにこの店どことなく寒いような。店内を見渡すとエアコンが置いてるがどうにも動いていない。埃をかぶっていて表面も黄色く変色している。


「買う気がないなら帰っとくれ」


「そんな怒んないでよ~ おっエアコン発見。おばあちゃんこれ売り物?」


 間宮さんをこの寒空に待たせている手前あまり悠長なことはできない。思考を読める力がある私には質問攻めするのが一番手っ取り早いのだ。


「んなわけないだろう」


「でも動いてないじゃん。節約?」


「そんなとこだよ(去年から動かなくなっちまってんだよね。なか見ようにも私じゃ届かないし、誰かに頼るのもねえ)」


 ビンゴ。よし、後は私にできることをするだけだ。私はエスニック風の手ぬぐいに目をつけた。


「おばあちゃん、このハンカチいくら?」


「三百円」


 財布を取り出して、手ぬぐいを買うとそれを頭に巻く。


「それでおばあちゃん。ちょっとお願いがあるんだけどさ」


 脚立を借りた私はエアコンの蓋を外し、フィルターを含めた隅々まで掃除した。そして蓋を元に戻して起動させる。基盤が壊れていてはどうしようもないが一応やれるだけのことはやった。


「おっ動いた」


 そしてエアコンは無事に起動した。暖かい風が店の中を満たす。


「いや助かったよ。悪いねえ(最初エアコンの近くの商品どかしはじめた時はどうしたもんかと驚いたが)」


「まあまたなんかあったら頼ってよ。そろそろ暗くなってきたし、帰るけど」


 結構作業に時間がかかってしまった。間宮さんが帰ってしまってもおかしくない時間は経っている。


「ああ、また来るといい。しかし歳のわりにしっかりしてるよ。あんたと同じ制服を着た娘がよく来るんだけど、その子は結構おっちょこちょいでね」


「へえ」


 もしかして間宮さんのことかな。常連なのだろうか。思わず振り返ると噂をすればスカートの影。まだ待っててくれているようだ。


(来てくれるのは嬉しいんだけど、いつも独りみたいでねえ。この子みたいな友だちがいてくれればいいんだけどさ)


「まあアンタには関係のないことか」


「おばあちゃん。そんなに心配することないかもしれないよ」


 私は宣言するように答えると「顔に出てたかい?」といっておばあちゃんが笑った。


 そうして店を出る際に入口でまっていた間宮さんを脅かそうといきなり飛び出て声をかける。「ひゃっ」っと変な声をあげて間宮さんは固まった。


「ごめんごめん。なんだかんだ結構かかっちゃった」


「どうだった?」


「冷えで体調悪くしてたんだってさ。原因は空調の故障だったよ。フィルターに埃がたまってたせいで空調の効きが悪かったんだよ。全部綺麗にしてきたから当分は大丈夫だと思うけど」


「すごい。私は何を聞いてもはぐらかされるばっかりで何に困ってるかわからなかったのに」


「だから心の声が聞ける私に頼んだんだ」


 間宮さんは申し訳なさそうに頷いた。


「たぶんあのおばあちゃん私と似てるんだ。いままでずっと一人だったから本心で話すことを忘れてるんだと思う。だから……ありがとう」


 評判なんてやっぱりあてにならない。間宮さんはいい人だ。もしかしたらいいと人の間に宇宙が入るかもしれないけど。


「ちょっとは信用してくれた?」


「うん、完全にしたわけじゃないけど」


「じゃあそろそろ暗くなってきたし、帰りますか~」


 駅までそれなりにある道のりの中で私は困難に面していた。


 やばい、気の利いた言葉が思い浮かばない。


 間宮さんは何に興味があるのか、趣味はあるのかまったくの予測不能。聞くにしてもそれで私がしっかりと答えられなければせっかくあげた株が大暴落してしまう。なかなか勇気が出ないまま無言の時間が過ぎていく。


