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砂鯨が月に昇る夜に  作者: 小葉 紀佐人
消える希望
76/93

24-2


ルナバーストの線は細くなっていき小さな光を残して消えた


機関室から外の状況を見ていたルーペは糸の切れた人形のように崩れて跪き、慌ててレンチが肩を支える


何が起こったのか頭の整理がつかないアマンダの横で、レンチはモニターを見上げる


電磁フィールドを解いた大黒海が、まるで嘲笑うように口を開けて蒸気を吐く姿に「くそったれがっ!!」と行き場の無い怒りを口に出した


司令室のゲイルも同じだった、目の前の机に拳を打ち付ける


「見ただけで真似たのか!?それだけの知能がテメェにあるのか!?ふざけてんじゃねぇっ!!」


最後の一撃を放ち


それは届かなかった


イオは直ぐに頭を切り替え、シャングリラが飛べるか重力制御室に問い合わせるが、どう頑張っても飛べないと伝えられ考え込んでしまう


そして皆一様にその場から動けずに思考が停止していた時だった


シャングリラが大きく揺れて前方を見る


ゲイルが時間稼ぎと出していた鉄の防壁から、身を乗り出すように、大黒海がそこにいた


「うわぁぁぁ!!」


座席から転げ落ちたピクルは部屋の中央まで下がり震える


「…また、…また失っちまうのか俺は」


防壁にへばり付き、よじ登ろうとしてくる大黒海を見ながらゲイルは椅子に座り、ただその光景を眺めていた


イオはゲイルに駆け寄り「提督!!退避しましょう!!…提督!!」と必死に声をかける



その時


大黒海の動きが止まり


ゆっくりと


後ろを振り返っていく


「…何だ?」


ゲイルもゆっくりと立ち上がり


大黒海の


後ろの砂漠を凝視する


「て、提督!!大黒海の後方!西の砂漠より何かが高速でこちらに接近して来ます!!…え、ちょっと待って…何あれ!?」


オペレーターは直ぐ様暗視機能の付いた望遠レンズでそれをモニターに映し出す


「…だ、誰だ?…それよりあれは…」


砂漠の闇の中、サンドシップとサンドバギーが真っ直ぐにこちらに向かっているのは分かるが、そのすぐ後ろに、光り輝く巨大な何かが砂を撒き上げながら付いてきている


「提督!!砂鯨です!!砂鯨の大群があの2つの車両を追いかけています!!」


それを聞いたゲイルは大きな窓に駆け寄り空に何かを探す


「…あった!!気づかなかった!!今日は満月か!!…だが一体どうしてあれを追って…」


そう話しているうちに大黒海は完全に後ろを振り返り、大きく裂けた口を開く


口の中に集まるエネルギーは、巨大な光の玉を作り出し


それを放った


サンドシップとサンドバギーは素早く左右に開いてそれを避けるが、砂鯨たちは避けずに突き進む


光の玉が砂鯨たちに触れる


瞬間


それは一瞬で夜空へと弾かれた


「ええぇぇぇ!?」


サンドバギーに乗っていたシグが身を乗り出して夜空で爆発する光の玉を見上げて叫ぶ


「アレ弾いちゃったよ!!」


席に戻って「砂鯨やべぇ砂鯨やべぇ」と振り返るのさえ怖くなったシグは呟いた


離れていたジャリハートはまたタンクと並走する


「大丈夫!?」


カザの後ろにくっついて座るティトがタンクのみんなに聞くと、運転席に座るバサロが手を上げて応える


シャングリラのモニターにもそれは映し出されていた


「ティト!?ティトっ!!何であんなとこにティトがいる!?」


ゲイルは分かるはずもないピクルに振り返り聞くがピクルは首を振って分からないと応えた


「…どうゆう事だよ…」


ゲイルはティトの映ったモニターに手を触れて無事なことに安堵するが、何故砂鯨に追われているのか分からず、不安は消えなかった


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