ロイドの彼女
計画は順調に推移している、シルビーの両親ジルとエリーが、加わったお陰で工場も順調に稼働している、そして、ジルとエリーは研究熱心だ、意外だった嬉しい誤算だ、お陰で俺が一人で考えていた事を、違う角度から見てくれ、改良案をだしてくれる、最近の浮動馬や浮動機バス、トラックは、俺に言わせれば、完璧だ、俺の創造を超えている、造る方はもうジルとエリーに任せておけば心配ない
ただ、造っただけでは価値が生かされない、活用してこそ価値がでるのだ、街の中の試運転は終わり、浮動機バスの小型のもので、路線バスの様なものを運行している、街ではすっかり定着したため、街の外から来た人はすぐに分かってしまう、浮動バスを見て、驚くからだ、街の人はもう馴染んでいるので驚かないのにだ、クロードの街での段階は終わった、次の段階に進む
王都とクロードの街をつなぐ、交通手段、浮動バス、トラックの路線を作る事だ、線路を引くとか、道路を造るわけでは無いのだが、コースを決め、王都まで通行できるように、通過する土地の領主たちに、交通の許可を取り付けなければならない、ウィンとロイドに動いて貰う、勿論、王様は計画に大賛成だ、全面的にバックアップしてくれるそうだ
ところで、ロイドで思い出した、落ち着いたら話すと言った、彼女の件だ、白状させたと言うか、話してくれた
驚いた事にロイドは、元王子様だった、ある国の王子さまだったのだが、実の叔父の反逆で、父母と妹を殺され、自分も殺されそうになったが、家臣に助けられ難を逃れたそうだ、この世界で良くある話ではある、
若いのに大陸中を網羅する、組織の長なんて、凄いと思ったが、叔父の反逆に従わなかった家臣達が、ロイドの元に集まって、作った組織が赤星星団なのだそうだ、王子様の時に決まっていた許嫁が、今もロイドを慕っており、ロイドも満更ではない、要するに相思相愛だが、相手はれっきとした国の、第二王女なのだという、王子ではなく平民になってしまったロイドは、奪われた王座を、叔父から奪還しようと集まった家臣たちに
「父、母、妹の事は死ぬほど悔しい、だが、仇を討てば、今度はこちらが仇になる、そんな繰り返しはもう沢山だ、王族、貴族の世界にはもう戻りたくない」
そう言って、集まった家臣たちを落胆させたそうだ、だが家臣たちはロイドの元を去らなかった、離れず、に今の赤星星団を作り、ロイドを総長の座に据えたのだそうだ、ロイドもその位置に相応しい、人間になろうと、父、母、妹を殺された、無念をエネルギーに変え、血を吐くような修行に耐え抜いた、SS級となって名実ともに総長となった、星団も各自が生きていく為、色々な仕事をしてきたが、今は商会の運営と、大陸に広がる情報網の、情報を売って、安定した組織となった
ロイドはそんな事情から、王女との結婚を躊躇し、そして諦めようとしていた
「それは王女様の覚悟次第だろう」
「いや、彼女に無理をさせる気はない、彼女の為にもならないだろう、俺も経験して初めて分かった、平民との差を、なまじの覚悟じゃ、生きていけない、俺の場合は選んでなったわけでは無いから、必死だった、、だが、辛かった、彼女にこんな思いをさせたくない、元々話は無かった事にすれば、全て丸く収まる」
「本当に良いのか、お前の本音はどうなのだ」
「それは、傍にいてくれたら、とは思うが」
「何で、そう言う大事な事を、もっと早く俺に言わないんだ」
「言える場が無かったろう、だいたい、お前のシルビーに対しての事、見ていて歯がゆかったよ、手を伸ばせば、其処にいるって言うのに、まったく、そんな奴に相談できるか」
「それを言われたら、何も言えない、あの事は悪かったよ、ある意味シルビーとは、ロイドのお陰で踏み切れた、部分はあるからな、愛だ恋だと言う事には疎い事は、俺もわかっている、だけど、相談してほしかったよ、相棒としては」
「そうか、でも、その気持ちは嬉しいが、もう良いんだ、彼女の幸せの方が大事だ」
「待てよ、お前、それはお前の考えであって、本当に彼女にとって幸せなのか、本人に聞いてみたか」
「そんな事、聞けば,違うと言うに決まっているだろう、だが、現実はそんな甘いものじゃない、と言う事は俺が身に染みて知っている」
