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砂鯨が月に昇る夜に  作者: 小葉 紀佐人
心の在り方
57/93

18-1


突然現れた強襲走行列車の砲弾を掻い潜り、勝ち誇った瞬間翼が折れて地面へと落下していく


迫る地面にぶつかる瞬間に目が覚めたティト


恐怖で少し息が荒いが、自分の体が無事なことに安堵してベッドから起き上がる


足を出してベッドに座ると、落ちた時に頭を打ったのか、突然の痛みに屈んで頭を抑える


「いててて〜、…やっぱり落ちたんか」


とゆっくり頭を上げて周りを見ると、鋼鉄で出来た可愛げの無い部屋にため息が漏れる


ティトはフラフラと立ち上がり、出口のドアを開けようとするが、外から鍵がかけられていて開かない


押しても引いても横にずらそうとしても開かない


「ちょっと!!誰かいないの!?」


と鉄製のドアをガンガン叩く


その音でまた頭痛が襲ってくるが、「出しなさいよっ!!」ともっと強く叩き続ける


しばらくそうして騒いでいると、ドアの鍵をガチャガチャする音が聞こえたので慌ててドアの後ろに隠れる


鍵が開き、ガチャッとドアが開く


中に入って来た人物に後ろから飛び蹴りを放つティト


それを振り返りざまに避け、ティトを空中で抱きかかえると、そのままベッドに下ろした


「まだ…寝てないと駄目だ」


ティトはベッドの前に立つ人物を見る


「…ラウル」


ティトは少し困惑するが、緑の眷属が言っていたことが本当なら、帝国の強襲走行列車に乗っていてもおかしくは無いと、認めたくは無かったが心の中で納得してしまう


「…私はシャングリラに帰りたいの。だからここから出して」


まさに攻撃をされたティトからすればその皇帝の息子に対して敵意を表さずにはいられず、強い眼差しでラウルを見据える


ラウルはティトと目を合わさないように、料理を乗せた食台を開いたドアの向こうから引っ張って部屋に入れると、ベッドに座ったまま食べられる机を出してそこへ持ってきた食事を乗せる


「すまないが、ティトのエアリードはもう飛べない。一応この列車はシャングリラへ向かっている。…だからここでおとなしくしていてほしい」


それだけ言って部屋を出て行こうとしたドアをティトは勢いよく蹴って閉めると、ラウルの胸ぐらを掴んで壁に押しつける


「あんたはシャングリラに何しに行くのよ!?襲われる私の故郷を見て楽しい!?」


目に涙を浮かべながら、しかし強い眼差しでラウルを睨みつけるティト


その姿を見てしまい、顔を逸らすラウル


「答えてよっ!!」


…………。



「…ティトには分からないよ」


そう言うとラウルは胸ぐらを掴むティトの手をゆっくり外す


「あいつが本気になれば世界なんて一瞬で終わる」


ティトの両手を掴みながら、ラウルはゆっくりと伏せていた目を開く


そこには禍々しく光を放つ目が、ティトを静かに見ていた


「…な、何よそれ」


その姿に驚き、少し後ろに退がるティトだったが、両手を掴まれている為それ以上退がれない


「お前達に…お前達に会わなければ…こんな想いはしなかったのにな」


禍々しく光る目は、悲しく今にも泣き出しそうになるが、掴んでいた手をパッと離して顔を逸らす


「緑の眷属の言葉は本当だ…俺は罪も無い人間を大勢殺している。大黒海も、俺にはどうする事も出来ない。…今はとにかく、ここで休んでいてくれ」


それだけ言うと、ラウルは部屋を出て行った


ティトはその場にへたり込んで、悲しみが込み上がるのを抑えきれず、床に突っ伏して大声で泣いた


扉の向こうでラウルは立ち尽くし


握りしめた拳から


血がポタポタと床に落ちていく


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