 間宮さんを助けた時には夕焼け色だった空もすっかり暗くなり、会社帰りのサラリーマンたちのおかげか人通りの量も増えてきた。


 そんな雑多な喧騒の中でも不思議と間宮さんの存在を感じ取ることができる。心が読めない分、私が意識して息遣いや足音といったその人特有の音を聞いているからだろう。


 間宮さんは同じ歩幅でつかず離れず歩いてくれている。そのことに少しの優越感を覚えている私がいた。そうして無言のまま、駅に着いてしまった。


「よかった」


 間宮さんが発した言葉は予想外の一言だった。


「え?」


「私そんなに喋るの得意じゃないから。黙ってても苦にならない人で」


「うーん? そう見えた?」


「うん、だってすごい楽しそうだし」


 しまった。たしかにいつもより充実していたが顔に出ていたのだろうか。笑われる前に気を引き締めねば。けど続く言葉に私の考えは胡散した。


「私だけ……なの?」


「えっと」


「そのテレパシーっていうのができないの」


「そう! 君一人、今まで生きてきてこんなの初めて! だから理由を知りたくて」


「そうなんだ」


 間宮さんは何かを決意したかのように一歩踏み出してきた。


「ちょっと興味でてきた。私も調べるのに協力したい……と思う。その、異星人の生態をすべて把握するのも私の役割の一つだし。明日の放課後とかさ……空いてたりする?」


 こくこくと私は反射的に頷く。


「……よかった。じゃあわたし、反対側こっちだから!」


 駆け足で去っていく間宮さんを見ながら私は何故だか不思議な高揚感に包まれていたのだった。


 ***


 夜も更けた頃、寝支度を全て終えた私は自分の部屋のベッドに飛び込んだ。


 今日は久しぶりに新鮮なことがあった。間宮さんという心の読めない女の子。あれから彼女の秘密はなんなのか、心の内には何が隠されているのか気になって仕方がない。


「明日、ちょっと楽しみかも」


 ベットから手を伸ばして、ラジカセのスイッチを入れる。私はラジオが好きだ。機械を通して耳に入る言葉には裏がない。それが何の変哲もない日常話やつまらない出来事であっても、どこか普通の人になったみたいで気分が楽になる。


 別にテレビでもいいんだけどなんとなく、私の預かり知らぬところで流れる映像がうっとおしく感じてしまうのだ。


 ベットで寝そべったまま目を閉じる。しかしラジカセから聞こえてきたバリバリと割れるような雑音が私を現実に引き戻した。


「あれ?」


 ノイズのせいで放送の中身はまったく聞こえてこない。周波数をいじっても電源を入れなおしても変わらず。スピーカーの異常かはたまたコンデンサあたりの異常か私にはまったくわからない。


「うっそー!? 壊れたー」


 いいことがあると思うとこれだよと私は苦笑した。


「買い替えるにしても今月ピンチだし。あのおばあちゃんならわかるかなあ」


 私はこうしていつもより早く眠りについた。


 そして次の日の放課後、ホームセンターで見るような大きなビニール袋をぶら下げた間宮さんが息を切らして、校門の付近で待っていた私の前にくる。


「……来ないと思ってた」


「えっどうして? 三十分前には来てたけど」


「そんなに待った! ごめん……ホームルームが長引いちゃって」


「いや別に気にしてないけど」


 いきなりやってしまった。別に待っていた時間をいう必要はない。どうにも私は余計なことをいうくせがある。


「それでどこ行こうかね」


「えっと、私のクラスに。今ならもう誰もいないと思うから」


「戻るの!? ぷっ、あはは! もう私がここで待ってた意味はなんなんだよー」


 予想外の返答に思わず笑ってしまう。


 間宮さんは「いいからついてきて」というとくるりと背を向けて行ってしまった。


「おーい、待ってよー」


 私はそんな間宮さんの背中を慌てて追いかけるのだった。


 そしておそらく間宮さんのクラスの教室で私は珍妙な事態に陥っていた。間宮さんはビニールシートを床に広げるとその周りを囲むように机を置いてアルミの板のようなものを立てかけて壁をつくった。そうしてできた一畳よりほんの少し狭い空間の中に入れと私に言ってきたのだ。


「それでえーと間宮さん、これはどういうことでございましょうか」


 アルミの壁で囲まれた空間のなかで私は間宮さんの対面に座している。思わず正座してしまい、彼女もそれに倣ってしまったためにお見合いのような雰囲気だ。


「アルミパネルでございます。百円ショップで購入したものを繋げさせていただきました」


「間宮さんはかしこまらなくていいから。というかなんでアルミパネルを」


「アルミって電波を跳ね返すの。例えば宇宙人が他の星を侵略しようとする際に原住民に対してマインドコントロールをして中枢に入り込むのが手っ取り早いんだけど、アルミホイルを頭に巻くことでそれを防ぐことができるじゃない。だから逆にアルミで周りを囲めば私の脳波が反射して、通常よりも受信しやすくなる……」


 まったく実感がわかない例えがきたのは置いておいて、たしかにアルミホイルは電波を跳ね返す効果がある。お母さんが前にWi-Fiが途切れるからとかで同じようなことをして、切断されないって喜んでいたような記憶がある。遮断したのは私の部屋側だったせいで、私の携帯の通信料は爆上がりしたんだけど。


「かもしれない」


「かもしれないのか」


 頬を掻きながら頭に意識を集中させるが何も聞こえてこない。


「読めないけど」


「すぐにできるなんて言ってない」


 そう言って間宮さんはカードの束を私との間に置いた。デフォルメされたゴキブリやくもにハエなどの害虫がカードに描かれている。


「何これ、カードゲーム?」


「うん、持ってきた。ちょっとした頭脳ゲームでもやればいっぱい脳波がでるかもしれないから」


 知らないカードゲームだったがルールは案外単純だ。配られた手札の中から一枚を裏返しにして相手にみせて、絵柄を答える。相手はそれが合ってるか間違ってるか答えるだけ。見破ることができればカードは出した方の手に間違えれば答えたほうに表にして置かれる。同じ絵柄が五枚揃えば敗北だ。


 数回もプレイすると段々とコツも掴めてきた。仮に思考が読めたら勝負にならないと思うのでこういった遊びは新鮮で楽しい。会話する余裕も出来てきたので遠慮なく、間宮さんにいい機会だと私はカードを出しながら質問する。


