世界に一つだけの馬
イボ、イボイボ、カラオケ、ウガ!
「最近鼻くそがうまくとれんよサダコレくん。」
おばあちゃんが僕にそう囁いた。
「きっと季節のせいなんじゃないかなぁ?」
僕があきれ顔でそう返す。
「やっぱり冬になると質量保存の法則がネックになってくるのかなぁ、サダコレくん?」
「…は?」
おばあちゃんは僕に何が言いたいんだ?僕は必死に考えた。だがいくら考えてもおばあちゃんの顔にあるイボが気になる。気になるんだよ。
僕はおばあちゃんの顔にあるイボのことを『世界に一つだけの花』と呼んでいる。
おばあちゃんは、
「その呼び方はやめてよサダコレくん〜!」と言うが、まんざらでもなさそうだ。
おばあちゃんはテンションが上がると懸垂、又は腕立て伏せを始めるクセがある。
そのかいもあってかワキガだ。それもかなりの!
そのワキガの封印を抑えているのが、そのイボってわけさ!
へへっ!
なかなか物知りでしょ?
誉めていただきたい!やめてくれ〜
情緒不安定に乾杯だ!
「誰ですかっ!?サダコレくんのおばあちゃんに噛まれたら、ゾンビになるなんて事を言う子は!先生、そんな言葉許しませんよっ!」
先生は僕をかばってくれたんだ。ありがとう、先生。先生はワキガです。 僕はあの日の先生の言葉を忘れない。
あれからかなりの月日がたち、僕もすっかり二児の父親だ。
今もおばあちゃんは健在で、いつも薄暗い井戸の中から僕を見てくれている。
こわいよ
ひとみ閉じれば〜