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砂鯨が月に昇る夜に  作者: 小葉 紀佐人
空の民
15/93

5-2


「大丈夫?」


とゴーグルを外し口元の布を下げて顔を晒し、敵意が無い事を示すカザ


へたり込んで座っていた少女は、「うん」とだけ返すと立ち上がり砂をはらう


ちょっと待っててと少し先の方まで行ってしまったジャリハートを取りに行くカザ


少女はカザを見て同い年くらいなのかなぁと思いながら、待っててもしょうがないとカザの後をついていく


怪鳥デモデモの羽根は黒くボサボサであるが、尻尾の先にボサボサの羽根に隠れた白い羽根がある

そこに何故か神経が集中していて、かなり敏感な部分なのを知っている人は少ない

おそらくその白い羽根を砂に埋めて砂魚の動きを感知しているんじゃないかと言われているが、2人はそんなこと知らない


カザは怪鳥デモデモの後ろにあるジャリハートに近づこうとデモデモの横を通り過ぎ、後ろに周り、その白い羽根を踏んづけた


ギャギャギャギャァァァ!!


今まで聞いたことのない鳴き声を発してのたうち回るデモデモ


突然の事にびっくりして尻餅をつくカザと「なになになになに!?」と遠回りをしながらカザのもとへ駆けて行く少女


しばらく暴れたデモデモは急に静まり、ゆっくりとカザ達の方を見る

カザは立ち上がりゆっくりと後ずさり、少女は早く逃げなくていいの?と焦る

デモデモは体を前に倒すと、一枚一枚の羽根が逆立ちムクムクと体が丸く大きく膨らんでいく


「耳塞いでっ!」


「え!?」


「いいから耳塞いで!!」


そう言うとカザは自分の耳を塞ぎ、戸惑いながらもそれに習って少女も耳を塞いだ瞬間だった

それは音と言っていいのか分からない強烈な音波がデモデモから発せられ、周囲2〜300メートルの砂の中にいた砂魚が一斉に地表に跳び上がる


カザは昔砂バァから聞いたことがあった


「普段は馬鹿な鳥だと皆思うじゃろうが、怪鳥デモデモが膨らんだ時は気をつけるのじゃ。あやつの本気の鳴き声は鼓膜を破り三半規管を狂わせ、何も出来なくなった獲物を散らかしながら食べる。普段が馬鹿なだけに皆油断するが、絶対に侮ってはいかんのじゃ」


よく怪鳥デモデモが砂の街バルウの壁にぶつかって気絶しているのを馬鹿にしていたカザたちに砂バァが教えてくれたのをカザは忘れてはいなかった


手で耳を塞いでも塞ぎきれていないんじゃないかと思うほどの鳴き声に少し頭がクラクラしたが、デモデモは待ってはくれない


急いでジャリハートまで走りまたがると自分の後ろを指差して少女を乗せて勢いよく走り出した


完全に怒っているデモデモは羽根をバタバタさせながら全力で追ってくる

そのうち脚がフワッと浮き始め、飛翔する


「ちょっと!!どんどん近づいてくるよ!!」


振り返ると地面すれすれを滑空するようにかなりのスピードで追ってきているのが見えた


「なんだよアレ!!あんな飛び方見たことないよっ!!」


と困惑するカザ


「ねぇ!コレに何か入ってないの!?」


と勝手にカザの腰袋を漁り始める少女に「やめろバカ!勝手にいじくんなっ!!」と言うがジャリハートを操縦するので精一杯なため何も出来ない


「コレは?」とカザに見せる

「望遠鏡!」

「コレは?」

「干し肉!」

「コレは?」

「水筒!」

「もうっ!!使えないものばっかりじゃない!!」


と水筒の次に出した物にカザは


「それだっ!!それを音が3回鳴るまで回して!!」


と少女の持った閃光グレネードを捻るよう指示する


「え?…こう?」


とゆっくりカチカチカチっと捻る


「後ろに投げて目をつぶって!」


そう言われた少女はポイっとそれを投げるとカザの背中にくっついて目をつむった


ちょうどデモデモの目の前で炸裂し、強烈な光で目が眩んだデモデモは地面に転げ落ちる


アレだけまともにくらえばしばらくは動けないだろうと、2人はそそくさとジャリハートで逃げていった


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