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砂鯨が月に昇る夜に  作者: 小葉 紀佐人
奥義
64/93

20-2



帝国の強襲装甲列車の上で火花を散らすカザとラウル


受けきれない


速く重たい連撃を捌ききれずに、カザの身体は傷つけられていく


「くっ!!」


ラウルに刺された太ももの痛みに怯んだ隙


そこへ重なり合った十字の剣が迫り


カザは鋭い刃で十字に切りつけられた



しかしそれは蜃気楼のように消え


下段 雨の型 おぼろ


打棍技の弱点である超近距離


そこから放たれるゼロ距離からのアゴを狙った渾身のかち上げ


それをラウルは


片手で防いだ


しゃがみこんだカザの顔を逆に膝で蹴り上げ吹き飛ばすラウル


屋根に背中を打ちつけ倒れるカザ


ティトは口元を押さえ、今にも泣き出しそうな様子で見つめる


倒れたカザは意識が朦朧とする中、何故かナザルとの稽古の日々が思い出されていく


走馬灯だったらやめてくれ


そう思う思考とは別に、頭の中に昔の記憶が蘇る



「なぁカザ、お前『雪』って知ってるか?」


稽古の間、平石に並んで座って朝日を見て休んでいた時だった


「…知らない。何?雪って」


「昔の遺跡から見つかった本に書いてあったらしいんだが、雨が空気に冷やされて凍っちまうんだってよ!?信じられるか!?しかもそれが空から降ってくんだよ!」


「雨すら滅多に降らないのに、そんなのすぐ溶けちゃうんじゃない??」


カザはこんなくそ暑い砂漠にそんなの降るわけないと、ナザルの話を話半分で聞く


「遥昔、ここは砂漠じゃなかったんだと。四季って言って1年に4つの季節があったんだ。俺も詳しくは知らねぇが、今みたいに四六時中暑くもなけりゃ雪も降るってこった」


ナザルは立ち上がりおもむろに言葉を紡ぐ


『春芽吹き 夏恵まれて 秋の月 冬雪降りて 雪月花せつげつかかな』


その言葉を黙ってカザは聞くが、四季ってゆうのが分からず理解できない


「これは俺の爺さんがそのまた爺さんから引き継がれた昔の『歌』ってやつだ。俺にも意味はよく分からないが、雪月花ってゆうのはさっき言った四季の眺め、今見てる朝日と同じように、それを美しいと感じた言葉なんだと」


「………へぇ〜」


「…そうだよな、今のお前じゃまだ分からんとは思うが、身体は覚えてくれよ?その雪月花の名を冠した打棍技の奥義を今日から教える」


「…あぁ、そうゆう繋がりだったんだね」


珍しく流暢りゅうちょうに話すなぁと思っていたら結局稽古の続きだった



「カザ!!何やってんのよっ!!立って!!カザっ!!」


カザはティトのうるさい声で現実に引き戻される


「約束したじゃないっ!ねぇ!!カザっ!!」


必死にカザを起こそうと叫ぶティト


ラウルは立ち上がれないカザに近寄ろうと一歩踏み出した


ビキッ


ラウルは全身に痛みが走り、踏みとどまる


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