第35話 森蘭士朗参上
織田家次期当主は約束通り織部焼の店を潰し更地とした。現在、建物は何も建っていない。
また、時を同じくして利子の実家に織田家次期当主から手紙が届いていた。
蒲生:「利子ちゃん、手紙にはなんて書いてあるの?」
利子:「手紙には『次の週末、親父の秘書の森さんをお前の実家に送る。』って書いてあるね。」
高山:「森さんというと、利子さんのおばあさんが、織田家現当主を追い詰めた時に邪魔した人物ね。十分に対策しないといけないわね。」
屋上で利子・蒲生・高山の3人で昼食を食べながら話していると、後ろから織田次期当主が声をかけて来た。
織田家次期当主は、先日から同じ学年に転校してきていた。しかも利子や高山と同じクラス。
織田:「さあ利子、頑張って森さんを倒して見せろ。はっはっはっ。」
高山:「織田くん、森さんの情報を教えてください。こちらは何も知らないので、とても不利です。」
織田:「そうだな、俺も森さんが苦戦する姿を見てみたい。いいだろう、いろいろ情報を提供してやる。何が聞きたい。」
利子:「織田くんのお父さんと私の祖母が話している時、森さんはどうやって話の邪魔をしたの?」
織田:「話の途中で茶を持ってきて、普通に話に参加したみたいだな。なんでも『泪の茶杓』とかいう逸話を話したそうだ。」
高山:「『泪の茶杓』の逸話。利子さんは知っていますか?」
利子:「聞いたことないかな。」
織田:「親父は『瀬田の擬宝珠』の逸話を話したあと、『破袋』の逸話であの婆さんを追い返したって言っていたな。」
高山:「『瀬田の擬宝珠』に『破袋』の逸話。織田くんは、どんな逸話か知っているのかしら。」
織田:「俺は元々、織部に興味があったわけじゃないから逸話は知らん。」
高山:「これは少し調べる必要がありそうね。」
利子:「どうやって調べるの?」
高山:「利休派の長官を頼りましょう。」
織田:「面白そうだ、俺もついて行こう。」
利子:「じゃあ、放課後になったら長官の所へみんなで行こう。」
放課後、長官の所へ行くと、なんと長官の前に森さんがいた。
森:「これは若、このようなところで会うとは珍しいこともありますね。」
織田:「今は俺も立派な利休派だからな。森さんも利休派になったのか?」
森:「いいえ、私は旦那様からのメッセージを長官殿に伝えに来たまでです。」
織田:「メッセージ?」
森:「はい、『次は織田家の威信をかけよう』とのことです。」
織田:「親父が本気になったってことか?」
森:「もうすぐこの町はオオイクサに巻き込まれます。利休派は壊滅し、織部レンがこの町を支配します。利休派にいては危険です。若、悪いことは言いません。御実家にお戻りください。」
織田:「悪いな、森さん。俺は一度決めたことをすぐに変えるのは嫌いなんだ。このイクサ、利休派に付かせてもらうぜ。」
森:「そうですか。若の考えはわかりました。それからそちらが利子さんですね。ご挨拶が遅れて申し訳ありません。私は森蘭士朗と申します。以後、お見知りおきを。」
利子:「あっ、はい。ご丁寧にどうも、利子です。」
森:「今日はこれで失礼いたします。利子さん、週末、御実家にお邪魔いたします。どうぞお手柔らかに。」
森さんは高山さんや蒲生さんなど、他の人には何も言わず帰って行った。
利子の言葉を聞き、みんな、思い思いに喜んでいた。
現在の織田次期当主の特殊能力
・決意の家出・上級




