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砂鯨が月に昇る夜に  作者: 小葉 紀佐人
怒り
50/93

15-3



夜の闇は深まり


帝国の強襲走行列車は砂漠の真ん中で停車し、数人の軍人が車両のメンテナンスをしていた


「あ〜あ!一体いつになったら帰れんのかね!」


「バカ!あんまり大きな声でそうゆう事を言うんじゃない!」


2人の軍人は車両の後方から少し離れた所で用を足していた


「殿下も居なくなっちまうし!クワイ大佐はめんどくせぇし!早く国に帰って娘に会いてえな!!」


「分かったから黙れ!見つかったら俺まで首が飛ぶ」


2人はそんな話をした後、自分の排泄した水で砂に文字を書いたんだが何て書いたか当てるゲームを始める


その後ろで列車に乗り込む人影に気づくこともなく



自室はランプの光で淡く照らされ、グラスに入った琥珀色の酒をゆったりとした椅子でくつろぎながら楽しむクワイ大佐は、机の上に置いてあった葉巻に火をつけふかしながら皇帝から密命を受けた時のことを思い出していた


「大黒海…噂には聞いていたがあれを帝国がやってたなんてな。しかもそれを俺自身がやる事になるとは思わなかった。…バルウは落とせなかったが本命はシャングリラだ。上手いことアレは向かってくれた。良いじゃないか、順調すぎるぞ!目障りな皇太子ももういない…皇帝陛下の片腕をこれからは俺が担う…本当に人生とは何があるか分からないもんだなぁ!」


恍惚に満ちた顔をランプはただ照らす


クワイ大佐はグラスの酒を喉に流し込むと、酒の入ったボトルの蓋を取りグラスへ注ぐ


「お前が皇帝の片腕?笑わせるなよ」


いつの間にかドアの前に立っていたラウル


驚いたクワイ大佐は注いでいたボトルを手を滑らせて落とす


「き、貴様っ!!何故生きている!?」


ラウルは顔を伏せたままその場から動かない


「何故?砂漠に放ったぐらいで殺した気になってるとは本当におめでたい奴だな」


そして一歩、また一歩とクワイ大佐までの距離を縮めていく


「おかげで色々あったが…」


「クソガキがっ!殺してやるっ!!」


と引き出しからリボルバー式の銃を取り出すとラウルに向ける


「自分が何者なのか再認識出来た」


クワイ大佐はハンマーを起こしてラウルの顔に狙いを定める


そしてそこで初めて気づく


ラウルの目が


紫色に輝いていることを


「な、なな何だ!?…お前は一体…」


一歩で距離を詰めたラウルはリボルバーの銃ごとクワイ大佐の手を掴むと、金属と手をまるで紙くずを丸める様に潰した


「!?ぐわぁぁぁぁ!!」


「おい豚…肩書きだけであいつの側には立てないんだよ」


潰された手を抑えながら後ろへ後ずさる


「だ、誰かっ!!誰か来てくれぇ!!助けてくれっ!!」


その姿を見るラウルの目は先程より一層濃く


禍々しい色へと


変わっていく


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