村に結界
これも何かの縁なのだろう、グレンとゴルド二人と一緒に、初めて森林に入り冒険することになったkロードの街の門を出て、俺が初めてこの異世界に来た時の草原を抜ける、あの時は何も分からず歩いたが、こうして昼間見ると草原は広い、左右は地平線が見える、正面は遠くに山脈が霞んで見える、その手前に鬱蒼とした森が広がっている、草原には名も知らない草花が、一面に広がっている、動物の影はない、空を見たこともない鳥が飛んでいる
「ドラゴンなんているのか、
「いるぞ、この辺にはいないが、地竜、翼竜、水龍、たまに翼竜が森のあたりを、飛んでいるのを見たという程度だ」
グレンが教えてくれた、やはり異世界なんだなぁ、知識としては頭の中に送り込まれているが、それらは実感が伴わない
「このままいくと、今日は野宿になるな」
「えっ、そんな、用意してないぞ」
念ずれば大概の事は間に合う筈だが、二人がいるところでは控えた方がいいだろう
「大丈夫だ、俺が持ってる、こんな時のために、用意してあるぜ、マジックバックの中に」
グレンが言う
「さすがグレン、悪いな、世話になる」
「初心者の面倒見るのも、俺たちベテランの仕事さ」
「すまない
軽く考えて出て来た事を後悔する
「強いだけで冒険者はやってられないぞ、色々な知識と体験が物を言う仕事だからな」
ゴルドに諭されてしまった
気配察知と周りを俯瞰した景色を、脳内に浮かべ会着いていると、三百メートルほど先に、灰色狼の群れがいるのが分かる十数頭
「灰色狼が前方にいるぞ」
「えっお前分かるのか」
「三百メートルくらい先だ」
左右は草が一面に広がっているが、今あるいている道は、馬車がすれ違えるよう、整備したのだろう、五メートルくらいの幅で、森まで一直線に伸びている、武器を出し用心時ながら進む
「来るぞ」
言うと同時に飛び出してきた、周りを囲まれた、背中合わせに三人が構えたところで結界を張る
「ギャウー」
一斉に飛び掛かってきたが、結界に当たって跳ね返る
「おうっ、なにい」
「結界を張ったんだよ」
「おまえ、何でもありだな」
「向こうからは入れないが、こっちからは攻撃できるぜ」
「そんな、都合よすぎるだろう」
「まぁ、便利だね」
そう言うと、持っていた件で近くの狼の眉間を刺す
「ギャン」
一声挙げて倒れ動かなくなる、グレンもゴルドも同じように近くの狼の眉間を刺す、さすが百戦錬磨の二人、見事に倒した
「眉間だと皮に傷つけず高くふき取って貰えるな」
「そうだけど、狡くない?遊びのようだぜ」
数分で全滅した、狼たちも馬鹿なのか最後の一匹まで、逃げようとせず襲ってきた
「普通不利だと思ったら野生の本能で逃げるよね」
「それが獣と魔物のちがいだ、こいつらは魔物だから襲う事しか頭にないんだよ、獣だったら最初の三匹やられたくらいで、危険を感じて逃げちゃってるよ」
「そうなんだ」
「さて、十六頭、解体が大変だぞ」
「このまま持って行って、ギルドに頼みましょうよ」
「この数をどうやって運ぶんだ」
目で収納物をとらえ念ずるとふっと狼たちの死体が消えた
「もう何も言わん、いこうぜ、暗くなる前に手前の村まで行けば、広場で野宿させてもらえる」
グレンがやけになったような言い方をして歩き出す、ゴルドと二人後を追いながら
「名に怒ってるんだ」
「怒っちゃいないが、栄太の力は理不尽すぎる、分かっていても腹が立ってくるんだよ」
「うん、分かる分かる」
ゴルドが差も納得という風にうなずいている
「楽でいいけどな、お前と一緒にいると、自分がダメになりそうで怖い」
「分かる分かる」
「お前、其れしか言えんのか」
「心底同感だから」
ゴルドの言い方に噴出してしまう、小さな村が見えてきた
