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砂鯨が月に昇る夜に  作者: 小葉 紀佐人
バルウ防衛戦2
33/93

11-1


サーチライトと街の灯で照らされた真っ黒な体躯の表面にはウゾウゾと人の形をした腐者がうごめき、ヤグラの上からの砲撃で飛び散るが直ぐに元の形なのか新しい腐者なのか分からないが、その場所は塞がっていく


この距離ならと放水して大黒海に浴びせるが、何の効果もないと早々にバズーカに持ち替える守護隊。彼等の撃つバズーカの炸裂弾は着弾と同時に炸裂する為貫通力は無い。ここまで近づいて来て今目の前の敵に対して必要なものは貫通力だと、そう感じたガンザの横にいつの間にかいなくなっていたバサラとルウ、そしてナザルがヤグラに立つ


彼等の後ろには巨大なゴツゴツとした岩。直径1メートルはあるだろう巨大な岩がいくつも並んでいた


「よーし、やるかね久々に」


とバサラとルウの全身の筋肉が盛り上がる


軽々と岩を担ぐと


それを力一杯投げ飛ばす


力技 隕石投げ


手から離れる瞬間ドンっと音速を超えた時に起こる衝撃波が広がり、弾丸のように放たれた2つの岩が大黒海へと突き刺さる


ブォォォォと苦しむ声を上げ、歩みを止める大黒海


「よしっ!!どんどんいくぞ!!」


とヤグラの上まで持ってきた巨石を一発一発力を込めて投げていく


隣で見ていたガンザは久々に見た馬鹿みたいな光景に呆れて笑ってしまう


何故ならそれはまだ4人が若かった頃、誰がどこまで岩を飛ばせるか競い合っていたぐらいのくだらない遊びが、まさかこんな所で役に立つなんて思いもしなかったからだ


あからさまに苦しみ、少し後退しているようにも見えた大黒海


しかし、腐者達が集まり空高く二本の柱を作り出す


「な、何する気だ?」


とヤグラの連中は身構え


「…来るぞっ!!」と叫ぶナザル


それを鞭のようにしならせてヤグラの上めがけて一瞬で伸ばし、横薙ぎに振り抜く


ナザルの声に反応した連中はしゃがんでほとんどが避けれたが、何人か犠牲になり一瞬で黒い液体へと変わり、それはヤグラから滴り落ちて大黒海の方へと流れて行った


「くそっ!これなら腐者の大群の方がよっぽどマシじゃねぇか!!」


「何で…何でこんな」


「ちきょう!アイツは去年子供が産まれたばっかだぞ!!…馬鹿野郎がっ!!」


バルウの戦士達は仲間を一瞬で殺された怒りをぶつけてやろうとしゃがんだ状態から大黒海を覗くが、もう1本の触手をしならせてバルウの防壁を鞭のように打つ


その衝撃でヤグラが揺れ、皆必死に掴まって耐える


防壁自体は無事であの触手では壊れないようだと安心したが、これでは手も足も出ない


にも関わらずナザルは立ち上がった


目の前からジリジリと近寄って来る大黒海


その大きな巨体のせいで、距離はもう目と鼻の先くらいに感じる


さっきのバサラとルウの攻撃の傷跡は見えない。実体があるのか無いのか分からないが、効いている事は確かだと呼吸を整え始めた


ヤグラから防壁の上へと飛び移り、仁王立ちになると狩猟棍を縦横無尽に回し始める


大黒海は2つの触手をビュンビュンとしならせ今にも襲って来そうな状態だが、ナザルは狩猟棍を回す速度を上げていく


ナザルの周りの空気が


張り詰めていき


防壁の上に乗っていた砂利や小石がフワッと浮き上がる


上段 砂の型 真空波


踏み込んだ左足と同時に横一文字に狩猟棍を振り抜いた瞬間、真っ白な風の刃が放たれ触手どころか大黒海をもズバッと横一閃にした


バシャバシャっと触手は地面へと落ちて液体に戻り、大黒海の体躯は頭と思われる部分の真下から横に真っ二つにされ少しズレる


そのまま地面へと崩れ落ちるかと思われたが、ウゾウゾとうごめく腐者達がそれをさせずに元の形へと戻っていく


「…くそっ!不死身かコイツは!」


確かな手ごたえがあったナザルは悔しそうに大黒海を睨みつける


先程の攻撃で怒りに触れたのか、上下に開いた口から咆哮する


ビリビリとまともに受けたナザルは膝を付いたが、大黒海は考える隙も与えず防壁に突進してくる


慌てて跳躍してヤグラに着地した瞬間、バルウの防壁に衝撃が走りヤグラから吹き飛ばされるナザル


地面で受け身をとり顔を上げると、たった一撃の突進で大きくヒビの入った防壁が目に入った


「…やべぇなこりゃ」


圧倒的な力の前にナザルは半笑いでボヤいた




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