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おとうと君の日常  作者: をじさん
3/3

おとうと君の日常 1日目 その3

午後八時である。両親ならびに姉ちゃんは帰ってこない。


可愛い可愛い息子を置いていったいどこをほっつき歩いているんだあいつらは。買い物に時間がかかる人種だとは思っていたが、ここまで時間がかかるものなのか、なんて思うだけ無駄無駄。あいつらは、なんなら一日中だってぶらぶらできるんだ。いろんな店のショーウィンドウを眺めながらあーでもないこーでもないとぺちゃくちゃぺちゃくちゃしゃべりながら平気で数時間歩き回るような奴らだぜ? 長年着るような、それこそ親父がずーっと着ているようなコート、確か俺が幼稚園の年長ぐらいの時ぐらいに買ったんだっけか、大事に大事に使ってるからか今でも全然使えている、ああいう物持ちの良いであろうモノを見定めるとかそういうのなら良いよ。味わい深いよね。物を大事にするっていうのはああいうんを言うんだよ。そもそも親父はあんまりモノを買わないからな、財布だって同じような時期からずーっとおんなじモノ使ってるし、最近革がこすれ過ぎて穴が開きそうとか言ってたから、今度の父の日にでも財布を買ってあげようかとかすら思ってしまうのだ。


ああ、今はそういう話じゃないか。あれだよ、あいつらはさ(言うまでもないが、おかんと姉ちゃんのことだぞ)、そういう、ずーっと使えるものを見定めてるわけじゃないんだよ、なんていうか、その時流行っているものを見て、論争しているわけでもなくて、本当にどーでもいいよくわからん骨董品だとか傘だとか香水だとかアクセサリーだとか、片っ端から眺めてはぺちゃくちゃぺちゃくちゃとしゃべり続けるんだ、……後半は普通に女の趣味っぽいな……、骨董品とかはむしろちょっと気になるけど……いや、いや! そうじゃない。と、とにかく、あいつらは時間がつぶせるものなら何にでも噛みついてしまうような奴らなんだ。え? 話が長いって? まあそういうなよ、どうせこの家には今俺しかいないんだからよ。


さて、恐らくあいつらは飯を食って帰ってくるだろう。買い物に行って、帰りが遅い時はいっつもそうだからだ。知ってる知ってる。育ち盛り、食べ盛りの健康少年こと俺のことは気にせずに優雅にレストランにでも行っているんだ。成長期? 何それ美味しいの? 関係無い関係無い無い、そんなものは平和ボケしたご時世、なんとでもなるんだよ。なんて強がりを言ったところで俺の腹の虫が止まることはないのだ。さっきからぐーぐーぐーぐー五月蠅いことこの上ない。わかった、わかったよ、飯を食えば良いんだろう。


といっても家庭科の成績ナンバーワン(五段階評価でいう一を指す。もちろん、数字が大きくなれば成績は良くなるぞ!)の俺にできる料理は多くない。包丁の使い方ぐらいはわかるよ。それこそ家庭科の授業で習ったし、おかんが料理してるところを何回だって見てる。ただなあ、両親と姉ちゃんだけならまだしも、クラスの奴らまで「お前は料理をするな」というんだ。料理が嫌いなわけじゃあない、レシピ通りに作っているはずなのにまぜか、なぜか違う味の違う見た目の何かができあがってしまうのだ。不思議だ……。この間もオムライスを作ろうとしたらめちゃくちゃすっぱくてしょっぱい得体の知れないものになってしまったのだ。もちろんおかんにめちゃくちゃ怒られたぞ。


ということで、俺が料理したことがばれたときのことを考えるとここは無難にカップめんを食うか、それとも帰ってくるのを待つか、の二択しかあるまい。お湯を入れるだけのカップめんなら俺にだってまともに作れるから、これは許されてはいる。でももしかしたらもう帰ってくるかもしれない、なにせ午後八時。ぼちぼち帰宅しようという気になっていてもおかしくない。そもそも、昼も焼きそばで夜はカップめんとか不健康まっしぐらすぎる(朝は寝てたから食ってないぞ)。ここは大人しく帰ってくるのを待とう。親鳥が餌を持って帰ってくるのを待つひな鳥の気持ちになるのだ。ぴよぴよ。

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