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砂鯨が月に昇る夜に  作者: 小葉 紀佐人
ルナバースト
73/93

23-2


大黒海を貫いたルナバースト


貫かれた場所から腐者の黒い液体は粒子となって分解され、消えていく


ルナバーストの光は徐々に弱まり、細い線となって消える


踠き苦しみながら


その黒く禍々しい体躯は消滅し、砂漠の砂の上には腐者に無理矢理修復された傷が生々しく残る血だらけの砂鯨が横たわっていた


シャングリラから上がる歓声


帰還しようとしていたインパルスのアッシュも空で旋回しながら、腕を振り上げて雄叫びを上げる


歓喜の声で司令室は満たされ


ルーペは興奮してピクルの頭をペチペチ叩く


そんな中1人だけモニターから目を離さず


睨み続ける提督のゲイル


「イオ!!磁場を確認しろ!!」


司令室に響き渡るゲイルの声に全員が沈黙し、イオはオペレーターと確認を急ぐ


モニターにはまだ息のある瀕死の砂鯨の尾ひれが力無くパタパタと動いているのが見えていた


「…え、提督!!これを見て下さい!!」


ゲイルは新しく表示されたシャングリラ周辺の磁場観測機の映像を見る


「…これは」


瀕死の砂鯨の場所から、大黒海だった時と変わらない強力な磁場異常が表示されている


それどころか、砂漠全体からも謎の磁場異常が観測され、砂鯨から発せられる磁場異常が瞬く間に上昇していく


「提督!…あれ」


ルーペが指差すモニター


瀕死の砂鯨の真下から泉の様に湧き上がる大量の黒い液体


それにあらがうようにバタバタと踠く砂鯨は、あっという間に飲み込まれて見えなくなる


「…ど、どうゆう事だよ」


ルーペに叩かれたせいで頭が赤くなってしまったピクルの目に映ったモニターに、先程よりも大きく、太くなった触手をいくつも砂に突き立てていく大黒海だった


まるで巨大な蜘蛛の様に、触手を地面に突き立て向かって来る


声を失い沈黙した司令室


「…ル、ルナバーストを再充填しろ!!急げ!!」


ゲイルの声にハッとしたオペレーターは、

機器を操作して充填を開始しようとするが、主砲の整備も担当しているレンチから艦内通信が入る


「提督!!冷却装置が火ぃ吹いちまってコアの交換に人手が足りねぇ!!誰か寄越してくれっ!!」


「泣き言言ってんじゃないよ!!アタシが今行く!!」


そう言って司令室を駆け出していくアマンダ


「ちょちょちょっ!!どこ行くんだよ!?」


アマンダを追ってルーペも出て行ってしまい、まだ照準に不安があるピクルは自動で閉まっていく扉を、口を開けて見ていた


「イオ、大黒海までの距離は?」


「もう1.5キロを切りました…消滅した筈の腐者が、一体どこから…」


「分からない事は今いい。迫撃砲をありったけ撃て。少しでも時間を稼ぐ」


「わ、分かりました!」


イオは艦内通信で連絡を取ると、シャングリラのそれぞれの甲板に迫撃砲を押し出す男達が現れる


「ったくこんな重いもんよく作る気になったよ古代人はっ!!」


「いいから運べ!!」


所定の位置まで迫撃砲を運ぶと甲板と砲台をアンカーで固定した


オペレーターからの無線でそれぞれの方向と角度が支持され、それにハンドルを回して合わせる


「なぁ、弾ってこの向きであってんだよな?」


「そうだよ良いから突っ込め!!」


そう言われた男は弾を迫撃砲の筒に入れてすぐさま屈む


シュポンっ!!とゆう音と共に迫撃砲から放たれた弾は、放物線を描くように飛んでいき、大黒海に直撃すると同時に爆発した


ほかの迫撃砲からも次々に放たれた弾は、大黒海にダメージを与えるが、瞬く間に再生して進んで来る


「スピードはどうだ?」


「…少しですが、抑えられているみたいです」


「そうか…急げ、レンチ、アマンダ」


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