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砂鯨が月に昇る夜に  作者: 小葉 紀佐人
月光蟲と秘密兵器
24/93

8-1



今日もジリジリと砂漠を焼く太陽


大型帆船でチョリの漁を終えた頃、別の場所では6輪のサンドバギーがあてもなく彷徨っていた


先日怪鳥デモデモの筋張った硬い肉を食べるのを流石に硬すぎると途中でやめた所為で余計にお腹が空いてしまったゲグ族のガラムとゾイは、死んだ魚の様な目で砂丘の間を走り抜けていく


大きくジグザグに砂丘の窪みに沿って走っていた2人の前に、突然ソレは現れた

ソレは大きく、砂丘の斜面からもっそりとブヨブヨとした白っぽい物がはみ出していた


サンドバギーを止めてソレに近寄る2人


「ガラムぅ、コレ何?」


「分からねぇガ…ちょっとゾイ触ってみろよ」


と言われ、少し嫌そうな顔をしたゾイだったが、好奇心に負けて近寄り触れてみる


「…凄いブヨブヨ、柔らかいギャ」


「じゃあ」とガラムは足から小ぶりのナイフを引き抜きゾイに渡す


「切ってみるガ。食べれるかもしれんガ」


そう言われ、ゾイは少しためらったが小ぶりのナイフをそのブヨブヨにスッと切り込む

すると中から白い液体がブシャっと噴き出てそれをまともに浴びるゾイ


「なんか噴き出たギャ〜………甘いギャ!トトのミルクみたいだギャ!!」


とその白い液体を手ですくって飲み始めた


「ほ、本当ガ!?本当に甘いガ!?」


そう言ってガラムも近づいて舐めてみると、確かに濃厚なミルクの様な味がし、ゾイと同じように少しずつブヨブヨから漏れ出る白い液体をすくっては飲みすくっては飲む


「美味いが!もっと出ないガ?」


そうガラムが言うと、ゾイは躊躇いもなく小ぶりのナイフを深く突き刺した


砂が空へ舞い上がり砂丘の山々を吹き飛ばし、中から巨大なサンドワームが現れのたうちまわる


噴き出た液体の上から砂を被った2人は砂まみれになりながらサンドバギーへ逃げる


「サンドワームの尻尾だったんだが!!もうちょっと優しく刺すガ!!」


「分からんギャ!!ガラムだって分からんかったギャ!!」


と2人は言い合いながら6輪のサンドバギーへと走って行った




砂の街バルウで一番広い敷地の砂バァの家は、実質バルウの本部のような役割になっている。屋敷の大広間には既にナザル、バサラ、肉屋のルウ、ガンザ、守護隊隊長のオーキ、シグ、アズー、チョリの積み込みを済ませたバサロ、ミゲル、クシナ、その他にも数十人集まり、砂バァとその付き人2人も既に席についていた


そこへカザとティトが中に入ろうと入り口まで来たが、皆の視線に一瞬躊躇した


「そなたらも来たか。さぁ入っておいで、話は皆から聞いた。ワシからちゃんと説明させておくれ」


砂バァは優しい声で2人を招き入れ、近くに来るよう促す


「アズーから聞いたと思うが、ここから北北東の位置にある大きなオアシスのあるアルルの街が腐者に襲われたのは本当じゃ。しかしアズーが言うような大黒海では無かったんじゃ」


そう聞いてカザはアズーを見る

アズーはなんだか申し訳なさそうにしていた


「壊滅とまではいかなかったようじゃが、多くの犠牲者が出てしまったと通信で連絡が入った。噂で大黒海と口にしてしまう程の腐者の群れだったそうじゃ、アズーを責めんでやっておくれ」


