危機一髪
右手薬指にはめた指輪に目をやりながら、思えばこの指輪をはめたあの時から、触れながら回想していると
「やっと呼んでくれた」
「えっ」
「キョロキョロしない、脳に直接はなしかけているの」
「はっ」
「はっ、じゃない黙って聞いて、私はいわば指輪の案内役、もう、私を呼ばずに勝手にいろいろやってるんだから、取り敢えず二人を見ながら、誓約、と念じなさい」
思わず言われた通りにすると、二人の体がっとひかった一瞬ボウっと光った
「これで二人は何があってもあなたを裏切らない、安心して話し合いしなさい」
訳がわからぬまま黙って居ると、二人に問い詰められてだまって居ると解釈したらしく
「すみません、渡り人か否か、そんなこと簡単に言えませんよね」
「そうですよね、余りに驚いて、如何して良いか分からず、すみませんでした」
「とりあえず、如何しよう」
二人は相談を始めた、暫くして
「まずはBランクから始めてもらいます、恐らく実力はSS以上でしょうが」
ギルド長が言う
「Bランクでも前例は何十年も前にあったきりですから、それ以上は取り敢えず無理ですので」
「結構です、十分ですが、本来Fランクからコツコツと積み上げるものなんでしょう、規則に反してまではしないでくださいね」
「規則は大丈夫、こんな実力者が初登録なんてめったにないだけです、只、B以上では無理です」
「Aランクを手玉に取るような人を、Fからなんてその方が無理がありますよ」
そう言って二人とも苦笑いしている
「ところで、その力ほかで使ってないでしょうね」
言われて、はっ、と思い出す、領主の息子ご一行との一件
「実は・・」
領主の息子一行とのあらましを話す
「不味いですね、絶対に仕返しに来ますよ、領主は最悪の性格をしていますから、覚悟した方がいいですよ」
「マジですか、面倒な」
「とにかく貴族の権限を振り回し遣りたい放題ですから、奇麗な女の人は人妻であろうと屋敷に連れ込む、気に入らない者は濡れ衣を着せて犯罪者として始末、上げたらきりがない、その上貴族として気位ばかり高い」
「最低、最悪を絵にかいたような人間じゃないですか、よく皆、だまってますね」
「逆らえるものはいません、最高権力者ですから」
その時ドアがノックされ、受付にいた女性が慌てた様子で入って来た
「ギルド長、領主様の使いが先程ここに入った男を出せと言ってきていますが」
二人が俺の顔を見て
「早速おいでなすった」
「そのようですね」
「どうします、裏に非常口がありますが」
「どうせそっちもみはられているでしょう、追い返しましょう」
「追い返すって、表に五十人ほどの兵を連れて来てますよ」
女性がいかにも恐ろしそうに言う、頭の中の声が再び聞こえる
「恐れることはないが、余り現実離れした方法で撃退せず、全員殴り倒す程度にな」
五十人もの兵を殴り倒すだけで充分現実離れしていると思うのだが
「わかってるよ」
脳内で答える
「ちょっと行ってきます
「大丈夫ですか、俺も手伝いますよ」
「私も」
「一人で大丈夫、お二人まで領主の敵と思わせると、後々面倒ですよ」
部屋を出て階段を降りると、そこに兵二人の間に使いの物らしき男が立っていた
「俺に何か用か」
「貴様、うちの若様に対して無礼を働いたそうだな」
「無礼を働いていたのは馬鹿様一行だろう」
「貴様、なんという・・」
憤怒の形相の男に
「此処じゃあ事務所に迷惑だ、外に出ようぜ」
先に立って外に出る、五十人ほどの兵が整列していた、ギルドの前は結構広いんだ、呑気にそんなことを思いながら出ていくとうしろから
「その男を捕まえろ」
声がすると、整列していた兵たちが二重三重に俺を取り囲んだ、一人に対して大袈裟だが先程の護衛達に、気を付けるように言われているのだろう
「大人しく来るか」
兵達の長らしき男が言う
「嫌だね」
いうと同時に、後ろから殴りかかってきた、その手を取って一本背負い、正面の兵に投げつける、後は当たるを幸い殴り飛ばす、蹴とばす、周りに転がる兵達、立っているのは使いの男だけだ
「さて、どうする」
男に声をかける
「貴様・・」
「さっきからお前、貴様しか言わないが、何が言いたい」
「子、子、こんなことをしてどうなるか分かってるのか、領主様に逆らったら」
「逆らったらどうなる、それより領主に伝えろ、こんかいはぶきはつかわなでおいた、誰も死んではいなかったが、次に向かってきたら一人残らず殺すからな、言っておけ、転がっているお前たちもわかったな、次に俺に向かってきたら、間違いなく殺すからな」
「・・・」
「まだもん食うあるか、早く俺の目の前彼消えねえと、たたっ殺すぞ」
「ひー」
使いの男、倒れていたが起き上がれるものは立ち上がり、助け合いながら全員が去って行った、何事かと見ていたやじ馬たちから一斉に拍手が沸いた、恥ずかしいので慌ててギルドの中に逃げ込む、入り口にギルド長とグレンが立っていた
「すみません、お騒がせしました」
「いえいえ「」
「しかし、凄いですね、少なくも訓練された兵たちを、赤子の手をひねるように」
「いや、たまたまですよ」
「たまたま、あんな事ができますか、まぁいいですから、改めてお話があります」
再び二階の部屋に戻る
「「これで領主と全面戦争突入ですね」
「まぁ、お二人に迷惑かけないように努力します」
「高杉さんにだけなら良いのですが、馬鹿領主、性格が正確だから、八つ当たりして何をしでかすか」
「栄太でいいですよ、そこまでしますかねえ」
「ほぼ、間違いなくやるでしょう」
「俺はどうすれば」
二人は顔を見合わせて黙っていたが
「栄太さんはこの街をどのくらい知ってます?」
「何も知らないと同じ、まだ二日目ですから」
「二日目でこれだけの問題を」
「すみません」
「大丈夫です、いずれは領主とは対決しなければならなかった」
ギルド長が呟くように言う
「次はその姉妹が狙われるのでは」
グレンが言った、聞いた途端体が動いていた
「どこへ」
という声に
「姉妹のところ」
物陰に隠れ転移する、危なかった、まさに姉妹の家に兵たちが入ろうとしていた
「そうはさせないよ」
先頭の男を殴り倒す、十人ほどの兵を叩きのめす
「おーい、居るか二人とも」
「はい」
二人が出て来て倒れている兵を見て後ずさった
「だいじょうぶだ」
二人を連れてギルドに戻る
「危機一髪でしたよ、俺は拠点も決まってないし、二人を暫く預かって貰えませんか」
「良いですよ、此処が一番安全でしょう」
「すみません、お願いします」
二人は小さくなって抱き合い立っている
「そういえば二人の名前をきいてない」
私がシルビー妹がリリーです」
「わかった」