「間宮さんってやっぱり宇宙人なの?」


「そうだけど、それってそんなに気になる? 真実かな」


「それはまあね。むう、わかったか」


 見破られた私の下にカードが置かれる。


「じゃあ、私も気になってるんだけど」


「話してみて」


 間宮さんがカードをだす。


「私のこと聞き回ってたよね」


「ばれましたか、あっ真実で」


 私の勝ちだ。どちらももうあと一枚でリーチがかかっている絵柄もあるから決着は時間の問題だろう。


「なんで校門で待ち合わせにしたの?」


「私といると色々噂されちゃうし、嘘で」


「あの男の人に絡まれていたのが私じゃなくても助けてくれた?」


「そうだと思いたいなー、嘘にしとこう」


 カードと質問をかわしながら、やり取りをしてきたが流石に初対面から二日目なのでネタも尽きてきた。だからか少し話しづらい質問をしてしまう。


「間宮さんってこうして普通に話できるのに、なんでクラスの人を遠ざけるようなことしてるの?」


 話しで聞く間宮さんは話のまったく通じない奇人をイメージしたが実際に話してみる彼女の実像とかけ離れている。それがどうにも引っかかった。


「それはみんなが私と違うから。真実にする」


 私の前にカードが置かれ、リーチの絵柄がまた一つ増えてしまう。


「じゃあ私からも一つ、あなたはただの好奇心だけで私といるの?」


 それはどういう意味だろう。心が読めないのにそんな意図のわからない質問を投げかけられても困る。


「うーん、真実。あ、負けた」


 ゲームは私の負け越しで終わってしまった。


「意外と楽しかった」


「でしょ。他にもいろいろ持ってきたんだけど」


「そういえばさ、もうそれなりに時間経ってるけど。変わりないね」


「うっ」


「効果なかったかー」


「だよね……私ダメな子だ」


 がっくりと項垂れている間宮さん。


「いやそんな落ち込まなくても、そんなすぐできると思ってないし。そもそも種族的? な問題かもしれないしさ」


「待って、天井がないからダメなのかもしれない」


 そういって間宮さんは立ち上がるとアルミパネルで天井を覆おうとする。


「いやせめてスマホの明かりを」


 言い終える前に蓋をされてしまった。完全な真っ暗闇だ。間宮さんの端麗な顔も何もかもが見えない。


「何にも読めないし、見えないよ」


「そんなことない。きっと読めると思う。……もっと近寄ればいいのかも」


「えっ」


 私に寄りかかるように何かが触れる。微かな息遣いとほのかに香るふんわりとしたま桜のような香りが鼻をくすぐる。もしかして間宮さんがよってきたのかもしれない。


「どう?」


「……いい匂いだなあって」


「わたし、匂いのことなんて考えてないけど」


 さらに私の足と足の間に割り込むように何かが置かれる。教室は寒いはずなのにどこか温かなぬくもりを感じる。

 いやどうなってんのいま! まずい、いや何がまずいのかわからないけど私がどうにかなってしまいそうだ。

 咄嗟に手を伸ばして蓋をどけると窓から日の光が差し込んだ。ちょうど胸のあたりに間宮さんの顔がある。夕焼けのオレンジ色の光のせいか赤みがさした間宮さんはきらきらと輝いていて幻想的だ。


 目と目があう。ちょうど間宮さんは私に抱き留められるように胸の内にいる感じだ。流石にいま誰かに見られたら誤解されそうだ。


「あっ……ごめん」


 間宮さんも自分の状況に気がついたのかさっと元の位置に戻った。


「そ、そろそろ帰らない?」


「さ、さんせーい……」


 なぜだか胸の動悸が収まらない、やっぱりあの子の前だと正常じゃいられない。本当に私は心が読めないから間宮さんに興味を示してるのだろうか。もう一つわからないものが私にもあった。それは私自身の心の声だ。


 ***


 そして間宮さんに毎日振り回されて、一週間。私の頭の中は彼女のことでいっぱいだった。日常生活に支障が出るほどに……。


「なあイエジ。……おーい聞いてんのか? おーい」


「なんだよー」


 ぺしぺしと頭をはたく宮村の手を払いのける。


「これはこれは重症ですね。イエじいさん」


「だれが爺か、まだボケとらんよー」


「でもまあ、まさかお前が恋煩い的なのにかかるとか」


「恋? いやないない、なぜそう思ったし」


「最近、ぼーっと誰かのこと考えてんじゃん。みりゃあ分かるって」


 すんなりと否定することができない。たしかにここのところ間宮さんのことばかり考えている。でもそれは恋ではないと思うけど。


「あのねえ、好きとかそういうんじゃないとか思ってる? いつものお前からしたらありえないの。ほんと他人に興味ないじゃん、イエジって」


「そうかなあ」


(こいつ……実感ないのか? しょうがない、この宮村さんがキューピッドになってあげよう。なんか面白いし)


