表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
砂鯨が月に昇る夜に  作者: 小葉 紀佐人
漢たちの砂海
23/93

7-4


酒場に着くと案の定みんな終わっていて、唯一驚いたのはそこにシグがいたことくらいだ


「こいつら一体何なんだ?」


とガンザが聞く


1人意識のある男は黙って俯き話す気は無いようだ


「さっきティトは帝国って言ってたよね?」


とティトに聞くカザ


「うん、首の刺青が帝国の紋章と同じだった」


「なるほどな。店主、砂バァに無線連絡係のやつを1人連れてこいって伝えてくれ」


そうナザルが言うと、酒場の店主は電話で砂バァの所へ連絡しようとした時だった


酒場の扉を勢いよく開けてアズーが入って来た


「はぁはぁ、ここに居た!大変だ!今隣町の行商人からアルミニウムを受け取った時に聞いたんだけど!はぁはぁ」


と慌てた様子のアズーに肉屋のルウは落ち着けとコップに入った水を渡す

それを一気に飲んで話を続ける


「2つ向こうのアルルの街が大黒海って巨大な腐者に街ごと飲まれたって!」


それを聞いたティトとカザ、そしてナザル達も息を飲んだ


シグだけが分からず「大黒海って何?」と聞いてきたのを答えたのはナザルだった


「俺も噂でしか聞いたことなかったが、大黒海ってのは腐者の集まったものらしい。そいつにはオアシスがあるとか岩の上だとか防壁があるとか、そんな事は御構い無しに全てを飲み込む災厄だと…」


カザはナザルが知っていた事に驚いたが、他の大人たちも知っている様だった。その時分かった。俺やシグやアズー、バサロもきっと子供達には教えないことになっていたんだろう。あるかどうかもわからない、もしあったとしてもどうしようもない事だからだ


「店主、連絡はいい。俺たちが砂バァのとこに行く。大黒海の件もあるしな」


と捕まえた帝国の男たちを運ぼうとした時だった


「…お前ら多少腕が立つ様だが、クックック、大黒海は防げない。アレは神の与えた罰だからな」


意識のある男は続ける


「せいぜい抗え砂の民、そこにいる空の民と同じ運命を辿りたく無かったらなぁ!!」


そう言いケタケタと笑う男


何も言い返せず涙ぐむティト


「てめぇ!!」と飛び出したカザを慌てて抑えるナザルとガンザ

その男はガチッと奥歯を噛むと、口から吐血して倒れ、いつの間にか意識を取り戻していた帝国の連中も次々に吐血する


「…軍人か」


首に手をやり脈が無い事を確認したナザルはそう呟いた


「とにかく砂ババ様の所へ急ぐぞ!」


バサラは一刻も無駄に出来ないと、みんなそれに従って店を出て行く


悔しくて、何も出来ず、何も言えなかった

、そして大黒海という幼い頃に刻まれた恐怖でティトは歩き出せなかった


バサラとシグはティトに声をかけようか迷って、しかし何も言わずに店を出て行った


カザはティトの側にいた


側にいるだけでティトの気持ちが伝わってくる様でなかなか声がかけられない


「…ティト…こんなことに巻き込んでしまって、本当に言葉も見つからない。ごめん。俺も分からない事だらけでどうしたらいいかも分からない。けど、これだけは分かるんだ…今立ち止まってしまったらきっと後悔する。大丈夫だ!俺がいる!みんなもいる!俺は約束する!君を必ず故郷に帰すと!ここに誓う!!」


そう言ってティトの手を取りカザは自分の胸のあたりに押し当てる


「…馬鹿、巻き込まれたなんて思ってない。わたしだってあの時とは違う!みんなの力になれるか分からないけど、正直怖いけど、…行くよ」


自分を鼓舞する様に言葉にしたティトの目には力が戻り、カザと一緒に歩き出した



「…約束だからね」


砂バァの家へ向かう真っ直ぐな道で


ティトはカザに聞こえない声で囁いた



…2人が出て行った酒場に残された店主と数人の客は口々に「いいもん見れたなぁ」「求婚している様だった」と言い、これが後に波乱を呼ぶ事になるとは誰も知る由もなかった


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