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砂鯨が月に昇る夜に  作者: 小葉 紀佐人
親子の形
51/93

16-1


空に瞬く星々が、ひとつ、またひとつと白む空に薄く消えていく


まだ陽も昇らぬ砂の街バルウ、そのアズーの家のガレージでカザと出会った時のツナギ姿のティトは修理の終わったエアリードを静かに運び出していた


「…ありがとね」


ガレージを出る時振り返り、床で寝ているアズーに感謝を告げて道へ出る


ティトはエアリードに跨りエンジンボタンを押すと、反重力の力で周りの砂や小石と一緒に機体が軽く浮き、機器を操作してフラップの動きを確かめる


修理した翼のフラップの動きが少し鈍いが、飛べない程ではないとスラスターから風を噴き出し、徐々に強まる風に機体は上昇していく


それと同時に推進する為のスラスターからも風が噴き出て前進しながら高度を上げていく


「カザ…ごめんね」


小さく呟いたティトは、スラスターの噴射を強め


風の様にバルウから離れて行った




日が昇り、開けっ放しのガレージのシャッターから入る光で目を覚ますアズー


「…あぁ、まだ帰ってないんだった」


と夢の中で見た両親が家に居ないのを思い出して少ししょんぼりするアズー


仕方ないのでもう一度寝ようとして


ビクッと身体を起こす


「無いっ!…エアリードが…無いっ!!」


周りを見渡してもどこにもエアリードが無い事に気付いて立ち上がり、アズーは開いていたシャッターの外へ出る


家の前の道の前も後ろも見るが見当たらない


「やばいやばいやばいっやばいよどうしよっ!?」


頭を抱えて考えるが寝起きの為に思考が回らない


とりあえず持ち主のティトに言わなきゃと、砂バァの家に向かって走り出した



朝日を浴びながら1日サボってしまった打棍技の稽古をひとりで黙々とこなすカザ


これが終わったらティトの所に行って考えようと、最後の型を少しいつもとは違う感じで締めくくろうとした


「大変だ!カザっ!!」


慌てた様子のアズーと砂バァの付き人が走って向かってくるのが見え、稽古を途中でやめる


「はぁ、はぁ、はぁ…」


と目の前で2人して息を切らせて膝に手を置く状況にタオルで汗を拭きながら「どうしたの?」と聞く


「えあ、エアリードが…無くって」


「ティトさんが、エアリードに乗ってどこかへ行ってしまったみたいなんです」


それを聞いたカザは走って自分の家に入ると一瞬で着替え、荷物を持って外へ出る


「どこに行ったんですか?」


と息も落ち着いて来たアズーが聞く


「多分故郷のシャングリラだ、今大黒海がそっちに向かってるって聞いたから」


そう言うと家の前に停めていたジャリハートに跨るカザ


「え!?ちょ、ちょっと待ってください!!話が分からないです!!」


とアズーは止めようとするが、カザはエンジンをかけて走り出そうとする


「カザっ!!!!」


街中に響き渡る程の怒声が響く


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