 宮村の失礼な心の声にむっとしつつも、反論はできないので素直に聞く。


「じゃあそいつのこと率直にどう思ってんの」


「まあ一緒にいて悪い気はしないと思ってるけど」


「いっしょにいるとドキドキしない?」


「それはまあ……するかも」


 というかした。誰にも言えないことだけど。


「保証するよ。それは恋だね。あーいいね、青春だねーイエジさんはー」


「何が青春だよまったく、得意げになっちゃって」


「で~? 相手はだれよ(いつものお返しだ。わかったら盛大にからかってやろう)」


「いうわけないじゃん。心でも読んでみなよ」


 わたしは半ば逃げるようにお手洗いだと言って、教室を出る。


 ふむ、しかし恋か。いやけど女同士だしさ。


「あっでも宇宙人ならセーフなのでは?」


「なにがセーフなの? わたしのこと?」


 ひょいといきなり背後から間宮さんが話しかけてきた。突然すぎて心臓が止まりそうだ。


「わっ、いきなり出たな、まみやん」


「なにそのあだ名」


「あ、今日の放課後、よかったら付き合ってよ。あのおばあちゃんのお店に行こうと思うんだけど」


「え、え」


「じゃあよろしく」


「一方的!」


 少し怒っている間宮さんを置いて、私は立ち去り、女子トイレの個室にしゃがみこんだ。ごめん、放課後にはなおしておくから許してほしい。どうにもあんな話を聞いたあとだと意識してしまって顔を見ることができないんだ。


 ***


 そして放課後になり、私は間宮さんと一緒におばあちゃんに会いにアンティークショップへと向かっていた。その頃には間宮さんと気軽に話せるくらいには気持ちも少し落ち着いてきた気がする。


「私って結構、冷たいのかなあ」


「どうしたの、急に」


「いや仲のいい友だちから言われたんだけど、私って他人に対して無関心人間なんだって」


「仲のいい友だち……」


「その人は嘘言わないから、多分周りからもそう思われてるんだろうなあって」


「私はそんなこと思わないけど」


「それは間宮さんだから。私自分からこうやって放課後、友だちと寄り道したりするタイプじゃないんだよ」


「それってやっぱりテレパシーのせい?」


「まあね。たぶん知らない内に消耗してるんだと思う」


「言ってしまえば人の本音が流れてくるんだもんね。そうだ、それなら自分も好き勝手本音を言っていってみればいいと思う」


「……ここで?」


 こくりと間宮さんが頷く。いやそれは流石に恥ずかしい。


「大丈夫。いま周りわたししかいないし、それに異星人だもん、そんな小さいことは気にしない」


「そうかもしれないけど」


「えっとね。実は私のこの白い髪、染めてるんだ。元は普通に真っ黒」


「はい!?」


 なんか流れで衝撃の事実が明かされた。宇宙人の髪色は黒でした。


「ちょっと勇気出していってみたんだけど、こんな感じでどうかな」


「ぷっ、くく、あははは。それ反則、別に本音でもないし」


「だ、だめ……?」


 不安げに私を見上げている間宮さんを見ていると、私のしょうもない羞恥心なんかどうでもよくなってきた。


「よーし。……おかあさん! 私は思ってるほどそんなにいい子じゃないし、なんでもこなせるわけじゃない。だからちょっと思い通りにならないからってすぐ不機嫌になるな、結構ストレスたまるぞー!」


 往来の中でそれなりの声量で内面をぶちまける。他人の心にがんじがらみになっている普段の私からしたらありえないことだ。


「クラスの男子どもー! 話すたび話すたび私を値踏みするなー! 私は! だれのものでもないぞー! 女子も私の悪口を言うのはいい、いいけど話してるときに胸の内でそれを思い返すな! 取り繕うの大変なんだよー!」


 普段、自分の本音を言えてないわたしのこんな姿はきっとひどく滑稽だっただろう。それでもよく言えましたといわんばかりにぱちぱちと間宮さんが拍手してくれた。


「あ~ すっきりした」


「よかった。リラックスできたみたいで」


「まあちょっと恥ずかしいけどね」


 間宮さんのおかげか心なしか気持ちが楽になったような気がした。


(それにしてもなんであのおばあちゃんのところに行くんだろう。手に持ってる大きな袋がなんか関係してそうだけど)


「いや私のラジオがね。壊れちゃってさ」


 ビニール袋の中のラジオをみせる。


「……? 待って! いま私の考えてること読めた!? 何も喋ってなかったんだけどわたし!(すごい! これがテレパシー!)」


「え!?」


 本当に間宮さんの電波を受信できるようになっている。どういうことだろう? 今までまったくできなかったのに。

 

間宮さんは心の声も含めて飛び跳ねる勢いで喜んでいる。そしてその拍子に両手を間宮さんが握ったせいか体温がダイレクトに伝わった。おそらく多少なりと私の顔も赤くなってるだろう。


