13-2
窓も無い鋼鉄製の部屋の中、白い服を纏うラウルはベッドで横になり何も無い鋼鉄の天井をぼんやり見つめていた
「…はぁ」
何もする事も無い
父上が何を考えているのかもわからない
砂の民が何人死のうが知った事では無いが、昨夜の大黒海の力は何だ?
父上は俺に何も言わずにアレを見せた
あんなもの制御出来るわけがない
帝国に持ち帰る訳でもない
…分からない
ただひとつ言えるとすれば
あれだけの力を持った大黒海を、あのバルウとかゆう街は退けたとゆう事実
帝国の人間ならばすぐに諦めて逃げるか、死を受け入れる。小賢しいレジスタンスの奴らでさえ、アレが迫り来る恐怖には勝てないだろう
何が違う?
圧倒的な存在を前にして
何故あそこまで…
頭の中で巡らせる思考を遮ぎるように部屋のドアをノックされて身を起こす
「何の用だ?」
「はっ!失礼致しますラウル殿下!クワイ大佐がお呼びです!」
「…あぁ、分かった。今出る」
とベッドから立ち上がり部屋の鍵を開けドアを開けると、屈強な軍人が2人ドアの両側に背を向けて立っていた
ラウルは気にする事もなく早足で歩き始め、それに付いて行く2人
ラウルの部屋は最後尾だった為、いくつかの連結路と車両を渡るが、その度に出会う軍人達はラウルの方を向いて敬礼をする
そして3つ目の連結路の扉が開いた先にクワイ大佐がいた
「おぉ!殿下!私からお伺いしようと思っていたんですがここまで御足労いただき感謝致します!」
と大袈裟なリアクションで迎えるクワイ大佐に横風を受けながらラウルは冷めきった目をして腕を組む
「何の用だ!?」
走行中の列車の連結路で話している為、大声で話すラウル
「用と言う程の事でもございません!殿下には大変お伝えしづらいのですが!…私は今回の遠征で全てを終わりにしたいのです!」
突然の意味不明なカミングアウトに眉間にシワを寄せるラウルに近寄るクワイ大佐
「なので…申し訳ないのですが、あなたにはここで降りてもらいます」
そうクワイ大佐が言った瞬間、後ろにいた2人の軍人に両腕を掴まれ脇で持ち上げられる
「!?貴様らっ!どうゆうつもりだ!!」
ジタバタともがくが腕を掴まれ持ち上げられている為何も出来ない
体を捻って蹴りを入れたりもしたが、屈強な軍人に12歳の力の入っていない蹴りなど蚊ほども効かず、連結路の柵の前まで移動させられてしまう
ラウルの真後ろに来たクワイ大佐は耳元で囁く
「…ラウル、往生際が悪いぞ?付き人も着けずにノコノコとバカな奴だ。お前は油断した。そしてここで行方不明になるんだ。皇帝陛下はどう思うだろうな?」
と下卑た笑いをするクワイ大佐
きっと
何とも思わないと
ラウルは思ったが、そんな事はどうだっていい。今は自分の身を守らねばと後ろに向かって蹴りを放つ
バシッと片手で受け止めるクワイ大佐
「…さようなら、殿下」
そう告げると2人の軍人は連結路からラウルを砂漠に向けて放り投げた
…そして今に至る
地平線に向かって叫び散らかす少年をほっておく訳にもいかず、ゆっくりと近づくジャリハート
風が収まり視界が晴れてきてはじめて白い服の少年は近づくジャリハートに気づいて振り返る
「…大丈夫?こんな所で1人でいるなんて危ないよ?」
と恐る恐る声をかけるカザ
何故ならさっきまで聞くにも耐えない言葉を地平線に向かって叫んでいたのだから、危険な人物かもしれない
「あ、あぁ…ちょっと居眠りをしてたら行商の車から落とされてしまって、もう死ぬんだと思ったら我を忘れてしまった」
と、ちょっとぎこちなく応えるラウル
「そうなんだ、それは災難だったね。俺たち行かなければならない場所があって…えーっと」
と知らない白い服を着た少年の名前が分からず困っていると
「ラウルだ。そこまでで構わないので連れて行ってもらえないか?」
そう言われカザはティトを見ると、良いけどどう乗るの?2人しか乗れないんでしょと目線と仕草だけで伝える
「あぁ、そっか…あっ!じゃあ!」
とカザはジャリハートから降りるとティトにも降りてもらい、座席の下から砂鮫の革のシートとドドチョのヒゲの紐を取り出すとジャリハートの後ろに付ける
そしてシートを指差して
「ここに寝そべってもらえる?そしたらラウルも一緒に行けるよ」
と名案だろ!?って顔に書いてあるカザは屈託の無い笑顔でラウルに言った
「こ、ここに寝そべるのか?」
とシートの前で明らかに躊躇するラウルだったが、どうぞと促すカザと心配そうに見てくるティトに耐えきれずにシートにうつ伏せの格好で寝そべった
「一応ゆっくり目で走るけど、振り落とされないようにしっかり掴まってて」
とカザはジャリハートに跨りジャイロシステムを起動させ走り出した




