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砂鯨が月に昇る夜に  作者: 小葉 紀佐人
漢たちの砂海
21/93

7-2


しばらくしてバサラ達は大型帆船をゆっくりと進め出した


あの後、何か事情があるんだろうと、ティトに声をかけずにそれぞれ作業をしていた


「おぅ、そうだ。お前らちょっと」


とナザルはガンザとルウを連れて操舵席のあるバサラのもとへと連れて行く


あの4人は昔から仲が良いそうだ

そう言えば普段は漁に来ない肉屋のルウまで来てるのは変だと思いながら、カザは横でしゃがみ込んで泣いているティトの背中をさする


「バルウに戻る前に話とこうと思ってな」


とナザルが言うと


「あぁ、わかってる4人か?」


とガンザ


「いや、6人。離れた街の外れに2人いた」


と肉屋のルウ


「いつやる?」


とバサラ


「帰ったら酒場の4人をガンザとルウで見張っててくれ、外の2人は俺とバサラで連れてくる」


ナザルはそれぞれを指差しながら確認する


「わかった、その合図で俺とルウで後ろを取る」


ガンザはルウと軽く拳を打つとバサラとナザルも拳を差し出し軽く打ち合う


「一応守護隊のオーキには俺から伝えておく。船をしまうついでにな」


とバサラが言うと、みんなそれぞれの作業に戻った


離れて少し聞こえていたバサロとカザはお互いに目を合わせ、カザは「何のこと?」とバサロに口パクで聞くが、バサロは分からないと首を横に振った


もう後半分程で街に着くくらいでティトが顔を上げた

目の周りは泣き過ぎたせいで赤くなっている


「…ごめんね急に、もう大丈夫。ありがとう」


と照れ臭そうに笑うティトに、カザは自分の頬をかきながら


「べ、別になんも。あ、そうだ」


と腰袋に入っていた水筒を取り出しティトに渡す


ティトは少し飲んだ後、一気に全部飲み干した


「へへっ、飲んじゃった」


と空の水筒を返す


「あぁ!…ま、まぁ良いけど」


と水筒をしまう


しばらくぼーっと空を眺めた


「…私の住んでる砂漠に…砂鯨はもういないの。カザは『大黒海』って知ってる?」


「ごめん、分からない」


「大黒海は腐者の集合体…砂漠が黒く飲み込まれて行くの。…昔、私がまだ小さかった頃はまだ砂漠に住んでたんだけど、大黒海に襲われて無くなってしまって、だから空に逃げたの」


カザはティトの話しを聞き続ける


「その後からだった、砂鯨が段々減っていって、いつの間にか砂漠から消えてた」


「それでティトは1人で探してたんだ?」


「うん。まさかまだこんなに砂鯨がいたなんて信じられなくて」


「そっか」


ティトが抱えていることに対して、何も言ってあげられない自分が情けなく思えた


「おーい、そろそろ着くぞー」


とナザルに言われ立ち上がると、砂の街バルウが遠くに見えた


「早く帰ってみんなに伝えなきゃ。砂鯨はまだいたよって」


少し元気が戻ったティトは船の手すりに両肘をついて外を眺める


「アズーがなんとかしてくれる。大丈夫」


と同じ格好でカザも外を眺める


「空に浮かぶ街かぁ〜見てみたいな。とゆうか一個聞いて良い?」


「何?」


「砂鯨がいなくなったのに空を飛ぶための腐石はどうやって集めたの?」


聞こうか迷ったけど、素直に聞いた


「街の近くに遺跡があって、そこの貯蔵庫に沢山の腐石が眠ってたの。今でも一年に一回その街まで降りていって物資を積み込んだりするの。ちょうど今はその最中で、後数日にはまた空に戻るんだ。一緒に行く??」


そう聞かれて嬉しかった


「行ってみたいな…親父に聞いてみるよ」


「うん!」


そこまで話してちょうどバルウの門をゆっくりとくぐり、入ってすぐの所で停船した

そこには既に魚屋がチョリを受け取る準備をして待っていた


「よぉーし!積荷を降ろすぞ!」


とバサラが言うと、船から降りて船底の扉を開けてチョリを受け渡す


「ティトちゃんありがとうな!後はやっとくから先に帰っててくれ!」


そうナザルは言いながら、カザの目を見て「任せた」と合図する


船を降りたカザとティトは、砂バァの所へと歩き出したのを少し心配そうにバサロは眺めるが、すぐに受け渡しの手伝いに戻る


カザとティトが広場近くの酒場を通り過ぎようとした時だった


「空賊の娘が何故ここにいる」


路地の裏から声をかけられ立ち止まって見ると、砂の民の格好はしているが見慣れないフードを被った男がこっちを…とゆうかティトを睨みつけている


カザはティトの前に出て「…誰だ!」と警戒して問いただすが、ティトの後ろにフードを被った同じような男が2人現れ路地の裏へ行けと刃物をチラつかせて促す

仕方なく路地裏に入り、街の外れまで連れて行かれる


「この街でこんな事してタダで済むと思うなよ」


そうカザが言うと、1人の男がフードを外しコートを脱ぐ


「タダで済まないのはこの街の方だ」


迷彩のズボンにタンクトップ姿の男の腕には刺青があり、それを見たティトは顔を青ざめる


「…帝国が何で」


「帝国?帝国って何?」


とティトに聞いたが、彼女の身体は震えていた


「お前が知る必要は無い。その娘が余計なことを言う前に殺す」


そう言って腰からマテーチェと呼ばれる鉈を引き抜くと、逆手に持って襲ってきた


カザは背中の狩猟銃を素早く取り出しガシャンっと狩猟棍に変形させると同時に男の一太刀を受け止める


しかし後ろの2人もコートを脱ぎ捨て刃物を振りかぶっていた


「ティト!!逃げろ!!」


叫ぶが間に合わない


その時だった


後ろから襲って来ていた2人が後ろへ吹き飛んで行く


「バサロには感謝だなぁ」


「俺の息子は感がいい、俺に似てな」


ナザルとバサラが立っていた


おそらく襲って来ていた2人を投げ飛ばしたんだろう、広場まで吹き飛んでいった2人は身を翻してうまく着地する


「そっちは任せた」とナザルが言っている時にはバサラは走り出していた

遅れて走り出すナザル


カザは目の前の敵に視線を戻し、これならやれると受け止めていた刃を力を抜いて受け流すと同時に相手のみぞおちに蹴りを放つ

吹き飛んだ男は近所のゴミを入れておく大きな鉄製のゴミ箱にぶち当たると膝をついてカザを睨みつける


「…小僧ぉ!!」


油断してモロに蹴りをもらった事が余程屈辱だったのか、目を血走りながら立ち上がる


「ティト、大丈夫だから」と後ろのティトに声をかけ、数歩前へ出ると同時に左右にくるくると狩猟棍を回し、流れるように頭の上でも回し、そのまま腰に下ろしてピタッと止めると同時に左足を前に左の手のひらを相手へ向けて構える


不動の構え


相手もさっきの一撃とその一連の流れが素人のソレとは違うと分かり少し冷静になる


身体の力を抜いて軽くピョンピョンとジャンプし始め自分のリズムを作り始めた

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