「どう? いまも読めてたりする?」


「えっと」


 私は頭をうんうんと唸らせるがとたんに間宮さんの心の内は聞こえなくなってしまった。


「いや、なんかあの一瞬だけだった」


「なんだろう、何か理由があるのかな」


「うーん……」


 そうして二人で考えている内におばあちゃんのいるアンティークショップへと着いてしまった。私はおばあちゃんに挨拶をして、ラジオを見てもらうことにした。


「なんだ、買いに来たんじゃないのかい」


「いや~おばあちゃんの見立て次第では買っちゃうかもね。まけてくれればだけど」


「はいはい、いいからとっとと見せな。でも私じゃ正確にはわからないかもしんないよ」


「それならそれでいーよ。実は来た理由はそれだけじゃないんだよね~」


 そういって首元に手を回して間宮さんを引き寄せる。


「私たち友だちになりました」


「あ、その……はい」


 恥ずかしそうに間宮さんは俯いた。


「そうかい、よかったねえ」


 しばらく三人で雑談しているとおばあちゃんが「これは電源回路がいかれちまってるのかねえ」とつぶやいた。


「どういうこと?」


「簡単にいうとノイズを防ぐための部品が経年劣化したとかでいかれたせいか、こいつ本体のノイズが大くなりすぎて、周りの電波を阻害しちまってるのかもしれない。本格的に修理しないと駄目っぽいねこれ」


 私はその言葉になにかがひっかかりを覚えた。今までの疑問に答えを出せそうな何かがそこにあると漠然と感じる。そしてそれはこのラジカセを持っていたらわかるような気がした。


「やっぱり買いなおした方がはやいか~ もう少しお金に余裕が出来たらまたくるよ」


「ああ、そうしてもらえるとうれしいよ。こいつはどうする? ウチで処分してもいいが」


「やっぱり持って帰るよ。ごめんねおばあちゃん」


「まあ愛着あるだろうしねえ。いいんじゃないか、物を大切にする分にはさ」


「いいの?」


「うん、まあラジオは当分おあずけだけど」


「私がいうのも何だけど携帯とかで聞けないもんかね」


「たぶんできるとは思うけど」


 どれがいいとか調べるのは面倒だな。私は自覚はあるのだが自分に対してはけっこう無精なきらいがある。


「ま、いいよ。寝るまでの暇つぶしだし。でも私けっこう寝付くのに時間かかるんだよなー」


「じゃ、じゃあ私が電話とかすればいいんじゃないかな」


「え? いいの? というかスマホとか持ってるんだ」


「とうぜん。人類の文明を解明するには必須」


「そうなんだ、じゃあ失礼してと」


 連絡先を交換したあと、おばあちゃんにお礼を言って私たちは店を後にした。間宮さんは別れる間際まで二十二時に電話するからと面白いくらい何度も言っていて、どんだけ私は信用のない奴なんだと思い返すと笑ってしまう。


 入浴のあと自室に戻った私は今日持って行ったラジカセを取り出した。そしてそのラジカセを元々置いてあったアンティーク風の真っ白なチェストの上に戻す。見た目ではわからないがラジオ聞くことはできない。CD再生くらいはいけると思うけど。


 ──こいつ本体のノイズが大きくなりすぎて、周りの電波を阻害しちまってるのかもしれない。


 おばあちゃんの言葉を反芻はんすうする。これはそう、私と同じだ。今まで私は間宮さんが宇宙人かもしれないから脳の電波を読み取れないと思い込んでいた。それは間宮さんが他の人と明確に違う部分だったからだ。でも私自身も間宮さんと他の人たちとの接し方には大きな違いがあることを宮村のおかげで薄々ながら自覚した。


 私は初めて間宮さんと会ったあの時、たぶん一目惚れをした。いままで恋なんてものとは縁がなかったから気づかなかったがそれからずっと浮かれたり舞い上がったり冷静じゃなかったんだろう。その結果、私の感情が膨れ上がりすぎて、間宮さんの心の声をかき消してしまった。


 あのお店に行く前の道のりで自分の本音をさらけ出して、気持ちを少し楽にしたあの瞬間だけ間宮さんの思考を読むことができた理由にも説明がつく。その後に間宮さんに手を握られて読めなくなったことも含めてね。


 しかしその場合間宮さんが宇宙人であるという根拠も消えてしまう。でもそれは私が思考を読み取れるようになれば自然にわかることだ。


「そうかこいつわたしと同じかあ」


 つんつんとラジカセを指でつつく。


 なんかそう思うと途端に愛着が湧く。まあいっか、しばらくこのままでも。別に最近は退屈してないし、それに今日も間宮さんが電話してくれるそうだし。


 そう思っているとタイミングよく私の携帯が鳴った。宛名を見ると間宮さんの名前がある。


 お、きたきた。しかも二十二時ジャスト、宮村もこのくらい時間にしっかりしてれば周りの評価もそれなりになるのに。まあいいか。とうぜん私には電話にでる以外の選択肢はない。


「……もしもし、間宮ですが」


「おー放課後ぶりだねえ。付き合わせちゃってごめんね」


「ううん、いま別にすることもないしいいの」


 電話越しなのに間宮さんの声は透き通っていて綺麗だ。いまどんな姿勢で電話に電話に出ているんだろうか。私のようにベッドに座って電話してたりしているのかな。


 いや間宮さんのことだから無重力の空間でふわふわとしながら通話しているのかもしれない。想像するとすごく可愛い。


「間宮さんはいままで何してたの?」


「普通に明日の宿題とか」


「真面目だねえ、感心、感心。じゃあ今度のテストは自信ありな感じ?」


「えっと」


「そろそろでしょ期末試験。ウチのクラスの子とか必死にやってる人もいるけど、間宮さんはどう?」


「たぶんあんまり……。ここのテストってなかなか難しいよね」


「私、成績だけはいいから休みの日とかでよければ、ウチで教えようか? 結構散らかってるけどさ」


 ちなみに『ここ』は地球ここという意味でいいんだろうか。宇宙的にみれば高校レベルの微積分とか赤子レベルのように思えるけど。実は間宮さんの母星は教育費がべらぼうに高く、義務教育のある地球に海外留学ならぬ星外留学をしてるとか……ないな。


