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砂鯨が月に昇る夜に  作者: 小葉 紀佐人
砂鯨が月に昇る夜に
90/93

28-3


ドンっと強い衝撃と共に加速したタンク


砂鯨のヘソから血が噴き出し


『赤い寄生虫』の本体が全て抜け出た


ぐったりとしていたカザはその衝撃でハッと気がつき、狩猟棍を回して触手を引き千切る


落ちていく『赤い寄生虫』とカザ


しかし『赤い寄生虫』は触手を伸ばして砂鯨のヘソに逃げ込もうとする


カザは身体を捻り、狩猟棍を回転させた


上段 砂の型 『大砂嵐』


竜巻のように回転したカザは、伸ばした触手を引き千切り、『赤い寄生虫』の胴体に突進する


が、ひらりとかわされてしまう


しかしカザはすぐに大砂嵐を解くと、振り返り様に


上段 砂の型 磊突らいず


バルウの街を出る時、ナザルが最後に放った空気の槍


鋭い空気の槍は『赤い寄生虫』の眉間の外骨格を剥がす


そして


カザは狩猟棍を、ガシャンと音を立てて狩猟銃へと変え


その銃口を、眉間へと構える


「あばよ」


甲高いが少し太い射撃音


放たれた銃弾は


『赤い寄生虫』の眉間を貫通した


砂鯨に巻き付いていた腐者の触手は、液体に戻って砂漠に消え


『赤い寄生虫』の赤く光る輪郭が、貫かれた場所から光の粒子となって消えていく


落ちていくカザ


『赤い寄生虫』は地面に落ちる前に全て消え去った



下ではバサロとシグが布を広げて構えていた


「…なぁ、これ大丈夫か!?」


その言葉にバサロは少し困った顔をして笑う


「いやいやいや、もう来るよ!?ほらっ!ねぇ!!」


そう言いながらテコテコと落ちて来るカザの動きを見ながら移動するシグとバサロ


「ちょっと!もっとそっちだそっち!!あっ!!違う!!もっとこっちだった!!」


ボスンッと音を立てて


砂漠に落ちたカザ


シグとバサロの布から3メートルは離れた場所だった


慌てて駆け寄る2人


「…お前らさぁ、見てたけど。…俺、見てたけど」


「…悪りぃ。ちょっとズレちゃった」


カザはいつかどこかで見たようなバンザイする格好で砂に胸まで埋まっている


「どこがちょっとだよ!?早く抜けよぉっ!!」


「わかった、わかった」とシグとバサロが腕を引っ張って抜こうとするが、バサロがクスクス笑うのでシグも笑ってしまい上手く抜けない


「てめぇら」とカザが文句を言おうとした所で何か聞こえた


「おーい!!」


見たことのないサンドバギーに乗ったティトとアズーが向かって来て、カザの埋まった目の前で止まる


「それどうしたんだよ?」


シグはサンドバギーから降りるティトに聞く


「あ、これ?シャングリラのやつ。それより『あいつ』は?」


そう言って見上げるティト


「カザが倒したよ」


「本当に!?」


それを聞いたティトは、サンドバギーの後部座席からゾイを抱えて降りてくるガラムに駆け寄る


顔から首にかけて黒いシミがさっきよりも広がり、そして、まだジワジワとゆっくり広がり続けていた


ティトは


泣いていた


奇跡を信じた


でも


起こらなかった



砂からようやく抜け出せたカザもシグもバサロも、ゾイが腐者にやられた事を知り、泣き続けるティトに声をかけることすら出来なかった


触手から解放された砂鯨


辛そうだが、カザ達に感謝を告げるようにひとつ鳴いて、空を泳ぐ様に仲間たちの元へと上昇していく


全員が空を見上げ


星空と立ち昇る青い光の海を


輪を描くように回遊しながら上昇する砂鯨達


そして


青い光の粒子がより一層立ち昇り


月まで続く青い道を作り出す


その光に呼応するように


ゾイのお腹の光が溢れ出す


「お…おいっ!これっ!!」


ゾイを抱いていたガラムの声に、みんなが集まりゾイを見る


広がり続けていた黒いシミが


少しずつ小さくなり始め


その色は薄くなっていく


「嘘!?嘘でしょ!?」


ティトはゾイの手を握りしめ、そして空を見上げる


砂鯨達が一斉に鳴き


青い光の道を泳ぎ、進み出す



神々しく雄大な旅立ちを


カザ達は


その後ろ姿が見えなくなるまで


眺め続けていた



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