カザもティトも、もともとそんなつもりは無いが砂バァの言葉にうなづいた


「ナザルたちの話と通信による情報によれば、おそらく帝国の刺客がアルルの壁を内側から壊したようだ。そこへタイミングよく腐者の群れが襲って来た模様です」


付き人は丁寧に説明してくれたが、どうしても自分の言った言葉に疑問がわいてしまう


「…タイミングよく」


とやはりそこが気になってしまい口にする付き人


「それについては分からんもんは分からんのじゃ、考えても仕方あるまい。幸いこちらに来ていた帝国の刺客はもういない。隣街のゴーデンにも気をつけるよう連絡はした。今更帝国の連中が何を考えてるかは分からんが、ワシらはそれに対しての対策を早急に考えねばならない。もしかすると大黒海の予兆かもしれん。最悪を考えてそれに備えなければ」


「砂バァの言う通りだ。オーキ、防壁の点検、補修と強化を今すぐ始めろ」


そうナザルが指示すると「わ、分かった」と言って守護隊の隊員に指示するオーキ


「監視用のヤグラを増やしてはどうか?」


とバサラが提案するとガンザが


「それは俺がやろう。若いのも元気余ってるからな」


と前のサンドワームの時の救援部隊のほとんどの連中が拳を上げて「任せろ!」と気合いの入った返事をする

ガンザはこの街では何でも屋みたいな仕事をしていて、普段はかなり暇している分こうゆう時に実力を発揮してくれる


「なぁ砂バァ、昔腐者の群れに街が襲われた事があったよな」


とナザルは砂バァに聞く


「あれはまだおぬしらがカザ達と同じ様な年だったか?」


「あぁ。その時砂バァに言われて変な蟲を取りに行かされた記憶があるんだが…はっきり思い出せねぇ」


「…そうじゃ!鉱山よりもっと奥に鍾乳洞があってな、その奥の『月光蟲』を取りに行かせたんじゃ!」


「それだ!そう!取りに行った後、どうしたか思い出せねぇ」


とナザルは頭を抱える


「あの頃のお前は病弱で、高熱出してるのについて来た挙句向こうで倒れたのを俺とルウで街まで運んだんだよ。あんなにいっぱいいたのにちょっとしか捕まえられなかったんだ」


とバサラが昔を思い出しながら話す


「あぁ、だから記憶が無いのか…つーかその恥ずかしい話をみんなの前でするな!」


とナザルらしくもなく恥ずかしがっている


「自分で始めた話だ。仕方ない」とルウも「あの時は大変だったんだ」とカザに言う


「分かった!分かったからもう止めろ!俺はその光る蟲が使えるんじゃねーかって話しがしてぇんだ!」


とナザルは強引に話を元に戻す


「そうじゃな。月光蟲は腐者が嫌う月の光を集める蟲じゃ、絶命する瞬間に放つ光は強力じゃぞ!腐者が消し飛ぶ威力じゃ!」


それを聞いたカザもティトも、信じられないといった顔で砂バァを見るが、ナザル達が昔見つけて来たのが事実で今もそこに生息しているのならと、何か希望が見えてきた気がした


「しかし、あそこは大人じゃ狭くて入れん」


とバサラが言う


「ちょうどカザやシグぐらいでないと」


と皆がこちらを見る


「カザ、行ってくれるか?」


ナザルは行けとは言わない。その優しさがかえって辛い時もあるけど、自分を信じて言ってくれてるのはわかってる。だから迷わないで応えられる。


「うん、行くよ………シグが」


「ちょっ!何で俺だけなんだよ!お前も来いよ!つーかアズーだってバサロ…は無理でも行けんだろ!?」


と自分ひとりに押し付けられたと思ったシグが必死に喋る。その慌て様にみんな笑顔になった、もちろんティトも

バサロだけちょっと悲しそうだった


「僕はちょっとやりたい事があるので、月光蟲の方は任せます」


と言ってアズーは大広間から出て行った


「なんだよアイツ」とシグは言うが


「きっと何か考えがあるんだよ。天才科学者を信じて俺らは虫捕りだ」


とカザはシグの胸のあたりを軽く叩いた



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