「何を言って居るんだ、だったら、そんな思いをさせないように、お前が守ってやれよ、俺だって協力は惜しまない」
何故、ロイドの彼女について、俺はこんなにしつこいのか、俺にもわからないが,どこかに、ロイドに対して、自分だけ幸せなのは気が引ける、そんな気持ちがある事は確かだ、ロイドが幸せになる要素は、絶対に捨てたくない、そう思った、徹底してやって駄目ならともかく、一方的に判断して身を引くなど、俺は断じて許せない
「彼女の所に行くぞ」
「何を馬鹿な事を言って居るのだ、そんな簡単に」
途中で言葉を切る
「栄太なら行けるんだったな」
「彼女の部屋、思い浮かべろ」
ロイドの額に触る、一瞬で景色が変わった、暗くて衣装の並んだ部屋にいた
「ここは」
「彼女の衣裳部屋、直接部屋の中は不味いだろう」
「それもそうだ」
小声で話す、念話なら安全なのに、二人とも自覚は無いが、緊張している
耳を澄ます、何故か重苦しい雰囲気が伝わって来る、抑えた声で
「我が国最高の、治癒魔術師を以てしても、どうにもなりません」
「治らないというのか」
「治らない、というより治せないのです、申し訳ありません」
「何か方法は無いのか」
「すべて手を尽くしました、後は神に祈る他はありません」
二人は顔を見合わせる
「どうなっている、彼女の部屋に間違いないか」
周りの服を見回す
「間違いない、見覚えのある服がある」
「と言う事は、彼女が死の病と言う事だぞ」
今度は念話で話している
「そうらしい」
ロイドは青い顔をして俯いた
「心配するな、人が居なくなったら、俺が直してやる」
「そんな事出来るのか」
「大丈夫だ、俺を信じろ、其れよりも、思い切って来た事で、間に合ってよかったな、お前が諦めていたら、彼女は死んでいたぞ、やはりお前と彼女は縁があるのだ」
「そうなのかなぁ、でもこんな時に居合わせるとは、絶対に死なせたくない、頼む」
そう言って俺俺に手を合わせている、どうやら誰も居なくなりそうな、そんな会話が聞こえてくる
「何れにしろ、別室に知識のある者達を集めてあります、参りましょう」
部屋に人の気配が無くなった、そっと扉を開ける、二十畳くらいはある部屋だ、部屋の中央部分のベッドに女性が寝ている、顔色を見て、診断の念をかけてみる
「おい、これは、病気じゃない、毒だ」
栄太はそう言うと、解毒の念、治癒の念をかけていく
「大丈夫か」
「大丈夫だ、心配するな」
暫くすると、顔色も良くなった、苦しそうだった呼吸も、安らかな寝息に変わった
「もう大丈夫だ、安心しろ」
寝かせておきたいが、起こして話さなければ
「ミリア、おきて」
眠っていても奇麗な人だなあ、俺の最初の印象だ、シルビーも負けてないけど、なんて考えながら、黙ってみていると、目を開けた
「えっ、ロイド様、私、夢を見ているのかしら」
そう言って起き上がろうとして、がくっとまた横になってしまった
「横になってなさい、まだ完全じゃないのだから」
そう言って顔を覗き込むようにして
「ひどい目にあったね」
優しく話しかけている
「えっ、私、食事している時に、具合悪くなって」
「うん、毒で死にかけたんだよ、それを俺の相棒が直してくれたんだ」
「えっ」
始めて俺の存在に気が付いた、近寄って
「栄太です、よろしく」
王女様に対してワザと軽くあいさつした
「ミリアです「、治していただいたそうで、ありがとうございます」
なんか可愛い、ロイドが早口になって
「それで、ミリア、理由は後でまた説明するけど、俺達は無断でここにいるんだ、人が来ると騒ぎになって不味いから消えるけど、後でゆっくり話したい」
「時間が無い、ロイド、これを嵌めて貰え」
指輪を渡す
「これを嵌めると念話が出来る」
「わかった」
すぐに理解したロイドが
「ミリアこれを嵌めてみて」
嵌めたところで、ミリアの顔を見ると、驚いたようにろいどの顔ろいどのを見ている
「頭の中にロイド様の声が」
「そうだ、これで、指輪に触りながら、呼んでくれれば、何時でも連絡する事が出来る、後で連絡するから」
足音が近づいて来た、誰か来る、急いで衣装室に入る、誰かが入って来た、そして驚愕の声が聞こえる
