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砂鯨が月に昇る夜に  作者: 小葉 紀佐人
漢たちの砂海
20/93

7-1


街をあげての結婚式も最後ミゲルとクシナがみんなに見られながらの誓いのキスをして幕を閉じた


なんだかんだで連れて来てしまったティトは砂バァの家で面倒を見てくれることになったが、仲良くなり過ぎたクシナが初夜そっちのけで最後まで一緒に住むとごねた時はみんな困った。特にミゲルが。


アズーはとゆうと、俺のジャリハートそっちのけでティトのエアリードに夢中だった

何でも「アルミニウム」とゆう金属で出来ているらしく砂の街バルウに今無いとのことで、他の街から取り寄せてからでないと修理出来ないようだ



一夜明け


朝の鍛錬を庭先で頑張るカザ


昨夜まで呑んだくれていた筈のナザルも横で「気持ち悪りぃ」とボヤきながらも打棍技の型を一緒にやる


雨の型


砂の型


そして雨の型


流れるように型をスイッチしていく


一連の流れはその日その日で違う為、カザがリードする日もあればナザルの時もある。今日はナザルが調子悪いのでカザがリードしてる


ようやく終わったところでバサロと父親のバサラが来た。バサラはバサロがまだ小さく見えるほど大きく、顔はそっくりだがバラサにはアゴ髭がモッサリ生えている


「おうおうやってんな!」


「おう!バサラ!もう行くか?」


と汗を拭きながら聞くナザル

ちなみにナザルはバサロと同じくらいの背丈で、バサロやバサラとは違った格闘家の筋肉でバッキバキの体格をしている

シンプルな力だけではバサラには敵わないと前にナザルは言っていたが、ナザル自身喧嘩で負けたことは一度も無い。唯一互角に闘えるのがバサラくらいだと


「おう!もう船も準備してある!ガンザとルウにはさっき声かけといたぜ!」


ルウとは肉屋の亭主だ


「わかった、直ぐ行くから船で待っててくれ」


とナザルとカザは家に入り着替え始めた


支度も済んで街の入り口まで来ると大きな帆船が準備されていた

昔はこれをサンドシップと呼んでいたが、時代も変わり、腐石で走るものをサンドシップと呼ぶようになった

この大型帆船は主に砂魚の漁に使われていて、大量に砂魚を積み込める利点がある。欠点があるとすれば、風の無い日は進まない。それを補う為に何台かのサンドシップも付いて行き、風が無くなってしまった時はそれに牽引してもらう


「ねぇどこに行くの?」


後ろから突然声をかけられ驚いて振り向くと、砂の民の格好をしたティトがいた


「おぉ!ティトちゃんじゃねぇか!一緒に行くか?」


「これからチョリの群れの漁に行くんだ」


とナザルとカザが言うと嬉しそうに「なにそれ楽しそーだから行く!」と一緒に船に上がる


甲板に上がると、こないだサンドワームの時一緒だったガンザが気だるそうに出航の準備をしていた


「おぅ、ナザルにカザ!…あ?なんか1人増えてるぞ?」


とまだ眠そうな目を細めてティトを見る


「空の民のティトちゃんだ!船から落としたら承知しねぇからな!」


とガンザに言うナザル


「んなもん知るか!落ちたらそりゃ…カザが悪りぃだろ」


「あぁ、そうか。カザ、ティトちゃんから目を離すな」


「何でそうなるんだよ!」


とツッコミを入れるカザだったが


「よろしくぅ〜」と肩に手を置いて耳元でふざけるティト


「ぶぁっはっは!冗談はそこらへんにしてほらもう出るぞ!」


と一連のやりとりを見ていたバサラが笑顔でそう言うとバサロと肉屋のルウが力強く縄を引き帆を張り、風を受けた大型帆船はゆっくりと動き出した


街を出て風を大きく受けると大型帆船はどんどんと速度を上げ、その両脇にサンドシップが一台づつ付いて来ていた


「凄い凄いっ!これ風だけなんでしょ?」


ティトが砂の上を走る大型帆船から身を乗り出して船底の方を覗き込むのを慌てて腰を掴んで落ちないようにするカザ


「ぶぁっはっは!昔からこうして砂の海を渡ってきたからなぁ!お前さんみたいなのは珍しいよ!」


照れ臭そうに笑うバサラとその横で微笑むルウ


「ちょっと落ちる!落ちるから!」


とティトを一生懸命引っ張るカザ


「わったしーがおっちたらぁ〜おっこら〜れるぅ〜カザがっ!おっこら〜れるぅ〜カザがっ!」


とゆう謎の歌を歌い始めるティト


「このバカ、マジで…うわっ!」


突然の揺れに体勢を崩したカザはティトと一緒に宙に浮き、帆船からはみ出し、後はもう落ちるだけとゆうところでガシッとバサロに掴まれ助かった


「あははははっ!!落ちるかと思ったぁ!」


とケラケラ笑うティト


「助かったよバサロ」


と胸をなで下ろすカザ


「若いってのはいいねぇー!」


とやっかみを入れるガンザ


「っと、そろそろじゃねぇか?」


と手で日差しを遮りながら見渡す限りの砂漠の何かを探すナザル

すると遠くの方で何かがピョンピョン飛んでいる


「来たぞ〜お前ら位置につけ!!」


とバサラがみんなに指示を出すと、甲板に備え付けられた銛を射出出来る台座の後ろに立ち、銛につけられたロープがしっかり固定されているかを確認する

そのロープは台座の前に綺麗にまとめられた網と繋がっていて、銛を放つと網ごと飛んでいく仕組みになっている


ピョンピョン飛んでいる何かに近づくと、それが砂の上をジャンプしながら移動するチョリの群れだとわかった

その群れと進行方向を平行にするバサラ


「よしっ!お前ら狙いは良いな!?」


と確認すると、銛をいつでも打てると合図する


「打てっ!!」とバサラが叫ぶと一斉に銛は放たれ、チョリの群れを通り越した先に落ちてゆく

するとピョンピョン飛んでいたチョリも、砂に潜っていたチョリも網に絡みとられていく

それを確認したバサロは帆をたたみ、大型帆船の速度を落として停船した


「よーし!引き揚げるぞ!」


とガンザとルウは網につながる滑車のハンドルを回して網を手繰り寄せて甲板に上げていく

新鮮なチョリが次々に上がるが、いっぺんには無理なので一旦途中で止めて1匹づつ網から外してゆく

カザは外したチョリを甲板の床にある扉を開けて貯蔵室へと放っていく

ティトもそれなら出来るとカザを真似てチョリを網から外すが、暴れるチョリに苦戦していた


網も引き終えて、おそらく200匹ほど捕まえられただろうか

あまり砂漠に止まって長居すると腐者が来るので、また帆を張り進み出そうとした時だった

少し離れた場所から砂が高く舞い上がる


「おぉ、こいつはスゲーな」


とナザルが目を奪われながらつぶやく


それは20頭近くいただろう

砂鯨の群れだった

普段砂鯨は5〜8頭ほどの群れで生活しているが、こんなにまとまって行動する砂鯨はここにいる誰も見たことが無かった



「こんなに…まだこんなに……居てくれたんだ」


そう言ったティトを見たカザは、息を呑んだ


ティトは


泣いていた


溢れ出る涙が抑えられず顔を手で覆い


むせび泣き始めてしまった


カザは


言葉をかけることも出来ず


ただ彼女の隣にいることしか出来なかった


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