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やり直し悪役令嬢は、幼い弟(天使)を溺愛します 2023/7/15コミックス2️⃣巻発売!  作者: 軽井広@北欧美少女2&キミの理想のメイドになる!
第二章 王太子という名の危機

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XXX!X 一番のお気に入り

 王太子はわたしたちの王宮内での移動を許してくれた。

 だから、フィルがわたしの部屋から追い出されても、フィルに会うこと自体は自由にできる。


 次の日の朝、わたしがフィルの部屋を訪れると、フィルはぱっと顔を輝かせて、わたしを出迎えてくれた。

 今日は、男の子らしい半ズボン姿だ。


「……お姉ちゃん! 会いたかった!」


「昨日まで同じ部屋にいたでしょ?」


 わたしがくすくすと笑うと、フィルは真顔になった。


「でも、十八時間も会ってなかったよ」


「え? ええと……そうだけど……」


「だから……寂しかった」


 王太子に昼寝を見られたのが、昨日の夕方三時頃。今が朝の九時だから、たしかにきっかり十八時間だけど。

 一日も経っていないのに、そんなに寂しがるとは思わなかった。

 でも……姉としては嬉しい。


 フィルが、こほ、と軽く咳をする。

 わたしは心配になって、フィルの黒い瞳を覗き込んだ。


「大丈夫……?」


「平気。お姉ちゃんに会えたのが嬉しくて、ちょっと咳き込んじゃっただけ」


 とフィルが可愛らしく微笑む。

 本当に可愛いなあ、と思って、わたしはフィルを抱きしめようとしたそのとき、部屋の扉がノックされた。

 タイミングが悪い。

 

 がっかりしながら、わたしが扉を開けると、そこにはアリスとシアがいた。


 フィルを抱きしめられなかったのは残念だけど、二人とも、わたしのために来てくれたのだ。


 わたしが二人を歓迎すると、二人とも嬉しそうな顔をした。

 アリスはにこにこと、シアは照れたようにうつむいている。その後ろに、戸惑ったような顔の、従者のレオン少年がいた。


 アリスがわざとらしく咳払いをする。


「それでは、クレアお嬢様解放作戦の会議を始めましょう!」


 おー、という掛け声とともに、アリスが右手を天井に向けて突き出す。

 一瞬の間を置いて、わたしたちも「おー」と言い、おずおずと手を挙げた。


 まず、シアが報告する。

 

「王妃様との面会の約束は整いました。明日の午前八時からです」


 シアは公爵家の家臣たちを通して、わたしが王妃と会えるように調整してくれた。

 公爵家の養女とはいえ、シアは新参者だし、家臣たちに頼みを聞いてもらうのは大変だったと思う。

 とわたしが言うと、シアは首を横に振った。


「みんなクレア様のためと聞いたら、喜んで協力してくれましたよ。さすがクレア様……人望が厚い……」


「いや、単にわたしが公爵令嬢だからだと思うけど……」


「ただの公爵の娘だったら、みんな熱心に協力してくれたりしませんよ」


「そ、そうかな?」


「はい」


 シアはにっこりと微笑む。そう言われると、わたしもなんだか家臣に信頼されているような気がしてくる。

 レオンはぷいっと顔を横に背けていたけど……。


 わたしは言う。


「今わかっていることは、わたしが暗殺の危険にさらされているということね」


 レオンがそれに反応し、わたしを青い瞳で見つめる。


「要するに、それ以外、何もわかっていないんでしょ?」


「まあ、そうね……」


 ほとんど情報はない。

 王太子はわたしを守ろうとここに監禁しているという。


 でも、何から?

 

 あとは、王太子がわたしを必要な理由は、彼が王位継承を確かにするため、というのも推測できる。

 アリスが手を広げて自慢そうに話し始める。


「あたしは王宮の人たちにいろいろ話を聞いてきました。王太子アルフォンソ殿下と、第二王子サグレス殿下。この二人のどちらが王位を継承すべきかをめぐって、今、王宮内では不穏な空気が流れているみたいなんです」


「普通に考えたら、王太子殿下がすんなりと継承するんじゃないの?」


「そのとおりです」


 アリスがうなずく。


 話が複雑になったのは、宮廷貴族たちの策謀があるという。

 王都で国王のそばに仕える宮廷貴族たちは、自前の領地を持たず、王家から金銭ベースの封禄を得ることで、生活を立てている。

 彼らにとっては、国王の権利を強くし、王国の税収を上げることで、自分たちの封禄を増やす道が開かれる。

 隣国との戦争の準備を進めていることもあり、宮廷貴族は王家を焚き付けて、地方への増税を企んでいた。


 一方で、地方の大貴族たちは、領地から得られる収入で財政を成立させている。わたしの父のリアレス公爵も、そうした大貴族の筆頭だ。

 大貴族たちは、王国からの増税に抵抗するし、場合によっては反乱を起こしたりもする。


 宮廷貴族と地方貴族は真っ向から利害が対立している。

 そして、宮廷貴族が推すのがサグレス王子、地方貴族が推すのがアルフォンソ王太子ということだ。


「それに、サグレス王子はかっこいい方ですからねえ」


 とアリスが言う。


「まるで見てきたみたいな言い方ね」


「見てきましたよ」


 とあっさりアリスが言うので、みんなぎょっとした顔をした。もちろん、わたしも。

 

「ど、どうやって……?」


「普通に王宮をうろうろしていたら、声をかけられました。王子とは思えない、自由奔放で、頭の回転の速い方でしたね」


「へえ……」


「もちろん王太子殿下も優秀な方なのだとは思いますけど、仕えるなら、サグレス王子というふうに思う方も多いかもしれません」


「なるほどね」


 王太子の憂鬱そうな顔が思い浮かぶ。そして、前回の人生でのサグレス王子の顔も。

 前回、「王太子の敵はわたしの敵!」という偏見で、わたしはサグレスを見ていた。接する機会も少なかったと思う

 だから、サグレスのことをいい加減なやつとしか思っていなかったけど……でも、その評価は高いみたいだ。


 アリスはにっこりと笑う。


「もちろん、あたしのご主人さまはクレア様一択ですけどね」


「ありがとう、アリス。わたしにとっても、一番のメイドは、やっぱりアリスね」


「あら、メイドのフィル様が一番のお気に入りなんじゃないですか」


 とからかうようにアリスは言い、わたしとフィルは顔を赤くした。

 また、メイド服姿のフィルは見てみたいけどね。

しばらく和やかな感じです。次回は土曜日ぐらいの更新です。


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― 新着の感想 ―
[良い点] アリスが、ものすごく有能な諜報員に思えてきた。
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