「ミリアが、ミリアが起きてる」
一瞬静寂になった
「ミリア、ああ、ミリア、わあーミリア」
母親だろう女性の泣き声、父親王様だろう、嗚咽する声が聞こえる、そんな騒ぎを聞きながら、一旦城の外に移動する
「毒を盛られた、と言う事は、犯人は分かっているのかな」
「どうなんだろう」
「どこかで食事でもするか」
そう言って、歩き出そうとしたとき、ロイドが片手をあげて、待て仕草をする
「えっ、なに」
言った後、黙ったまま何かに集中している、そして
「すぐ来てくれって言ってるけど」
俺に言う、ミリアからだろう
「別に良いけど」
「じゃあ、城門の所に」
今居るところは、城門から少し離れた、道沿いの林の中だ
「行こう」
城門に着くと、侍女に支えられてミリアが立っていた、騎士たちが傍で、警護している、近寄って行くと騎士たちが、こちらを注視している
「ミリア、大丈夫か、こんな所迄」
「はい、もう大丈夫です、おかげさまで、嘘みたいによくなりました、ちょっと足がふらつきますが、もう大丈夫です」
「良かったな、栄太本当にありがとう」
「うん、良かったな」
そんな事を言って居ると
「あのう、栄太様、お願いがあるのですが」
遠慮がちに言い出した
「何でしょう」
「実は、私より軽いのですが、姉上も私と同じく、寝込んでおりまして」
「分かりました、案内してください」
ほっとした表情で歩き出したミリアは、まだ、歩き方が心許無い
「ミリアさん、ちょっと止まって」
脚だけでなく体全体に念を送る、一瞬体をピクリとさせて
「え、嘘、体が、体が軽くなった」
突然、ぴょんぴょんと飛び上がっている、次女や騎士たちが
「おおおう」
感嘆の声を上げる、念話でロイドが
【栄太、やりすぎ】
【彼女が元気になって、文句を言うのか】
【ありがたいが、良いのか】
出来るだけ、俺は力を人に知られないようにしている、だから心配なのだろう
【ロイドの彼女だからだ、誰にでもってわけじゃない、心配するな】
【悪いな、ありがとう】
ロイドにウィンクして、
「行こうか」
ミリアが先に立って元気に歩き出す
「信じられない事ばかり、姉上もこれで助かるのだわ、どんなお礼がいいかしら」
ロイドに話しかけている
「さあ、栄太は見返りを求めて、なんてことはしないよ、俺の彼女だから特別だって」
「あら、彼女にして頂けるのかしら、私はもう駄目なのかと」
「あっ、それは、そのう、栄太に怒られて、それで」
「それで、何でしょうか」
ざまあみろ、人には偉そうなことを言って、自分はどうよ、ニヤニヤしながら付いて行く
「栄太様、こちらに姉が」
そう言ってドアを開ける、ミリアに続いて部屋に入る、国王夫妻だろう、目が合うと黙って頭を下げて来た
「ご挨拶は後にして、見させてください」
確かに、ミリアほどではないが、完全に毒に侵されている、ミリアの場合と違って、何人もの人目があるので、魔法を使っている振りをして、口の中で詠唱しているように、発音の分からない言葉を、適当に呟きながら、念を繰る、顔に血の気がさし、そして、ゆっくりと目を開けた
「父上、母上、ミリア、えっ、ミリア、貴方私より先に倒れて、大変だった、もう大丈夫なの」
「ミリアの心配より、ジュリア、お前はどうなんです、具合は」
「はい、嘘みたいに何んともありません」
「おおお~」
聞いていた一同の感嘆の声だ
国王夫妻が栄太の傍にやって来た
「栄太殿とおっしゃるか」
「はい、栄太と申します、よろしくお願い申し上げます」
「こちらこそ、よろしくお願いしたい、娘二人の命を救ってくれて、ありがとうございます、ロイド殿の友人と聞いておりますが、大魔術師でも叶わぬ事を、さらりとやってしまわれる、今まで名前を聞かなかったのが、不思議でならない」
「何分にも、目立つことが大嫌いなので」
「それにしても、そのちから力そのちから隠せるものではありませんぞ」
ロイドが
「ここで起きた事は特別です、内密にお願いします、私の頼みで特別に来てもらったのですから」
「分かりました、決して他言はいたしません」
お読みいただきありがとうございました




