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砂鯨が月に昇る夜に  作者: 小葉 紀佐人
あらがう者
55/93

17-2



遥東の高い岩山の連なる地


そのふもとにはだいぶ前に崩れ倒壊した街が、砂にまみれて風化していた


そこから岩山の間に、どうやって降りてきたのかわからないが、巨大な船の様な物が放射状に連結し、まるで真上から見ると照明に使われるシャンデリアの様に、それは大地に降り立っていた


そのシャンデリアの様な巨大な船の集合体の中心に、その全てを連結する巨大な球体があり、その中にある司令室に不穏な空気が流れていた


司令室には円卓があり、その中心に浮かび上がるホログラムには砂漠の地図が表示されていた


円卓には5人の男女が座っている


「2日前に生じた磁場の乱れは、砂の民の街。あれは確かバルウとゆう街です」


ホログラムの地図にあるバルウの街のあたりで赤い点と赤く波紋の様に点滅を繰り返す表示が現れ、それを立ち上がり指差す端整な顔立ちをした若い男


「そしてこれが昨日観測した磁場異常…そしてこれが今朝のものです」


赤い点滅は、バルウの街からまっすぐ東のシャングリラへと向かっていた


「ありがとうイオ。…これが帝国の狙いなら、本当に神がかってるわね」


イオと呼ばれた若い男は椅子に座ると、サラサラとした少し長い髪を耳にかけた


円卓に座る恰幅かっぷくのある中年の女性は険しい顔で地図の点滅を睨む


「どうだろうな、何せ分からない事だらけだ。今分かってんのは、大黒海がここへ向かって来てて、シャングリラはまだ飛べねぇって事だ」


円卓の椅子に座り、長い癖のある髪を後ろへ流した髪型の中年の男は腕を組みながら冷静に答える


「提督!あんたティトちゃんもいないのによく平気な顔してられるな!」


と頭の毛根が全て消え去ってしまった若いとも中年とも言えない男が席を立って抗議する


「ピクル、ティトは大丈夫だ。あいつはついてないようでついてる」


そう言ってクスクス笑う提督と呼ばれた男


「もう!今いない子の事を話してもしょうがないでしょ!?大黒海はここに向かってるの!!このスピードだと今夜にはこのシャングリラは消えて無くなるわよ!?私たちの戦いはなんだったのよ!!」


中年の女性は凄い剣幕で怒りだし、その場にいた人間はみんな黙ってしまう


「アマンダ落ち着け、俺たちだって何にもしてこなかった訳じゃない。主砲は撃てるし、防衛システムも万全だ。バルウの街が退けたんだ、俺たちにだって出来るだろ?」


そう言ってアマンダをなだめる提督


「主砲は腐者に対してかなりの効果がありますから、大黒海に効かない事は無い筈です」


白衣姿の眼鏡をかけた三つ編みの女の子は、円卓に新しく映し出された主砲の説明をする


「月の光の何百倍も強い特大レーザーです。私の生涯最高の物と自負してますっ!!」


とまだカザ達ともあまり年の差を感じさせないような女の子が生涯と口にするのを、いつもの口癖とスルーした円卓の人たち


「そうだ。ルーペの最高傑作だ。だから俺たちはプラン通り物資の積み込みを予定通り行う!大黒海とここでケリをつけるのも良いじゃねぇか!畳んじまおう!!なんとかなるっ!!」


提督と呼ばれた男は立ち上がって拳を突き上げる


が、それに誰も反応せず


部屋にはため息だけが漏れた


しかし提督は何も気にせず豪快に笑い


「いやぁ〜しかしあいつはどこで遊んでんのかねぇ」


と部屋の壁一面のガラスの向こうに見える空を眺めて、少し笑った


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