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砂鯨が月に昇る夜に  作者: 小葉 紀佐人
空の民
14/93

5-1


10分程前まで遡る


砂の街バルウからかなり離れた東の砂漠に見慣れない鳥が飛んでいるように見えるが、それは鳥ではなかった


風に乗りながら優雅に飛んでいる真っ白な物体はブーメランのような形をしていて、くの字に曲がった部分を前にして飛んでいた


そのくの字に曲がった先端にコックピットがあり、中にはかなり前傾姿勢で座席にまたがるような格好をした人物が、機器類の中にある方位磁針や高度計を見ながら操縦する


上下が一緒になったダボついたインディゴ色のツナギ姿、頭には同じ色だが縁に沿って白い模様の描かれたバンダナをしているその人はコックピットから身体を起こし風にあたる


「ふぅ〜、さっすがにここまで降りてくると暑いね〜」


と上着のジッパーを少し下ろし、ゴーグルを外して遠くを見るのは、まだあどけなさの残る少女だった


「…アレなんだろ?」


と座席の横に置いてあったカバンから双眼鏡を取り出すと、気になった場所をじーっと見る


「あれ……動いてない?」


と独り言を言っていたその時だった


真下からの衝撃


危なく双眼鏡を落とすところだったとすぐにカバンに突っ込むと、前傾姿勢に戻り真下を確認する


グゲゲゲッ


見たこともない程アホ面の、翼の幅が8メートルはあるだろう巨大な怪鳥が機体を下から押し上げてくる


「うわっ!ちょっと!!」


逃げようと後部にあるスラスターを入れるが反応が無い。おそらく最初の衝突で壊れてしまったようだがそんな事を考える暇も無く巨大な怪鳥は下からぶつかってくる


「きゃっ、ちょっとあんた!!やめなさいよ!!」


と叫んでいると、願いを聞き入れてくれたのか下から巨大な怪鳥はいなくなった


ガリッ


嫌な音がした方を見た少女は声も出せずに絶句した


何故なら巨大な怪鳥が、片方の翼に噛り付きギョロギョロと飛び出た目でこちらを見ていたからだ


何を血迷ったのかそのままバランスを崩した怪鳥は、飛行する機体を咥えたまま砂漠へと落ちていった



…………………。



「…ん、………あっ!生きてる!」


数分の間気絶していた少女は機体から放り出され砂漠の上で目を覚ました


近くには墜落の衝撃で翼の折れた無残な機体と、頭から砂に突っ込んだ巨大な黒い怪鳥


「私のエアリードがぁ〜…」


と機体の前で膝をつき泣き始める


「あんた何してくれてんの!?」


と埋まった怪鳥に砂を投げつける


ボフンっと頭を引っこ抜いた怪鳥は、ここがどこだか分からず周りを見渡す


少女と目が合う


グゲゲゲゲゲゲェッ!!


と鳴き声を発し、翼をバタつかせて地団駄を踏む


慌てて立ち上がり走り出した少女めがけて突っ込んでくる怪鳥


「いやぁぁぁ!!」


と叫びながら捕まらないようジグザグに走ると、巨大な怪鳥はクチバシで少女がいた場所を突っつく


「ホントどっか行ってよっ!!私は美味しく無いっ!!美味しく無いからぁ!!」


と半泣きになりながらも怪鳥の突っつきを何とかかわして逃げる少女、砂漠に慣れていないのか砂に足を取られ、もつれて転がったりもするがその不規則な動きが良かったのか、怪鳥のクチバシは空を切る


グゲゲゲゲゲゲェッ!!


ボサボサの巨大な怪鳥は段々イライラしてきたのか攻撃に勢いを増していき、しまいには体ごと砂に突っ込む始末でその度に砂が舞い上がり少女の恐怖は増して行く


「きゃぁぁぁぁああ!!いやぁぁぁ!!」


走って転んで叫んで体力ももう本当に限界だと思い始めた時、怪鳥のクチバシが少女の背中めがけて振り下ろ…


バキンッとゆう音と共に怪鳥が後ろへ倒れる

少女は走って逃げていた方向を見ると、何かの乗り物に乗った人物がこちらに銃を向けていた。多分発砲した弾が怪鳥のクチバシに当たったんだろうと思い振り返ると、ジタバタしながらも立ち上がろうとする怪鳥を見てまた走りだす


「避けろっ!!」と何かに乗った人物が叫んできたのですぐに左に避けると、走りながら乗り物の上に立ち上がり、さっき構えていた銃を一瞬で長い棒に変形させるとその勢いのまま高く飛び上がり、まだ立ち上がりかけている怪鳥の頭部に強烈な一撃を放った


その一撃で怪鳥は気絶したようで、息はしているものの立ち上がろうとはしなくなった



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