「ほんと! いく! ……あの行っていいなら」


「もちろん、大歓迎。あ、でも宇宙食とか取り寄せないと間宮さんのご飯が」


「普通でいいの! いつもみんなと変わらないお弁当とか食べてるから」


「あれ料理とか結構する方?」


「する。こう見えても腕はすごい。すごい大スペクタクル」


 はたして料理でスペクタクルは大丈夫なのだろうか。そんなこんなで間宮さんとの電話はしばらく続いた。転機は十五分ほどたった時のことだ。


「こんな感じに私以外と電話する?」


「電話はあんまりしないなー 私けっこう失言しそうだし。あんまり変なリスク増やす行為はしないかなー」


「私はいいんだ」


「普通に話すのと変わらないからね。むしろ姿が見えない分冷静に話せる自信がある」


「なにそれおかしい。私といると冷静じゃないみたいな言い方」


 間宮さんが電話越しで笑う。そうです、いつも冷静じゃないんです。


「あの、明日もテレパシーの調査しようと思うんだけど。どう?」


「ああ、調査ね。それについては解決したというかなんというか。まあ詳しいことは明日話すよ放課後空いてるよね?」


 ある程度の結論が出た以上、間宮さんには話すべきだと私は思った。内容を話すのは拒絶されそうで怖いけど、間宮さんにも私の気持ちを知って欲しい。でも異文化も異文化だし大丈夫な気がする。宇宙はきっと多様性もすごいはず。


 しかし電話の向こうから息を呑むような音が聞こえたかと思うとそれから何も聞こえなくなってしまった。


「おーい間宮さん? あれ……切れてる」


 あれなんか変なこと言ったっけ私。そしてかけなおしても電話は繋がらない。私はそのもやもやとした気分のままベットの中に入ったのだった。


 ***


 昨夜の電話のあと、私は間宮さんの声を聴いていたこともあってか全然寝付けなかった。遅刻ぎりぎりの時間を寝ぼけ眼をこすりながら潜り抜け、教室の扉までくると非常に聞き覚えのある心の声が聞こえてきた。


(よっし、やっときた……まずは一発お見舞いしとくか)


「おは──え? うっ」


 いきなり宮村に軽く腹パンされた。まだパン一切れしかいれてない試運転状態の私のお腹に朝からひどい洗礼だ。


「な、なに?」


「いや待ちくたびれたイライラをぶちまけた」


「はあ?」


「なんか久しぶりに朝早くきたら、隣のクラスのあの自分を宇宙人とか言ってる……えーと」


「間宮さん」


「そうその間宮さんに話しかけられてさ。聞くとお前の席はどこだっていうんだよ」


「はあ」


「答えたらあれよ」


 宮村が指しているのは私の席、そして何故だかそこには間宮さんがぽつんと行儀よく座っていた。有名人な上に、隣のクラスである彼女は当然ながらすごく注目を浴びている。見て見ぬふりはしているけど。


 しかし腑に落ちない。間宮さんは校内で私と会うの嫌がっていたはずだ。私は授業参観の際に子供に邪険にされる親の気持ちで仕方なく受け入れていたけど、どんな風の吹き回しだろう。


