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砂鯨が月に昇る夜に  作者: 小葉 紀佐人
砂の街 バルウ
6/93

2-3


「なるほどなぁ〜、だから通り過ぎた瞬間爆発したのか」


ジャリハートの車体の間に詰まった砂を小箒やエアーで掃除していると、作業場の方から何やら納得した様子のシグの声が聞こえたので手を止めて作業場へ移動する


「何がなるほどなの?」


「いやぁそれがさぁ」


「新しい大発見です!!」


興奮した様子のアズーはシグの言葉を遮って続ける

ちょっとだけ怪訝な顔をしたシグだったが、細かい事はアズーに任せようとキッチンの方へ行く


「ジャイロシステムのコアが腐石なのはカザも知ってると思いますが、今回2つのジャイロシステムをリンクさせて爆発的なエネルギーが生み出せないか実験していたんです」


カザはうんうんと頷くが、内心そんな危険な事してたのかと思ったがアズーの説明を黙って聞く


「そこへシグが腐石を持って来たとゆうので大きいの以外は奥にしまって欲しいと伝え、細かい腐石を持ったシグがあろう事かリンクしてる間を通ったんです」


シグは普段しっかりしてるけどたまに抜けてんだよなぁ


「そしたら持っていた小さな腐石の1つに反応してこの有様ですよ!」


まで聞いたところでシグが冷たい柑橘系の果物を絞ったジュースを持って来てくれたので、ありがとうと言って一口飲んだ


「しかし、それは新しい発見でして!まず2つのジャイロシステムをリンクするのは、同じ大きさ同じ波形のエネルギーでないと難しいんです!でもまったく同じ人間は居ないのと同じで、腐石もほとんど同じものは無いんです。こんな事あまり考えたくも無いですし、言いたくもありませんが…例えば双子の方が腐者となり腐石になっているぐらいの事が無い限り、エネルギーを繋げる事は難しいです」


そう言われ、もしそれが見つかったとしてもあまりいい気分では無いが、研究者であり探求者であるはずのアズーが、あえてちゃんと口に出して言う

この砂漠に生まれ落ちた時から分かっている現実を、慣れたフリをしてみんな日々を過ごしている

それでも僕たちは分からない何かにあらがいながら生きていくんだってことが、アズーの言葉から伝わる

俺もシグもちゃんと分かってる

大丈夫


「しかし、さっき起きた爆発。あれは一瞬リンクしているんです」


「???」


黒板にささっと絵を描いて説明するアズー


「さっきは2つの近いけど異なる腐石をリンクさせようとしてました」


うんうん頷くカザとシグ


「その間に小さな腐石が入って爆発的なエネルギーが生まれました。それは異なる2つが真ん中にある小さな腐石にリンクしたんです」


???


「ですから、小さな腐石が、2つの腐石を繋げたんです!」


あーなるほどなぁとゆう顔をしながらも本当はよくわかってないカザとシグ


「さっきは行き場を無くしたエネルギーが拡散して結果的に爆発しましたけど、要はそのエネルギーの行き先を動力に繋げてあげれば!」


「「一気に加速するって訳だ!!」」


カザとシグは身を乗り出し気味に声を発して綺麗なハーモニーとなった


決め手の言葉を先に言われたよりも、合わさった声に驚いたアズーは、うんうんと頷くことしか出来なかった


「マジかー、ヤベェぞこりゃマジで」


「そしたらぁ、そのリンクってのと小さな腐石が繋がる機構を作って…そのエネルギーの出口をジャリハートのケツまで持ってくればいいんだな!?」


興奮し過ぎたカザはもう「マジで」しか言わない子になってしまい

シグはすぐさまアズーの家の奥に積まれたガラクタのような部品を漁りはじめる


アズーは驚きから立ち直り、今日カザが拾ってきた腐石を細かく見はじめた


カザもようやく我に返り、ガレージに戻ってジャリハートの機関部をレンチでこじ開け始めた



ナットを緩め、黙々と作業を続けていてふと何時間か前の出来事を思い出してしまう


ゲグ族につけられていた事と、危うく身ぐるみ剥がされそうになった事


親父は人に銃を向けない代わりに狩猟銃を殴る武器として使う『打棍技だこんぎ』とゆう武術があること。砂の民バルウの狩人は代々受け継いでいることを教えてくれた


打棍技の修練は3つの頃から始まり、一対一の型から一対複数人でも闘える型の2種類を使い分け、攻撃的だか流れるような動きを覚えていく

9つの時に霊祭と呼ばれる全ての命とご先祖様に感謝する祭りで、それを披露するのが凄く恥ずかしかったのを今でも思い出す


そう、あの時しっかりと冷静に心落ち着けていれば、ゲグ族の5人や6人打棍技で倒せた筈だった

それだけの修練を重ねてきたつもりだった


出来なかった


悔しい


本当に親父に合わせる顔が無い


独り立ちを許してもらえた俺は


まだこんなにも弱いと突きつけられる


歯をくいしばりながら


2人に気持ちを悟られないように


ナットを外してゆく


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