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砂鯨が月に昇る夜に  作者: 小葉 紀佐人
忍び寄る影
19/93

6-3


薄暗い天井は高く、壁や床は一面大理石が敷き詰められた奥行きの長いその部屋に入って来たのは初老の男だった


ゆったりとしてはいるが、所々にキラキラと光る小さな宝石が散りばめられた白い服を着て、頭には黄金で出来た細いクラウンを額のあたりで被っている


初老の男の歩きに合わせて、床や壁の大理石の隙間が淡く光り、その部屋全体を照らしていく


その後から2人、並んで部屋へ入る


1人は12歳くらいの少年で、初老の男と同じような白く上等な服を着てその上着は地面に着きそうな程丈が長く、途中から入るスリットのせいで、ヒラヒラと後ろへなびく


もう1人はかなりの大男で髪はツーブロック、身長は2メートル以上。背が高いのもさることながら、服を破りそうな程の筋肉が目立ち上は黒のタンクトップ、下はタンカラーの迷彩のズボンを履いている


初老の男は一番奥に大理石で出来たそびえるような長い背もたれのシンプルな椅子に座り、その前に跪く2人


白い服の少年が口を開く


「皇帝陛下、西の砂漠への強襲走行列車。ただ今目標を捜索中ですが、未だ発見できずとの報告が入りました」


「…そうか……まだ時期も早い。ゆっくり探せ」


そう言うと世話係と思われる美しい容姿のメイドが赤よりも紫色に近い飲み物をグラスに注いで皇帝陛下と呼ばれた男へ差し出す


「時に我が息子ラウル」


「はっ!」


「そなた砂漠への遠征はまだだったな」


そう皇帝陛下は言って飲み物を一口飲む


「はい、国内の民への再教育を最近までしておりましたので」


「そうだったな、それで?何人殺した?」


グラスの液体を回しながらそれを光に透かして眺める皇帝


「今年は300人程かと」


「まだそんなにいたのか。まぁこれでしばらくは静かだろう、…ラウルよ。西の列車に行って指揮を取れ」


そう皇帝に言われたラウルとゆう少年は、大理石についていた右の拳をギリギリと握ると「…かしこまりました」と返事をしてこうべを垂れる


「ヤヒム、そなたの方はどうだ?」


全身筋肉男の方へ声をかける皇帝


「上手く潜り込めたようですわ。手練れを用意致しましたので、何かあれば内側からグチャグチャに出来るでしょう」


ヤヒムはオカマだった


「そうかそうか!、バレるかなぁ?バレないかなぁ!?クヒヒッ、ヤヒムはいつも楽しませてくれるな!」


手を叩いて子供のように喜ぶ皇帝


「…しかしまだだ。一つ一つ、壊して、潰して、染まっていかないと」


悦に入り、口から漏れる先ほどの飲み物を気にする様子もない皇帝は立ち上がり、座っていた椅子の長い背もたれに抱きついてフゥーフゥー呼吸を荒くする


その様子を、部屋の隅で見ていた何人かのメイドの1人が持っていた銀のトレーを床に落とす


部屋に響き渡る音


慌ててそれを拾ったメイドは「申し訳ございません!申し訳ございません!!」と震えながら跪いて赦しをこう


「……駄目だ。後で私の部屋に来い。」


皇帝の部屋

そこに入った者は二度と帰ってこない


そう皇帝に言われたメイドは、「あ…えっ……イヤっ!ごめんなさい!!もう二度と!二度としませんから!!」と半狂乱になりながら謝るが、他のメイド達に強引に連れていかれた


残ったメイドの1人が、皇帝や他のメイドにも聞こえないような声でつぶやく


あの子は終わり


私は大丈夫…


私は大丈夫…


私は大丈夫…


私は…

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