第24話 古田織部の失敗談
祖母:「では、今日は最後にとっておきの話をしてあげましょう。古田織部の失敗談よ。もし、織部ズム達に利休居士の悪口を言われて、反論もできない時、この『台子に頭をぶつける』という逸話が役に立つはずよ。」
私:「台子?」
祖母:「台子は、腰ぐらいの高さがある黒い棚ね。お茶はね、最初、台子点前というものしかなかったの。その後、バラバラな点前が巷にあふれるのだけど、利休居士が統一したのよ。」
私:「利休ってすごい人だったんだ!」
高山:「先ほどから、利休のことを利休居士と呼ばれていますが、違いは何ですか?」
祖母:「あらあら、そこに気付いたのね。えらいわ。居士号は、出家していないお坊さんのことよ。利休居士は、晩年、常に豊臣秀吉に仕えていて、奥さんをもらって子供もいたの。出家すると、普通はお寺で修行するものだけど、利休居士はそうではなかった。だから居士号なのだけど、今は〇〇さんという敬称ね。利休さんと言うのはなんとなく気が引けるから、利休居士と言っているの。もうそれで言い慣れてしまっていてね。」
高山:「そうですか。私達も利休居士と言った方が良いですか?」
祖母:「無理することはないのよ。利休と呼び捨てでも問題ないもの。大切なのは心、それを伝えようとする気持ち、そして、相手の事を思いやる、おもてなしの心。」
私:「私、利休って言い慣れちゃったから、これからも呼び捨てにする。呼び捨ての方が、なんか親しみが持てるし。」
蒲生:「利子ちゃんが呼び捨てなら、私もそうする。」
高山:「私もそうします。話を中断してすみません。逸話をお願いします。」
祖母:「古田織部は織田有楽という人に茶会に招かれたの。茶会では、天下無双の水指・龍頭という抱桶が使われていたわ。普通は、この水指を見せてほしいというものだけれど、古田織部は、炭火の付いた風炉を見せてほしいと言ったの。風炉を覗き込んだ時、炭の熱で思わず頭を引いて、台子の天板に頭をぶつけて、天板にあった道具を落としてしまったのよ。何食わぬ顔で、元に戻したけれど、その様子を見ていた織田有楽によって、町中の笑いものにされてしまうというお話。」
私:「もしかして、これにも教訓があるの?」
祖母:「鋭いわね、利子ちゃん。この話の教訓は、習っていないのに知ったふりをすると、大恥をかくことがあるということよ。当時、古田織部は、すでに茶の湯の名人だったの。でも利休から道具の拝見方法をちゃんと習っていなかった。それがアダとなったのね。」
高山:「これは織部ズムと戦う時、すごい武器になるわね。」
私:「ありがとう、おばあちゃん。」
祖母:「そろそろ夕方だね。うちで夕飯を食べて行くかい。」
高山:「私は、家に帰らないといけないので、ここで失礼します。」
蒲生:「私も帰らないといけない。」
私:「私は帰らなくても良いんだけど、二人が帰るなら一緒に帰るね。警備員さんにも悪いし。」
祖母:「そうかい、じゃあ気を付けてお帰り。また、いつでもおいで。」
私:「それじゃ、おばあちゃん。」
高山:「ありがとうございました。」
蒲生:「また来ます。」
現在の利子の特殊能力
・逸話の伝道師・中級(☆LVUP↑)
『丿貫の落とし穴』『三献茶』『落ち葉の風情』
『密庵咸傑墨蹟』『森口の茶人』『一両の茶巾』
『心の持ちよう』『侘び茶の極意』『台子に頭をぶつける』
・茶道は不得手
・みんなのリーダー・中級
・利休派への勧誘力・初級
・駆け足・得意
・長官への信頼・初級
・警備員のマドンナ・初級
・メモの使い手・初級(☆LVUP↑)




