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砂鯨が月に昇る夜に  作者: 小葉 紀佐人
忍び寄る影
18/93

6-2


陽が落ちて結婚式の広場にトトの脂の火が灯り、祝いの宴はまだまだ終わらない


結局レースに勝ったチームから高級魚ドドチョの刺身がミゲルとクシナに捧げられた

昔からどのチームが勝っても新郎新婦に捧げることが通例になっていたが、どうせあげるのなら俺達からあげたかった


あの後ティトを結婚式会場の広場まで連れていくと広場中の人達が寄ってたかって俺を冷やかし、ティトが可愛いとクシナや他の女子達にさらわれて行き、今ミゲルの席だった場所にティトが座って女子達で盛り上がってる


ティトが何気無くパクパク食べてるのは高級魚のドドチョだからな?

新しい夫婦が食べるやつなんだけど…

あっ!また食べた!


「おいおいカザぁ、いつ彼女なんか作ったんだよ!」


離れた席でトトの照り焼きをかじりながらボーッとティトを見ていたカザの横に、信じられないくらい酒臭いナザルが座る


「酒豪対決はどうなったの?」


とはぐらかそうと違う話を振る


「俺が優勝したに決まってんだろぉ!?他はダメだぁ、ミゲルを見てみろ〜」


と指差した方向を見るとミゲルが地面に転がされている

あの人が今日の主役

多分今ここにいる人の中で1番不幸な人物であることは間違いないが、しばらく寝たら起きるだろうと放っておく


「シグ達はどうしたんだよぉ?」


とあたりを見回すナザル


「シグは見晴らし台でアズーはジャリハートとティトの乗って来た乗り物の修理でバサロは今あそこで腕相撲させられてる」


と視線を送ると、大人達に囲まれて腕相撲大会が勝手に始まっていた

ベロベロに酔っ払った先日サンドワームの時の救援部隊のおっさん達を秒殺するバサロ


「後で俺もやろうかなぁ」


「大人気ない。バサロはまだ10歳!」


「わぁーってるよ!」と手のひらでペイペイしてやらないとジェスチャーする


「で!?いつから彼女なんか出来たんだ?」


くそっ、まだ覚えていやがった


「彼女じゃない。ティトはレースの時偶然助けただけ。困ってるから連れて来ただけ」


「なるほど…あの子は、空の民か?」


「誰かから聞いたの?」


タバコに火をつけて紫煙をふかすナザル


「いや、昔同じような格好とあの乗り物を見たことがあってな。遥か東の砂漠まで行った事があったんだ…探し物があってそこまで行ってはみたが、それは見つからなかったんだ。その時に偶然空の民に会ってな。気の良い奴だった。帰って来てそれを街の奴らに話したらだーれも信じねぇんだ!空なんか飛べるかっつってバカにしやがって!あの時ぁ暴れたね!あー、今思い出しても腹が立つ!」


親父は昔のことをあまり話してはくれないので素直に嬉しかった


「まぁ、それはともかくアズーが船を直すまではここにいるんだろ?」


と、まだろくに何もティトと話せていないので「多分」とだけ返事をすると


「じゃあ仲良くやるんだな!」


そう言うと立ち上がり、酒が足りねーともらいに行こうとしたが急に立ち止まる


「あぁ、そうだ。昨日の『打棍技』…あの感覚を忘れんな。そうすればお前は誰にも負けねぇ。」


それだけ言うと、ナザルは酒樽の方へと歩いて行く


カザは「ほどほどにしなよ」とその背中に言うとナザルは手を上げて応える


目の前に盛られたチョリの天ぷらをかじりなが、1人嬉しそうにその味を噛み締めていた


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