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砂鯨が月に昇る夜に  作者: 小葉 紀佐人
地を這う者の生態
9/93

3-3


「ナザルさんっ!前方からサンドシップとサンドバギーがたくさん向かって来ます!!」


と砂列車内に取り付けられた連絡用スピーカーから聞こえ、少し2人はホッとした顔になる

その隙を見計らった様に4つ目の車両の真横に現れたサンドワームは少し距離を取る


それにナザルが気づいた時にはもう遅く


「バサロっ!!何かに掴まれっ!!」


さっと屈んで後部の扉の取っ手を掴むナザル、バサロも寄りかかった壁の中央部にある手すりを掴んだ瞬間、サンドワームは首を振って4つ目の車両に体当たりしてきた


先頭の車両は真っ直ぐ走れているが、そこから後ろの車両は横に曲がり、砂の上を滑るように絶妙なバランスでドリフトしている


振り子のように何とかもとの状態に戻る事が出来たが、まだバランスが取れていない状態でサンドワームが後ろから迫る




街を出てさほど時間も経っていなかったが、もう少しで砂列車と鉢合わせそうな空気がしていた


サンドシップがカザのも合わせて4台、サンドバギーが6台で救援に向かっている

シグはようやく目を覚ましたアズーと一緒に自作した装甲サンドバギー『タンク』に乗っている


「何で起こしてくれなかったんですか!?」


「散々起こしたよ!」


「あっ、見えた!!」


とサンドシップで並走するカザが指を指す


地平線の先の小さな点から扇状に砂煙が舞い上がり、この距離でもサンドワームがのたまわっているのが分かる


「オメェら分かってんなっ!!バルウの漢気見せてやるぞ!!」


そう年配のガンザが合図すると、救援部隊の全員が「おおぉぉぉぉ!!」と雄叫びを上げ、武器を構える


狩猟銃を持つ者は少なく、多くは砂鮫や怪鳥デモデモを撃退する時に使うバズーカと呼ばれる筒型の炸裂弾を放てる武器を肩に担ぐ


ガンザが片手で合図を送ると救援部隊は左右に分かれ、砂列車を真ん中に通す形になる


カザは両手を離し、背中の狩猟銃を手元に持つとコックレバーを引き構える

シグもタンクの上部から上半身を出し、肩にバズーカを担いで構える


砂列車の先頭を通過し


サンドワームが一番後ろの車両に喰らい付こうとした瞬間


「撃てぇ!!」


ガンザの合図と共にサンドワームへ向かっての一斉射撃


炸裂弾の爆発でサンドワームの身体は仰け反り怯むが、分厚い皮膚に傷1つつける事すら出来ない。カザの撃った弾などサンドワームの大きな歯にチュンっとはじかれてしまう。すぐに態勢を立て直して砂列車を追いかけはじめる


救援部隊は通り過ぎたのちすぐにUターンしてサンドワームを追いかける


「くそっ!!生半可な攻撃じゃあビクともしねぇぞ!!」


「とにかくやるしかねぇ!!」


とサンドシップに2人乗りした2台とサンドバギー2台が左右に取り付き攻撃する


着弾すると派手に爆発するものの、やはりダメージは無く、サンドワームは突然地面に潜ったかと思うと並走していたサンドバギーを真下から突き上げ吹き飛ばしてしまう


もう片方のサンドバギーにはミゲルが乗っていて、それとサンドシップは何とか逃げようと砂列車の方まで前進していく


「ナザルさんっ!!無事ですか!?」


とミゲルは車両に見えた人影に話しかける


「おお!!こっちは大丈夫だ!!」と返事をした直後だった


サンドワームは首を持ち上げミゲル達の方へ頭を向けた

花開くように大きな牙を広げると、口の中から太い半透明な触手が無数に出る

何だアレ気持ち悪いとミゲルが顔をしかめていると、その先端から真っ白な液体を吐き出しミゲル達に浴びせる


「うぁぁぁ!!」


絶叫と共にサンドシップは転倒し、サンドバギーも速度を落として後ろへ消えていった


「大丈夫か!?」とすぐに駆け寄るガンザ


「ええ、だけどこの気持ち悪いの何でしょう??」と全身にかぶった白くネバネバする液体を手で触るミゲル


「…もしかしてそれって、サンドワームの精液じゃ……」


ガンザのサンドバギーに乗っていた若い男がそう言うと、ミゲル達はサンドバギーから飛び降りて盛大に嘔吐した


「おぇぇぇ!!」


「口に入っちまったよぉ!!」


などと叫びながらゲロゲロと吐く


その横をカザ、シグ、アズーが通り過ぎる


「何だよあれ気持ちわりぃ」


「アレにはくらいたくないですね」


「シグっ!!アズーっ!!アレをやろう!!」


と並走するカザが叫ぶ


「…アレかぁ、よしっ!やってみんぞ!!」


とシグは言うが


「アレは走りながらやった事無いじゃないですか!ダメです壊れます!」


とアズー


「やってみねぇとわからねぇ!それにあの砂列車にはバサロも乗ってんだぞ!!」


シグに言われて少し考えるアズー


「…分かりました。ただそこから先はカザ1人ですよ!」


「分かってる!!」


そう返事をするとカザはサンドシップをタンクの後ろに近づける

アズーが操縦席にあるボタンを押すと、後ろのサンドシップとタンクが連結する

カザはサンドシップを乗り越え、タンクに登る

シグはその間タンクの上部に付いていたボタンを押し、後ろの座席を持ち上げ、それは屋根の上まで達する

そして屋根に付いていたレールに座席をはめるとタンクの後ろの方へ移動させ、そこに座るカザ

シグは側面に付いた2つのハンドルを回して座席とレールの向きと角度を変え「左40度!傾き30度!」とアズーに伝える


「何度も練習したんだっ!!絶対に落とさない!!」


不安を振り払うように叫ぶアズー


「アズー!!頼む!!」


と叫ぶカザ


「行っけぇぇぇ!!」


と操縦席のボタンをアズーが押す

座っていた座席が勢いよく飛び出し鉄が擦れて火花が散るとカザは空中へと放り出された


その先は砂列車


風を切りながら飛んで行くカザは砂列車の屋根に


ぶつかり


跳ね上がってしまった身体は砂漠へと落ちていく




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