コミック連載開始記念SS やり直し悪役令息は、幼い妹(女神)を溺愛します(?)
☆おしらせ☆
漫画1話が連載開始! その他世界観が共通の異世界ラブコメ漫画も先週発売のほか、異世界恋愛短編の投稿なども新しくしました。詳しくはあとがきをご覧ください。
その日は珍しくフィルが沈んでいたので、どうしたのかなと思った。
屋敷に来た当初は表情の硬かったフィルだけど、今ではすっかり明るくなっている。
人見知りなところは相変わらずだけど、わたしの前では素敵な笑顔を見せてくれていた。
それなのに、今日は部屋でふさぎこんでいる。まだお昼だというのに。
ベッドの上で、ぼんやり座っているフィルのことが、心配になってきた。
「どうしたの、フィル? 落ち込むことがあった?」
「お姉ちゃん……。ううん、何もなかったよ」
「本当に? 誰かにいじめられたりとか……」
フィルは微笑み、首を横に振った。
「このお屋敷にそんなことをする人はいないよ。みんなとても親切だから」
「それも……そうかもね」
「アリスさんも、公爵様も、みんな僕に優しくしてくれるもの。もちろんお姉ちゃんも」
フィルは小首をかしげて、宝石のような黒い瞳でわたしを見つめる。
うん、可愛い!
姉バカだと思いつつも、フィルを抱きしめたくなる……!
でも、思いとどまった。
わたしはフィルが暗い表情をしているから、心配になったんだ。
当初の目的を忘れるところだった。
「えっと、じゃあ、体調が悪いとか? どこか悪いところがあったら、すぐにわたしに相談してくれれば――」
フィルは慌てて「心配させてごめんなさい」と言った。
「た、体調が悪いわけでもないよ。あのね……ちょっと、本を読んだら落ち込んじゃって」
「本?」
フィルは本を読むのが大好きだ。
難しい本から子供向けの小説まで、なんでも読む。この屋敷の図書室は本の品揃えはよいし、本を読むとき、いつもフィルは幸せそうにしていた。
なのに、どうしたんだろう?
フィルはためらうように、口を開く。
「えっとね……さっき読んだのは小説なんだけど……貴族の兄妹が主人公の小説なんだけど……妹が悪者のお兄さんを殺しちゃうの」
「え?」
「それでね、そのお兄さんは殺された後に、心を入れ替えてもう一度人生をやり直すんだけど……」
ま、まるでわたしのことみたいだ。性別が逆転しているけど、それでもそっくりだ。
続きはどうなるんだろう?
わたしが尋ねると、フィルはとっても悲しそうな顔をした。
「お兄さんはね、妹を大事にして幸せにするんだ。二人は仲良く、とても仲良く暮らしていた。だけどね、ある日、お兄さんは悪者から妹を守って、怪我をして死んじゃうの。最後に、お兄さんは『この先も、ずっと君のことを守りたかった』って言って、それで……」
その兄は、死んでしまったから、もう妹を守ることはできなくなった。
悲しい話だな、と思う。
フィルは悲劇的な結末の小説を読んで、暗い気分になっていたみたいだ。
しかも、それが、わたしたちと同じような兄妹の物語だったからなおさらだと思う。
わたしは微笑み、ぽんとフィルの頭を撫でた。
フィルは驚いたように、わたしを上目遣いに見る。
「大丈夫。フィルはわたしを殺したりしないし、わたしもフィルを守って死んだりしない。わたしは物語のお兄さんとは違うわ」
「本当?」
「フィルが望む限りずっと、フィルを守るから」
わたしが優しくそう言うと、フィルはぱっと顔を明るく輝かせた。
「信じて……いいの?」
「もちろん! わたしがフィルとの約束を破ったことがあった?」
「一度もないと思う」
そして、フィルはうなずいた。
小説のなかの悲劇なんて、現実のものにはさせない。
わたしはフィルの手をとる。フィルはちょっと恥ずかしそうにしたけれど、抵抗しなかった。
フィルの小さな手を握ると、とても温かい。
この温かさを、わたしは守っていこう。わたしが力の及ぶかぎり、フィルの望む限り、いつまでも。
【あとがきと大事なお知らせ】
フィルが読んでいた小説は『やり直し悪役令息は、幼い妹(女神)を溺愛します(仮)』として投稿するかもしれません(続編も加えて結末はハッピーエンドにして!)。
お知らせです!
①異世界恋愛の短編『婚約破棄されました。でも、優しくてかっこいい幼なじみ執事と結婚することにしたから幸せです!』を投稿しました!→https://ncode.syosetu.com/n5642hg/
②異世界ラブコメ『追放された万能魔法剣士は、皇女殿下の師匠となる@COMIC』も先週から発売されています! 実は国名が共通で、『追放された万能魔法剣士』は同じ大陸の数百年前の物語になります。
③本作もマンガ連載がニコニコ漫画やピッコマにて本日開始です。フィルもクレアもとても可愛い!
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