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砂鯨が月に昇る夜に  作者: 小葉 紀佐人
古代兵器
69/93

22-1



冗談抜きに太ももからの出血が酷くなったカザ、一旦ジャリハートを止めて今ティトが包帯を巻いてくれている


「上手いね」


「まぁね、怪我して帰って来るエアリード乗りはいっぱいいるから…それよりホントに良いの?」


「何が?」


「シャングリラに行くんでしょ?ってゆうか何で砂鯨に追われてたの?」


「それは…」


カザは砂鯨とゾイの経緯を話した


「シグ達のタンクにガラムも乗ってたから、多分あのままシャングリラに向かってくれてるんだと思う」


「でも、大黒海と鉢合わせてどうするの?いくら腐者を食べるからって」


ティトが包帯を巻き終わったのでカザは立ち上がり脚の感触を確かめる


「分かってる。でもきっと無駄じゃない。そう信じてるからみんな助けてくれたんだと思う」


「そっか…そうだよね!なら遠慮無く私との約束、守ってよね!!」


ティトも立ち上がり、白い歯を見せて笑った


「任せろ」


つられてカザも笑う


カザとティトは水分を取った後、ジャリハートに跨りエンジンをかけようとした時だった


「ねぇ待って…何あれ」


ティトは南の方角に気配を感じ、双眼鏡で確認してみる


「…黒い…川?」


砂漠の上を黒い液体が東の方へと細く流れていくのが見える


「あれ…腐者なの!?」


カザも自分の望遠鏡で見ると、まるで意思を持っているかのように流れていくのが見え、それも一つ二つの話ではない


「…嫌な予感がする…急ごう!!」


そう言ってエンジンをかけてカザはジャリハートと自分のベルトをカラビナで繋げ、自分のベルトにもう一つカラビナとベルトを着けてティトに渡す


「何これ?」


「普通に走ったんじゃ間に合わないから、リンクシステムで加速して行こうと思って」


「え?あれって始めて会った時に壊れちゃったやつでしょ!?…大丈夫なの?」


まるで北の地方に生息するアシガルコヨーテのような目になるティト


「これは改良型で、多分大丈夫。…試してないけど」


「え!?ちょっとマジ無理なんですけど!!」


「でもそれしか方法が…」


「わ、分かったわよ!!つければいーんでしょ!?つければ!!」


納得はしてないが腹をくくったティトはカザから乱暴にカラビナを奪って自分のベルトに繋げた


ジャリハートは走り出し、スピードが乗ってきた所で


「ティト!!行くよ!?」


声をかけられカザの胴体にしがみつくティト


それを合図に、カザはリンクシステムのレバーを引いた


軽い衝撃と共にどんどん加速していくジャリハート、前よりも安定した加速にカザは何とか操縦する事が出来た


ティトも何とか持ち堪えられると少し安心したが、話が出来るほどの余裕は無く、振り落とされないようにカザにしっかりとしがみついた





街全体が


闇を照らすように燃えていた


揺らめく炎の中、黒く巨大な体躯に一瞬で飲み込まれ、逃れた人々も触手に絡め取られ次々と黒い液体へと変わっていく


崩れ去り、炎が燃え広がる街の中を血だらけの男が走る


「レインっ!!ティトっ!!何処だ!?」


瓦礫の中を掻き分けながら自宅へ向かったが、もうそこには何も無く、あてもなく探し続ける男


大黒海を避けながら広場へ出ると、噴水の陰に隠れるレインとまだ幼いティトを見つける


駆け寄ろうとしたその時、広場の端に立ち並ぶ家々が吹き飛び、黒い体躯が突っ込んで来た


「レインっ!!」


男は駆け出した、しかし大黒海は隠れていたレインとティトに向けて触手を伸ばす


レインはティトを庇うように自分の身を犠牲にし、体に巻きついた触手はレインを引き込んでいこうとする


手を伸ばす男に気づいたレインは必死に腕を伸ばし男の名を呼ぶ


しかし


そのまま大黒海の中へ


消えていった


愛する者を失い立ち尽くしてしまった男は、噴水の前で同じように立ち尽くすティトが視界に入った


泣きもせず、声も出せずにレインが消えていった場所を見ている


男は駆け出した


襲って来る触手をかわしながらティトを抱き上げ走った


すぐそばで呼ぶ声がしたので見ると、地下の遺跡の入り口を開けてアマンダ達が叫んでいる


男は走り


走り


あと少しで


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