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砂鯨が月に昇る夜に  作者: 小葉 紀佐人
仄暗い洞窟
27/93

9-1


カザ達一行は砂の街バルウを出て数時間程北西へ走り続けただろうか。照りつける日差しもてっぺんを過ぎ、ようやく鉱山が見えてきた


「アレが鉱山で、此処から先は岩だらけだからスピードを落として行くよ!」


カザは赤い岩肌が見える西の方を指差しながらティトに説明する


「わかった!」


揺れの少ないサンドシップでもずっと座りっぱなしで流石にお尻が痛くなったのか、少し座り直したティト


砂列車だともっと時間がかかってしまうが、ジャリハートとタンクは早々に白い岩肌の鉱山を通り過ぎて奥の岩場へと入っていく


赤茶けた岩は風化によって道が出来ていて、その間をゆっくりと進んでいく


カザもシグもバサロも、鉱山には行ったことはあったが、こっちの岩場は未知の領域。4人は辺りを見回し警戒しながら奥へ奥へと進んでいく


時々小石が岩から転がり落ち何か生き物が動いたんだと思われるが姿は見えない。バサロは鍾乳洞への入り口を見落とさないようにタンクの上部を開けて高いところから見渡す


「あっ、あれじゃない?」


しばらく進むと先の方で道が分かれ、1つはもっと西へ続いていたが、もう一つは下へ下っていく道でその先に広い洞窟の入り口があった


入り口まで来て中を覗くと巨大な空洞があり、その先は少しずつ細くなっているようだが暗くてよく見えない


鍾乳洞に行くと分かっていたカザとシグは、一尺程の長さ(手から肘までの長さ)の白っぽい棒を取り出しバキッと折るとオレンジ色に輝き辺りを照らし、折った棒自体はもとの棒の形に戻る


それとは別に紐の付いた小さいのも取り出し発光させるとティトに手渡した


「中は真っ暗だと思うからこれで見えると思うよ」


そう言いながら他の3人も小さな発光器を首から下げ、洞窟の中へと入って行った




砂漠に溶け込む迷彩服を来た男たちは強襲走行列車の中の司令室で、外に設置された望遠カメラからの映像が映し出された数台のモニターを見ていた


「…以上無し、目標未だ確認出来ず」


「クワイ大佐、後数分でラウル皇太子が到着する模様です」


司令室の真ん中で遠まきにモニターを眺めていた男に無線連絡係の兵士が伝えるとクワイ大佐と呼ばれた男はあからさまに嫌な顔をする


「皇帝陛下の大事なひとり息子が何の用だ!?邪魔くさい!茶でも出してもてなせ!それともミルクがいいか!?」


その言葉に司令室の男たちの下卑た笑い声が響く


「大佐!南東の方角に砂煙が上がりました!!」


モニターを見ていた兵士がその映像を大きなモニターに写す


比較的なだらかな砂地にいくつもの砂煙が高く舞い上がり、地面から真っ白な巨体を現した


「待ってたぞ!この時を待ってたぞ砂鯨!!1、2、3、4、5頭だな…砲撃準備!!1匹だけ残して全て駆逐しろっ!!」


その言葉に威勢よく応えた兵士は砲身の向きを砂鯨の群れへと向ける


「ってぇぇえ!!」


クワイ大佐の号令と共に放たれる砲弾


嵐の様な砲撃は砂鯨たちの体を貫通し


砂漠が赤く、しかし砂に染み込んだ血はすぐに黒っぽく変わる


あっという間だった


瀕死の1頭を残し、さっきまで優雅に砂海を泳いでいた砂鯨たちはもう動かない


苦しそうに声を上げる砂鯨の声は小さく、倒れた仲間に近寄ろうとするがうまく動けない


その様子をモニターで満足気に見るクワイ大佐


「…大佐、何故1頭だけ生かしておくのですか?」


疑問に思った兵士が聞く


「皇帝陛下からのリクエストだ。ここからが肝心なのだよ」


そう言ったクワイ大佐はモニターをじっと見つめる



四つの横回転する羽根をつけた空飛ぶ乗り物に乗ったラウルは、窓からその一部始終を見ていた


「…何故あんな生き物にお父上は執着するんだ?」


砂鯨が虐殺されていようが眉ひとつ動かさず、気怠そうに眺めていたラウルだったが、生き残った砂鯨に異変が起こる


席を立ち窓に両手をついてその光景に目を奪われる


「…なんだあれは……何が起こってる」



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