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砂鯨が月に昇る夜に  作者: 小葉 紀佐人
真実と嘘
46/93

14-3


!?


慌てたラウルは後ずさりしながら腕に隠していた投げナイフを2本抜き取り、木々の隙間からこちらを覗くエリマキヘビに向かって投げる


キキーンッと硬い鱗に弾かれ、エリマキヘビは木々を薙ぎ倒して開けた場所へと入って来た


「何で!?音しなかったよ!?」


「ヘビだからとしか言いようが無いな」


と2人は開けた場所の中央へと後ずさりしていく


それをジリジリと近寄り、一気に回り込むと、ティトとラウルを囲うようにとぐろを巻いた


「ねぇ、ホントに…何やってんのよ」


ティトは今ここに居ない誰かに向かって小さな声で話しかける


ラウルも流石に万策尽きてしまい、投げナイフに手をかけるが投げられない


そしてエリマキヘビは極彩色の襟を震わせ


大きな口をゆっくりと開け


飛びかかる


ギュッと目を瞑って迫り来る恐怖に耐えるティト


風が


2人の間を通り抜け


エリマキヘビの口の中を縦に切り、痛みで後ろへ怯む


振り返る2人の目には少し離れた平たい岩の上で、狩猟棍を振り抜いたカザの姿があった


上段 砂の型 真空波


縦横無尽に狩猟棍を振り回し、もう一度真空の刃を放つが、もう口を閉じてしまったエリマキヘビの鱗に弾かれてしまう


ナザルの技には遠く及ばない自分の力に奥歯を噛みしめるカザ


真空の刃は極彩色の襟の部分だけ切り裂き、円形だったソレは左右に開いた形になるだけで、エリマキヘビはカザへと体をうねらせ突進する


間にいたティトとラウルは左右に飛んでソレを避けるが、カザは正面からエリマキヘビの大きく開かれた口を狩猟棍を縦にして受け止める


そのまま後方の少し大きな岩へと打ち付けられるカザ


背中に強い衝撃が走り呼吸が一瞬止まるが、今手を離したらヘビに丸呑みにされてしまうと必死に耐える


エリマキヘビは嚙みつこうとするが、狩猟棍が顎の上下を抑えてしまっているので嚙み付けず、カザを岩に押し付けて何とか呑み込もうとする


それに必死に耐えるカザを助けようとティトはエリマキヘビの胴体を掴んで引っ張るがビクともしない


ラウルも駆け寄り手助けしようとした時だった


突然樹海全体から現れたツタにエリマキヘビは捕らえられ、身動きが出来なくなる


その隙にカザはエリマキヘビの顎から抜け出す


どんどん増えていくツタに恐怖を感じながらも、カザ達は開けた場所の奥へと進んで行った


しばらく進むと、ゴロゴロとした岩の上に他の植物よりも一段と大きく、そして強く輝く六角形の花のような壺のような植物が生え、その壺の中に金色に輝く液体が透けて見えた


「あっ!アレじゃない!?ヘキサリーフ!!」


ティトは近寄り手に取ろうとした瞬間


「触るな」


誘う樹海全体から響く声


はっきりと聞こえるが静かで重たい声にティトはヘキサリーフに伸ばした手を止めてカザ達の方へ慌てて戻る


するとヘキサリーフの近くにさっきエリマキヘビに巻きついたツタが集まり、それは段々と人の形になっていく


「…緑の…眷属」


その姿を見たカザはナザルに伝えられていた事を思い出し、思わず口にする


「…さよう。人の中にはそう呼ぶものもいるな。しかし私はこの森そのものだ」


どこから声を出しているのか分からないが、その人型にまとまったツタは言葉に連動するように動く


「そなたらヘキサリーフの花蜜が必要なのだろ?」


「そ、そうなの!腐者の呪いが解けるって聞いて!」


怖いが必死にティトは伝えようとする


「腐者の呪いか…確かにあの穢れを打ち消す力はあるが、このヘキサリーフの花蜜は人の身では耐えられない」


「耐えられないとはどうゆう事ですか!?」


カザはようやく見つけたのにと、逸る気持ちを声に出す


「光とは便利な物だが、時にそれは人を傷つける。この砂漠で一日中日光を浴び続けたらどうなる?皮膚はタダレ、肉まで焼けてしまう。この蜜も同じ。一滴でも人の肌に触れれば肉は変異し、体を蝕む病魔となるだろう」


せっかく見つけたのに使えないと言われ、どうしたらいいかも分からず考え込んでしまう3人


「その、ヘキサリーフの花蜜を水か何かで薄めて飲ませたら駄目なのか?」


とラウルが緑の眷属に聞く


「…そうだな、確かに昔そうして持って帰った者もいたな」


「ラウル頭いい!!」


「もうダメかと思ったよ」


とラウルの肩を小突く2人に


「ちょっと考えれば分かるだろ」


と照れながら言うラウル


「しかしそれはこの森の水でなければ駄目だ」


そう言われたカザは腰袋から水筒を取り出し中に残った水を捨てると、池の水を汲んだ


そしてヘキサリーフに近づく


「あの、どれくらい入れれば」


と緑の眷属に聞くと


「一滴で構わぬ。それ以上は毒だからな」


そう言われ、カザは慎重にヘキサリーフを傾けて金色に輝く液体を、そっと、一滴だけ、落とした


すると水筒の中の水は薄っすらと金色に輝き、フタを閉めたカザはホッと肩を撫で下ろす


…………。


急に沈黙し、重苦しい空気が緑の眷属から発せられる


「…お前の存在は知っていた。ラウル」


突然の言葉に目を見開くラウル


カザもティトも何を言っているのか分からずただ次の言葉を待つ


「この森に入ってからずっと見ていた。そして分かった事もある。しかしこの世界の為に…お前はここで始末する」


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