03悠馬よ永遠に!苦しみの果てでランナウェイ
「ふん、退屈だな。」
教室の机の上で寝転びながら俺は呟いた。
俺の名前は、覇王坂悠馬。
何処にでもいる高校2年生だ。
服は着ないでいつも褌一丁でいる。
そして、ひょんな事から俺は神様にお願いされてこの世界を守ることになる。
近頃この町に冒険者ギルドなるものができたらしい。
俺はテレビ越しにそれを見ていた。
ニュース番組のワンシーンであったが、それが流れきる前に俺はこれが異常だと察した。
まず冒険者がこの世界に蔓延るとは到底思えない。
そして、テレビで紹介されていたステータスを持つ男たち。
俺には見えなかったが、ステータスオープンの掛け声とともに、何かを見ていた気がする。
ギルド自体に危険性はそう感じられなかったが、冒険者なるものの所在である以上、確かめないというわけにもいくまい。
俺は学生服を破り捨て、いつものように褌一丁になる。
このしっくりくる感じたまらねぇぜ。
ギルドの場所は大体理解している。
この町なら誰もがいつか何かたつんだろうかと言われていたあのでかい空き地の場所だろう。
ギルド自体はポツンとした佇まいで、時折テレビ番組の絵は寂しそうに見えていた。
後ろの山の形を合わせれば、あそこでしかないと容易に想像できる。
俺は外に出て、ニッパーでワイヤーロックの鍵を切って隣の人の自転車に乗り、早々にギルドのあるであろうあの空き地を目指した。
「ほう、ここがギルドか。」
本当に空き地にあるものだから、どこか不思議だ。
ギルドの見た目も先の見た通り、木とレンガで作られ、自分はわからないが何か意味のあるであろうマークの入った旗を掲げている。
入り口にはドアなど無く、前に立った時点で少し中の様子が伺える。
「よーし、入場だー。」
「待って悠馬!」
ん?この俺を呼び止めるだと?
振り向くとそこには俺の長らく付き合いのある友人、所謂幼馴染というやつであろう彼、恭弥が立っていた。
常に短髪の俺には毎度気になる少し長めの髪と中性的な、いやただのTシャツとパンツかそんな格好で俺に話しかけてきた。
恭弥は男でありながら並みの女よりも顔立ちが整っており、こいつを知らないやつからは度々女と勘違いされる。
その可愛らしさはこの俺、悠馬ですら認めているほどだ。
俺は女に興味がないので俺の周りに花があるとすればこいつくらいなものだろう。
「悠馬もテレビを見たんだね。」
「まあな。」
「なんでもここに行けば冒険者の適性を見てくれるみたいでね、僕もちょっと面白そうだなって思ったんだ。」
「ふん、好きにしろよ。
だが最初に一つ言っておくぜ、俺はここを爆破しにきた。」
「え?」
恭弥は俺の発言を聞いてキョトンとしている。
無理もない、昨日まで友人だった奴がテロリストみたいなことを言っているんだからな。
だがそんなものはどうでもいい。
俺には使命ができた。
それ自体は面倒そのものだが、俺はくだらない毎日よりも、好き勝手できる非日常を求めている。
世界を救うだなんて退屈しなそうで丁度いい。
とはいえ大切な友人だ。
俺は恭弥に大体の事情を話した。
そしてこの異世界七つ道具の一つ、爆弾でこのギルドを木っ端微塵にしてやろうという事も話す。
最初はなんだこいつみたいな顔だった恭弥だが、流石俺の友人だ、俺に協力してくれるようだ。
となった以上俺たち二人は早速ギルドの中へ入っていった。
「オラァ!強盗だ!爆破させろ!」
好調な出だしとは打って変わって、あたりは静まり返っている。
どういうことだろう。
俺たちはギルドの受付に向かった。
「こんにちは。
毎日ニコニコ、ありがとうギルドへようこそ!」
受付のおねぇさんが、可愛らしい礼とともにこちらへ向ける。
早速冒険者登録をお願いしよう。
「では、こちらのステータスカードに登録をお願いします。」
そう言って渡された、カードゲームのカードくらい(レギュラーの方)のサイズの紙。
恭弥は当然のように、紙に触れて何かを見ている。
「なんだ、何やってんだ?」
「これ自分のステータスがわかるカードだよ。
ステータスオープンじゃわからないような詳しい事までわかるんだ。」
「悪い、お前の言ってることが全然ワカンねぇぜ。」
「え?悠馬ってステータスを見たこともないの?」
「yes」
「そっかだったらまず、ステータスオープンって言ってみてよ。」
「おう、ステータスオープン。」
「どう?出た?」
「グラタンなら。」
恭弥の言いたいことは何となくわかる。
どうやら他の人間はステータスが見れるみたいだな。
だが、俺がステータスオープンと言ってもグラタンしか出なかったんだがな。
しょうがないからと、そのままカードを触る流れになった。
俺はグラタンを食べながらステータスカードをべっとり触るんだが、うんともすんとも言わない。
受付に言って別のを用意してもらったが何も変わらない。
どうしようもなかったので。
「ステータスオープン!」
やはりあたりは静まり返る。
「ステータスオープン!」
俺は小一時間叫び続けた。
最初のグラタン以外あまりにも何も出ないので、ギルド石とやらで鑑定してもらうことにした。
五等のティッシュが鑑定されたのでもらった。
俺がげっそりしてきた頃だろうか、恭弥が冒険者登録を終えて帰っていった。
俺は泣きたくなった。
なぜ、自分には何もないのだろう。
無能なのか、頭がおかしいのか、いやそんな訳があるはずもない。
地べたを這いずり回っていると、あるご一行がギルドに来た。
「久しぶりゆうしゃ。」
全身を黒い鎧で覆った男。
後ろには、半裸で石鹸を持ったおっさんと、可愛い女の子が3人くらいいた。
彼らの到着に気がついたギルドの面々はその刹那、今までの静寂とした空間を打ち壊し始める。
「うおおお!勇者様の帰還だ!」
「待ってたぜ相棒。」
「今度の戦いはどうだったの?教えてよ君の冒険譚。」
「遅ぇじゃねぇか、お前の注文冷めちまったぜ!」
「勇者様!」
その他諸々。
あいつが帰ってきた途端、急にうるさくなったな。
さっきまでビジネススマイルだった受付嬢も案の定だ。
何がいいのかわからねぇが、妬ましいな。
よし、ここは一丁悠馬さんが荒らしてきますか。
「フォン!フォン!フォン!」
俺は腕を交互に叩きつけるように回転させながら、勇者に突っ込んでいく。
「甘いゆうしゃ。」
「んだと!」
スォン。
勇者と呼ばれる男は、剣を取り出し。
大根を切るかのように、悠馬に一撃を入れる。
この一撃で何かが切れたことを認識できる人間はここにはいない。
いや、ただ一人いた。
そう悠馬だ。
「いてぇなお前!
半分になっちまったじゃねぇか!」
左右で七三くらいにわけられた悠馬は、いつもの口調で尻をかいている。
真っ二つに切られたようだが、特に問題はないようだ。
当たり前だったわ、悠馬だったわ。
しかし、運命は悪戯の奴隷である。
ひょんなことから、ギャラリーが悠馬たちに問う。
「あいつ切られてね?」
悠馬は困惑した。
そして死んだ。




