第21話 まずは、ご近所から
私達は警備員に守られながら、数日間、何事もなく学校生活を過ごしていた。
その日、古田姉が写った茶道部の写真が広報に載った。
紹介文には、私が語った逸話『落ち葉の風情』が載っていた。
蒲生:「今回の利子ちゃんの逸話も面白いね。」
古田:「お姉ちゃんも茶道部の写真に大満足だったの。全部、利子先輩のおかげです。」
高山:「利子さん、そろそろ長官に会いに行きましょう。私達の状況を説明して、今後の対策を練らないといけないわ。」
細川:「では私も、芝山君と一緒に伺いましょう。ボディーガードね。」
芝山:「任せてくれ。瀬田も行くよな。」
瀬田:「もちろん。牧村はどうする?」
牧村:「瀬田君が行くなら、私もお供するわ。」
私:「じゃあ、放課後、みんなで長官のところへ行こう。」
放課後、私達8人と、警備員数名が利休派の事務所に押しかけた。
長官:「賑やかなメンバーが来たね。待っていたよ。」
私:「お久しぶりです、長官。」
長官:「まずは、皆さん座った、座った。」
警備員以外の8人が全員座ると、長官は先日の話を始めた。
長官:「先日、芝山君の父親が訪ねてきてね、事件の概要を語っていったよ。利子さんには、大変な迷惑をかけてしまった。申し訳ない。」
私:「そんな、気にしないでください。私は、利休派とか関係なく千利休が好きなんです。だからこの件が無くても、いつか織部ズムから狙われていたかもしれません。むしろ警備員の人が見守ってくれる生活になって、すごく安心できます。」
警備員:「利子ちゃんは、いい子だね。」
私:「えへへ。」
長官:「ありがとう、利子さん。さて、秘書さんの事は、以前から勘付いていたんだ。彼女が来た3年前から織部ズムに負け続けになったからね。」
高山:「秘書さんの事を、どうして私達に話してくれなかったんですか?」
長官:「彼女を利休派にできるのではないかと思っていたんだ。いくつもの逸話を語り、いつか真の利休派として、おもてなしの心を身に着けてくれると信じていた。本当に甘い考えだった。」
私:「私は長官の考えに賛成です。だって秘書さんは、逸話を話すとき、本当に楽しそうだったもん。」
高山:「私もそう思います。利子さんを利休派にしたのは、秘書さんですもの。きっと心のどこかでは、利休派になりつつあったのだと思います。」
私:「みんな、長官、それに警備員さんの皆さん、私、これからも利休派として利休の逸話を語っていきたい。日本人全員なんて大げさなことは言わない。身近なご近所さんで良いから、少しでも、おもてなしの心を伝えたいの。日本人にとって、本当に大切な心はなんなのか、逸話を通して知ってほしいの。」
蒲生:「利子ちゃん。私は応援する。」
高山:「私は作戦参謀ですもの、当然参加するわ。」
細川:「私達は利休派ですもの、参加するのは当然ですわね。芝山君も良くって?」
芝山:「僕は細川さんが参加するなら、どこでもついていくよ。瀬田はどうする?」
瀬田:「このメンバーだと、芝山しか男がいないからな、俺が守ってやらないと。」
牧村:「私も守ってください。瀬田君。」
古田:「利子先輩、どこまでもついていきます。」
長官:「子供達に諭されるとは、私も歳になったものだ。」
警備員:「これは、私達大人が、しっかり守ってあげないといけませんね。」
細川:「さあ、利子さん、いつものように掛け声をかけてくださいます。」
私:「えっと。私たちのご近所に、おもてなしの心を取り戻すため、がんばりましょう。」
全員:「がんばろう~。」
全員で右手のこぶしを高くつき上げた。
現在の利子の特殊能力
・逸話の伝道師・初級
『丿貫の落とし穴』『三献茶』『落ち葉の風情』
『密庵咸傑墨蹟』『森口の茶人』『一両の茶巾』
・茶道は不得手
・みんなのリーダー・中級(☆LVUP↑)
・利休派への勧誘力・初級
・駆け足・得意
・長官への信頼・初級
・警備員のマドンナ・初級(☆LVUP↑)