「あれめっちゃ気になるじゃん」


「いいよ、気にしないで。宮村はここに待機」


 ぶーぶー言っている宮村を眠気覚ましに下の自販機で買った温かい缶コーヒーを投げつけて買収した私は間宮さんの下へと行く。


「おはよー」


「解決したってどういうこと?」


 私に気づいた間宮さんは挨拶を返す訳でもなくいきなり昨夜に話したテレパシーのことについて聞いてきた。やっぱりいまも間宮さんの思考は読み取れない。


「間宮さんの思考が読めなかったのは多分私のせいみたいなんだ。今まで気づかなかったけどこの力って私の気持ちが平静じゃないと駄目なんだよ」


「聞こえないのは私だけなのに? それっておかしいと思うけど」


「それはその……──から」


「何言ってるの? 全然聞こえない」


 さすがに本人に面と向かって理由を話すのは恥ずかしすぎて自然に声が小さくなってしまった。


「やっぱり放課後、私と調査するの迷惑だったんだ」


「ちがっ! ……違くて。じゃあはっきりいいます」


 しかも間宮さんは困ったことに変な勘違いをしている。もう腹をくくるしかない。私は深呼吸をして、口を開く。


「もー君が可愛すぎるからいけないの! その顔も仕草も言動もひっくるめて目が離せないし、一緒に居るだけで胸が苦しくなって、どうにかなっちゃいそうなの」


 私の言葉にパチパチと大きな瞳を瞬かせて間宮さんは呆気にとられている。


「う……うそ、冷静じゃいられないってそういう……え、え。えーーーー!!」


「ごめん、自分のことなのにまだちゃんとわかってなかったりするけどそういうことなんだと思う。昨日だって間宮さんの声をきいたら、興奮して全然眠れなくて──」


「ま、まって、やめて! ここ教室! 理由はわかったから出直すから!」


 そういうと間宮さんは走り去ってしまった。


「うっなんか急にどっと後悔が……」


「いまあの間宮って子が顔真っ赤にしていっちゃったけど、何いったのよ。というかお前まさか恋の相手って」


 正解、流石宮村。しかし平静、平静かあ。


「ハードル高いなあ」


 胸のドキドキを感じながら私はそうつぶやいたのだった。


 ***


 私が帰ろうとしたところ、教室の扉の前で間宮さんが待ち構えていた。会うのは朝以来だがあんなことがあっても間宮さんは平然としている。うらやましい。


「あの、今日帰り付き合って欲しい。時間遅くなっても平気?」


「いいよ、全然」


 そして私は間宮さんの導くままに駅前のゲームセンターやら、本屋やらによって、日も落ちたころ、また学校に戻ってきていた。


「なんで学校?」


「この時間ならまだ校舎の鍵開いているから。ここからは先生にみつからずに」


「はあ」


 最上階まで駆け上がる、どうやら目的は屋上みたいだ。間宮さんはなぜか屋上の鍵を持っているらしく、扉を開けた。


「おー間宮さん結構わるだねえ」


「いいの。異星人はここの常識には縛られない」


 白い息が昇る先を私たちは自然に見上げる。もう冬も近いせいか、そんなに遅い時間帯ではないのに澄み切った墨染の空の一面にきらきらと光彩を放つ星々が見えた。それは何よりも輝いてみえ、思考さえも忘れるほどに美しい眺めだ。でもそう感じるのは隣に間宮さんがいるからだろうか。


「本当は空に近いほうがなんとなく電波も通りやすいと思って考えてたんだけど」


「あー無駄になっちゃったか、ごめん」


「私はテレパシーの秘密がわかったら、もうこうやって二人で何かするってことはないって思ってたの──それが私たちの繋がりだったから。だから最後にこうやって星をみたかったんだ。私を見つけてくれた恩返しとして」


「いやいやそんな恩返しだなんて、早いよ。だって間宮さんの思考もまだ自由に読めないし、まだまだ調査する余地は全然あるよ、あるある!」


「そうかな。そういってくれるとうれしい」


 二人で静かに空を見上げていると日々の生活で心に空いた穴が満たされそうな気持ちになる。間宮さんも同じ気持ちだとうれしいんだけど。


(今日ここにきて、勇気を出してよかった)


「お、聞こえてくるようになった。間宮さんの心の声」


「ほんと? うれしいけど少し恥ずかしい」


「そうだ。間宮さんの心が読めるようになったら一つやりたいことがあってさ」


 私は額にしわを寄せて、間宮さんの思考と繋がるように念じた。


(どう? 聞こえる)


(え!? どうして声が頭に……)


 これは交信といって他の人の思考は読めなくなるが少し念じるだけで、特定の人と会話できるようになるというものだ。


(こうやって、少しの距離なら頭で念じるだけでやりとりできるんだ。こんな星空の下なんかだと静かな方がよくない?)


(そうかも。ふふっ、テレパシーってこんな感じなんだ)


(そうこんな感じなんです。勉強になるでしょー)


 夜風に当てられてそれなりに身体は冷えていると思うが不思議とそんな感じはしない。


(──私さ、星をみるのが好きなんだ)


(そうなんだ)


(うん。星ってその時その時で見える形も数も違うけど、見上げればずっとそこにあるものだから。どこに行っても、誰と別れてもそれは変わらない。おはようより初めましてのが多い私の数少ない居場所なの)


 理由はわからないけど、間宮さんは何度も住んでいる場所を変えてきたのだろうか。


(怖いの、他の人と関わるのが。どんなに良くしてもらっても私は何ひとつ返せない。だったら最初から関わらなければいいとさえ思ってる)


 間宮さんは真っすぐに星を見つめている。

 このままだと間宮さんが遠い場所に行ってしまいそうで──だから私はそっと手を握った。


(何ひとつ返せないなんてことはないと思うよ。いまのこの瞬間だって私にとっては大切なものに違いはないんだからさ。間宮さんはどう思う?)


(そう……私もそう思いたい)


 さっきよりもしっかりと間宮さんは手を握り返してくれる。


(あたたかい……)


(まだ怖い?)


