風の魔石
「待ってくださいよ~」
涙目のコトハに流石に悪い冗談だったと告げる俺の表情はあまり笑ってはいない。
ないのか、勇者の力とか宿ってないのかー、そういうのないと最悪の場合災いを突き止められてもそれを止めることができないのではないだろうか?ていうかこの一面の森の世界に災いって雷かなにかじゃないのだろうか?そんなことを堂々巡りで全然考え事はまとまらないしコトハの話もまったくもって聞いてなかった。
「~~...、ねえ、ちゃんと聞いてますか?」
俺のうつむいた顔を覗き込むんでいるコトハの声でようやく意識を外に向けた俺は何も聞いてなかったことを告げてもう一度説明をしてくれるように頼んだのだった。あぐらを組んで座っていたため、小さな背丈のコトハでも十分俺の顔に接近できたようだった。
「もう、しょうがないですねえ。」
なんだか偉そうにことははもう一度説明してるようだった。
「えっとね、だからあなたは魔力も多いし、この風の魔石を使えば風の魔法を扱えるようになるよ!」
コトハの説明に俺は驚いた。魔力を感じれないけど魔法が使えるらしい。コトハは小さな子供がガラクタの宝物を渡すみたいに小石くらいの風の魔石両手で差し出してきてそれを受け取った俺はニヤつきを抑えられずにはいられなかった。練習、練習を少しするくらいならいいよね?
「なあ、使ってみてもいいか?」
俺の問いかけにコトハはうなずきながら答える。
「それお母さんの魔石だから大事に使ってね!」
俺は思った、魔法の練習は今度でいいかなと。