「スラムの住人だったが、まだ気力のある人たちが、ここで細々と狩や農業で暮らしているんだ、魔物の危険にさらされながらな」
「領主へのささやかな抵抗さ、領主にとっては痛くも痒くもないけどな」
それでも村の入り口に門番らしき人がいる
「すみません、今夜広場で休ませてもらいたいんですが」
「ああ、冒険者なら大歓迎、村長には俺から言っておくよ」
「お願いします、それじゃあ」
村の中に入る
「魔物の危険が冒険者がいるだけで薄まるって事だよ」
「そんなに危険なんだ「」
「見てわかるだろう,塀とは名ばかりの柵だけでないに等しい」
それでも三十軒以上の家が粗末な柵の内側に立っている
「ちょっと、村長の所に言って来る」
「何だ、俺も行こうか」
「いいよ、ちょっと聞きたいことがあるだけだから」
村長の家は、一番大きな家だろうと見当をつけ、戸を叩く、中から老人が顔を出した
「なにようじゃ」
そう言って俺の顔を見ると
「広場に泊まる冒険者か、ありがとう、少し気が休まる」
「この村の住民は何人ですか」
「七十二名じゃが」
栄太は広場に戻る
グレンとゴルドに
「小石を百戸と握り拳二個分くらいの石十個集めたいんだが、手伝ってくれ」
「良いけど、何をするんだ」
「この村を安全にするんだよ、終わればわかるから、頼む」
三人で一時間ほどで集まった、種類別に二か所に置く、そして一か所ずつ念入りに念を送る
「出来た」
村長を呼んでくる
「この大きい方の石は、結界石です、そしてその小石を持っているものしか、結界内に入れません、結界石は村の周りに配置してください、小石は村人に配ってください、余分にあるので、村が認めた人に持たせて、出入りを許可してください」
「はぁ、なんですと」
「兎に角結界石を村の周りに隠して配置してください」
村長が村人を何名か連れて来て、太の説明通り配置した、村長たちと村の門の所に移動、門の両側に結界石が、隠してある
「この小石を持って門の外に出てください、十歩ほど歩いたら止まってください」
村長は十歩歩いて止まった
「そこに小石を置いて、こちらに戻ってください」
村長は不思議そうに戻ってくるが、何かに阻まれて門の中に入ってこれない
「どうなってるんじゃ、村に入れない」
「それでは、先程の小石を持って入ってきてください」
小石を持った村長は、何事もなく入って来た
「凄い、凄い仕組みだ、村にあるだけの金を払う、この仕組みを置いて行ってくれないか、足りない分はこれから何年かかっても払うから」
「いえ、今夜、広場で休ませてもらうだけで、お金はいりません」
「こんな、物凄い仕組みをタダで、何か目論見でもあるのか、信じられん」
「何もないですよ、ただ、領主にいじめられている人がいたら、住まわせてやってください、結界石が足りなくなったら増やしますから」
スラムの人たちが気に成っていたのだが、ここに来れば少しはましな生活が出いるだろう
「村を大きくするのは、わしらの夢じゃ、だが魔物に怯えて暮らすのに、耐えられず出ていくものばかりだったが、これからはその心配がなくなる、望むものは何人でも受け入れるよ、約束する、ありがとう、ありがとう、これで、安心して生きていける、生活できる」
村長は泣いている、村人も泣いている、つられてグレンもゴルドも泣いている、良い奴らだ
村長が村人に小石を配っている
「なくすんじゃないぞ、無くしたら村に入れなくなる、命の次に大切にするんじゃ」
村長、大げさすぎる、俺の力は誰がくれたか未だに分からない、でも、こういう事に使えば起こりはしないだろう、結界石と小石を追加で村長に渡しておいた
その夜、村はお祭りになった、なけなしの酒を持ち寄り、俺たちが提供した狼の肉で祝った