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砂鯨が月に昇る夜に  作者: 小葉 紀佐人
忍び寄る影
17/93

6-1



「砂鯨を…探してたの」


デモデモにエアリードをぶち壊されたティトを後ろに乗せて今砂の街バルウに向かっている


ティトが何故砂鯨を探しているのか、あの時聞けなかった

何か、凄く大切な事情があるんだと思った

だから街に着いて彼女が話したくなったらでいいと思ったんだ



「ねぇ、あれがバルウ??」


と考え込んでしまっていたカザにティトが聞く


「え?あ、そう!あれが砂の街バルウだよ」


「壁が凄いね!」


ティトは少し元気が戻ったみたいで良かった


レースが始まってから結構時間が経ってしまっていたので、ライトで見晴らし台に知らせると了解した合図が帰ってくる


バルウの門がゆっくりと開いた所に速度を落として入って行くジャリハート

すぐにシグ、アズー、バサロが駆け寄る


「おい!大丈夫だったか!?」


とシグは声をかけるがすぐ立ち止まり


唖然とする3人


「おいおい…こりゃ一体……。」


いぶかしげにカザとティトを見るシグ


「僕たちが心配して待ってたってゆうのに」


ちょっと怒ってるアズー


「か、彼女?」


思ったことを素直に口にするバサロ


「ちょっ、違うんだ!聞いて!ねぇ!」


あの後凄く心配した3人

女の子を連れて帰ってきたカザに、あぁ〜あっ!と呆れ返ったシグたちはくるっと回って結婚式の会場の方へ歩き出してしまう


「誤解してる!誤解だからっ!!」


まだ歩き続ける3人


「いや、お前ら!本当に!聞いてって!」


と必死に呼びかけると、ピタッと止まり振り返ると、ティトがジャリハートから降りて


「カザがね!助けてくれたの!」


そう言うと冷たい眼差しでティトとカザを見てくるシグは


「…へぇ〜、この可愛い女の子をカザが?へぇ〜」


「どうなんでしょうね、男の子だったら助けたんでしょうかね?」


とかぶせてくるアズーの横で、もうちょっと笑っちゃってるバサロ


「お前らホントいい加減にしろよなっ!!マジで大変だったんだぞ!」


と流石に怒りはじめたカザに3人はこらえきれずに指差して爆笑する

はめられたカザは「…コイツらっ!」と背中の狩猟銃を取り出しガシャンっと狩猟棍に変えると3人を追っかけ回す


キャーキャー言いながら逃げる3人


その姿を見てティトもクスクス笑っていた






ジリジリと照りつける太陽の下


6輪のサンドバギーが砂丘を走る


1人は数日前にカザを襲ったが腐者に仲間達が襲われ逃げていったリーダーであろう人物

頭にはヒカゲトカゲという体長2メートル以上ある日陰や砂の中に身を隠し獲物を見つけると襲いかかるトカゲの頭蓋骨を被っている


もう1人はそのリーダーの三分の一程度の身長しかない小さなゲグ族

髪が長くモジャモジャなのかバサバサなのかわからないが、身長の低さのせいで髪の量が多く見える

その頭にはトトの二本角のついた頭蓋骨を被っているが、まだ頭が小さい為少し傾いている


2人は遠い地平線を眺めながら、ただひたすらに砂丘の上を走っている


「…ガラムぅ〜…お腹すいたギャ」


「…もう3日もまともに食べてないガ」


リーダーと思われた男ガラムは、力無く応えた


「…村どこかなぁ〜」


「ゾイ、もう携帯食料は無いのガ?」


そう聞かれた小柄なゲグ族は、サンドバギーの荷台を見る

砂魚の干物のようなものがあった場所には乾燥して剥がれて落ちた皮が粉のように散らばっている


「…無いギャ」


とだけ言うと力無い目で遠くの地平線をぼんやりと見る


喋るのさえしんどくなってきた2人はサンドバギーをただひたすら走らせてゆく


……………。



……!?



地平線の向こうに細長い何かが動いているのが見える


「隠れるガ!!」


ガラムは慌てて砂丘の斜面に6輪のサンドバギーを隠して飛び降りると、砂丘のてっぺんで身を隠しながら双眼鏡を覗く


「あれは何だギャ?」


遅れてガラムの横まで来たゾイの頭を慌てて無理矢理地面に押し込む


「見つかったらどうするガ!あれは帝国だガ!!」


「帝国?」


「この砂漠から遥か北東にある巨大な帝国ガ。見つかったら殺されるガ」


ガラムの見る双眼鏡の先にはいくつもの砲台を装備した強襲走行列車が砂漠をゆっくりと移動していた


「何でこんな所にいるんガ………。」


しばらくガラムとゾイは帝国の強襲走行列車を眺めていると、それは突然止まり、何かに向かって砲撃を始めた


その弾道の先に双眼鏡を動かすガラム


「…デモデモ?」


帝国の強襲走行列車は、通りすがりの1匹のデモデモをまるで遊んでいるかのように攻撃し、瀕死の状態にまでして去って行った


「俺たちも人の事言えたもんじゃないガ…アイツらは人間じゃないガ」


横にいたゾイは帝国の圧倒的な火力に怯え、震えていた


「いくぞゾイ!」


そう言うと立ち上がりサンドバギーに乗り込むガラム


「ま、待ってギャ!どうするんだギャ!?」


慌てて助手席に乗り込むゾイ


「決まってるガ!デモデモをいただくガ!!」


「ガラムはあったまいいギャ!」


久しぶりの食事にありつけると横で小躍りするゾイ


6輪サンドバギーは、もう動けなくなったデモデモへと走り出した


……数分後。


羽根をむしり下処理を済ませたデモデモを焼く2人


「こんなに大きいのに食べるところが少ないギャ」


「帝国の奴らのせいでほとんど肉が残らなかったガ、我慢して食べるガ」


そう言って口に入れた

もともとデモデモの肉は筋張っていて、形容するとすれば「木を焼いて食べる」のと同じくらい硬く、とても食べれたものじゃないが餓死するよりかマシだと永遠に飲み込めないデモデモの肉を2人はいつまでも噛んでいた

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