(ううん、私はもう──)


「おーい! 屋上に誰かいるのかー!」


 間宮さんの心の声を遮るように扉の向こうから声が聞こえてくる。残っていた先生が巡回に来たのだろうか。とりあえず見つかったら問題になることは間違いない。


(どうして!? 今日は大丈夫なはずなのに。どうしよう、もし見つかったら……)


 間宮さんはあたふたと屋上を行ったり来たり繰り返している。そんな姿を見て、私はくすりと笑みを浮かべ、扉の前に立った。


(今日はありがとう。だからここは任せて隠れててよ。大丈夫、日頃の行いは結構いいからそんな悪いようにはならないと思うし。私らがいなくなったら気をつけて帰ってね)


 間宮さんが死角になるように隠れたタイミングで、先生がすごい剣幕で入ってきた。


「またお前か間宮! って家路か。何やってんだお前」


「やー今日、星が綺麗じゃないですか。しかもここ鍵空いてるし、そしたらもう天体観測ですよね!」


「そうかそりゃしょうがない……っていうわけないだろ!」


 怒る先生。説教を覚悟した私の脳内に優しげな言葉が響く。


(家路さん、あなたは私の思考が読めないっていうけど、それでも十分に私のことをわかってくれている。そんなあなただから……私の秘密を話そうと思う)


 待って、これって。

 満天の星空というシチュエーション、ちょっと申し訳ないけど見回りの先生という障害、そして秘密の打ち明け。


 いやまー宇宙人で私を気に入って誘拐しにきたみたいなことも贔屓目に見て数パーセントくらいあるかもしれないけど。いや十中八九愛の告白だよこれ、ぜったい。


 落ち着けわたし、深呼吸だわたし。ここで何も聞こえなくなったら元も子もない。

 でも仮に告白だったとしたら……両想いってことになるのでは!?


 そんなことを考えていれば冷静や平静なんて言葉とはほど遠いピンク色の脳内が完成されるに他ない。


(私はあなた──────……)


 案の定、ザァーという雑音が頭の中に鳴り響き、何も聞こえなくなる。

 通信途絶、交信不能、浮かれた馬鹿がここに一人。


「は、ははは……。先生え……今の私どう思います?」


「馬鹿者に決まってるだろうが。親御さん呼んでしっかり報告させてもらうからな」


「ふぁーい……」


 私はそうして間宮さんと別れたのだった。


 ***


 昨晩は流石に大変だった。先生とお母さんのW説教に加えて、何か悩みがあるのかと散々問い詰められた。いままで優等生だったこともあってかそこまでの問題にはならなかったが両親には申し訳ないことをした。これからは自分の気持ちを素直に表現していくのもいいのかもしれない。


 そして問題は間宮さんだ。あの別れの後メールをしたが何も返事がなかった。忽然と姿を消したなんてことありませんように。


 登校して上履きに履き替えようとすると何か指に当たる物が。あれ、下駄箱に何か入ってる。


「なにこれ?」


 赤いチェック柄のランチクロスに包まれた楕円系の何か。


 弁当箱かな? とりあえず教室に持っていこう。


「お前が弁当なんて珍しいな」


 宮村が机の上に弁当を広げている姿を見て声をかけてきた。


「いや下駄箱に入ってたんだけど……」


「こわっ」


 とりあえず中身が気になるので開けてみることにする。

 ブラックホールとホワイトホールをミキサーにかけて抽出したような異臭を放つ何かがご飯の上に乗っており、加えて異世界の果物といってもおかしくないサイケデリックなおかずが備えてある。


「うーむ。この世の終わりかな(大スペクタクル)……」


 うん、とりあえずこれは机に封印しよう。


「いやイエジ命狙われてんの?」


「あはは……そんなことは──」


 机に手を入れた瞬間、どさどさと手紙が落ちてくる。そのうちの一枚を手に取ると「午後四時にお前の元に行く」と書いてある。まさしくこれは誘拐か暗殺かの予告に違いない。


「うん、ありえるかも」


 爆笑する宮村を置いて、とりあえず昨日あんな形で別れてしまった間宮さんが心配で探そうと教室を出ようとする。


「あたっ」


 その瞬間にある女生徒とぶつかってしまった。あれこの白い髪は……。


「ごめんなさい……って間宮さん!? よかった登校してた」


 間宮さんは昨日と変わらずの姿だが少し俯きがちだ。


「……おはよう。私が作った弁当どうだった?」


「おはよー あれ間宮さんのだったんだ。いやまだ食べてないけど、これから授業だし」


「そうなんだ、残念」


 ということはあの手紙も間宮さんに違いない。

 あれうそ、昨日の最後の言葉ってもしかして「私はあなたを誘拐する目的で来た。もう手加減はしないから覚悟しておけ」的な宣戦布告だった?


 舞い上がってたの私だけ!? いいやもう本人に確かめよう!


「あの……昨日の私が最後に言ったことなんだけど──」


「ごめん! 昨日の最後の言葉全然聞こえませんでした! だからもう一度聞かせてください!」


「……え?」


 間宮さんは呆けた顔をしてしばらく経つと、こらえきれなくなって周りが驚くほどに大笑いをした。


 そしてひとしきり笑った後。


「私、あなたを狙っている」


 そう言い残すと間宮さんは先に行ってしまった。私への告白あるいは宇宙人の誘拐ともとれる言葉。それがどっちの意味かなんて私にはわからない。


「もー どっちなんだよ~!」


 他人の目も気にしないで叫ぶ。鏡を見ないでもわかる、今の私はきっと口元に笑みを浮かべているんだろう。

 そして私は彼女を追いかけながら考える。いつかこの恋心にも慣れて間宮さんの秘密を暴ける日が来るのだろうか。

 それはわからない。けどいまはその輝きを逃さないように走り続けよう。

 未確認で刺激的な私だけの星を。

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