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砂鯨が月に昇る夜に  作者: 小葉 紀佐人
誘う樹海
43/93

13-3


風も段々と穏やかになり、視界が開けた砂漠をさっきよりゆっくりと走るジャリハート


時折ラウルは大丈夫かとティトが振り向く


そして前へ振り返ろうとした時だった


「ねぇ!あれっ!!」


とカザの肩を叩いて指をさす


熱によってできた陽炎の向こうに、緑色の塊が見えた


「見つけたぞ!!」と方向転換して速度を上げるカザ


近寄るに連れてその緑の塊は広く大きくなっていく


その大きさは、恐らくバルウの街がすっぽりと入ってしまう程の大きさで、目の前まで来ると見上げる程の巨木が生い茂り、その間から中が覗けない程の影とよく分からない雑草、そして地面をゆっくりと、近くで見ても分かりづらい程のスピードで移動していた


カザとティトはその森を口を開けて見上げていると、後ろの方で盛大に嘔吐する音が聞こえた


振り返るとラウルが少し離れた所でキラキラしていた


カザは水筒を持って駆け寄るが、「大丈夫…少し酔っただけだ」と歩き出し樹海を見上げる


「…何だこれは……こんなの帝、俺の国でも見た事ないぞ」


「俺もだ…」


「…凄いね、砂漠の真ん中なのにね」


しばらくその巨木に圧倒されていたが、カザは当初の目的を思い出した


「ラウル、俺とティトはこの誘う樹海に用があって来たんだ。でもこの中がどうなっているか分からないし、ラウルには関係ない事なんだけど…どうする?」


ラウルは少し考えた後


「一緒に行ってもいいか?邪魔はしない」


「…分かった。ティトも良い?」


とカザが聞くとティトは黙って頷いた


カザはジャリハートを近くの巨木に紐を結んで繋げる、これで森から出たら船が無いなんて事は無いだろう


そして3人は意を決して


薄暗い樹海へと足を踏み入れて行った





北にある帝国の一室では、軍人たちが様々な器具を使ってトレーニングしている中、真っ黒に日焼けし明らかに他の軍人よりも大きい男が、格闘場でレスリングをしている


「ほらっ!もっとよ!もっと来なさい!」


対戦相手の軍人は必死になって覆い被さり技を決めようとするが、呆気なく体勢を変えられて首を締め上げられてしまう


「駄目でしょ簡単に腕を入れさせたらぁ!もう外れないわよっ!もう!」


と怒ってるようで楽しんでいる男に別の軍人が駆け寄る


「失礼しますっ!ヤヒム大佐!」


「なぁに?」


と締め上げる力を緩めずに聞くヤヒム


「ラウル殿下からの定期連絡が途絶え、クワイ大佐からは殿下は行方不明になったとのご連絡が入りました!!」


「あらやだ、ラウルちゃんやられちゃったのぉ?…クワイごときに何をしてるんだか」


と失神しかけた軍人の首から腕を離し、連絡係の軍人の方を向く


「皇帝陛下には?」


「まだお伝えしておりません」


「伝えなくて結構よ!我々で探すわ!行くよお前たち!!」


とトレーニング室に響き渡る声に全員が立ち上がりクワイ大佐に敬礼する


「クアッドを用意して、ラウルちゃんに消えてもらう訳にはいかないわ」


そう言うとクワイ大佐はシャワー室へと走って行った


女走りで






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