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砂鯨が月に昇る夜に  作者: 小葉 紀佐人
誘う樹海
41/93

13-1



砂の街バルウを出て東へとひた走るジャリハート


今日は少し風が強く、砂嵐とまではいかないが風で砂が舞って視界が悪い


視界の悪さは方向感覚を鈍らせるので、カザは腕に付けている方位磁針を時折覗いてはズレた進路を直していた


視界が少し晴れ、前にティトと休憩した小さいオアシスが見えたのでそこで少し休憩する


ティトは砂の付いたゴーグルを息を吹いて綺麗にすると、水筒の水を飲んでからオアシスの水を汲んだ


「ここからまだ遠いかな?」


前に来た時はリンクシステムの暴走によって一瞬と思える時間だったが、今日は視界が悪いのもあってここまで来るのに2時間はかかってしまった

カザは水を飲みながら周りを見渡すが、地平線の手前で砂が舞って遠くまで見渡せない


「あの森みたいなのはそんなに早く移動はしてなかったから、まだ近くにいると思うんだけど」


ティトも砂漠を見渡してみるがそれらしいものが見当たらず、エアリードだったら空から探せるのにと思ったが無いものは無いとジャリハートに跨った


走り出すジャリハート


真東を目指し砂の舞う場所に突入



…………。



「ねぇ!」


「何!?」


後ろからティトが声をかけてきたので返事をする


「何か聞こえない!?」


そう言われ速度を落として耳を澄ませる


……………。


「…何も聞こえないけど」


とカザが答えた瞬間、前方に何か見えた


「…何だあれ?………人?」


進行方向に見えたのは白い服を風にたなびかせながら歩く人の姿だった


「くそったれがぁぁぁ!!」


その人物は東へと歩きながらその方向へ叫んでいた




…30分程前……


化石燃料を燃やしながら進む帝国の強襲走行列車の司令室から高笑いが響く


「はっはっはっ!!あのクソみてぇな街が大黒海に襲われる様は圧巻だったなぁ!!一晩経っても興奮がおさまらねぇ!!」


司令室では逃げて行った大黒海の痕跡を探そうと軍人達はせわしなく情報を集めている中、クワイ大佐は椅子にふんぞり返って1人愉快に笑っていた


「大佐っ、大黒海の痕跡は途中で途絶えています。我々の進路はどの様に致しますか?」


1人の軍人はクワイ大佐の指示を仰ごうと、椅子の前に立つ


「あぁ?進路?…いいよ、このまま東に向かえば」


「了解しました」


「なぁ!それよりあの皇太子はどうした?」


さっきまで楽しそうだったクワイ大佐の顔は、明らかにめんどくさそうな表情に変わり、部屋を出ようとした軍人に質問した


「はっ、皇太子殿下は今自室にて休憩しているようです」


「…そうか、行っていい」


そう言われ部屋を出て行く軍人


「おい、誰か暇な奴2人、皇太子を呼んでこい。連結路で待ってる」


軍人達の部屋に繋がるスピーカーのスイッチを押してそう告げると、クワイ大佐は静かに下卑た笑いを浮かべた

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