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砂鯨が月に昇る夜に  作者: 小葉 紀佐人
地を這う者の生態
10/93

3-4


ガシッと両足を掴まれる感覚


「あぶねー登場だな!カザ!!」


地面すれすれを宙吊りの状態で足もとを見ると、ナザルとバサロが小窓から腕を伸ばし片足づつ掴んでくれていた

バサロはカザ達が来てくれた事がよほど嬉しいのかニコニコと笑っている


「よし、バサロ!このままコイツを上まで投げるぞ」


そう言うと2人は腕力だけでカザをぶん投げ、カザはくるくると回り車両の屋根にシュタッと着地した


そして後方を見る


サンドワームは大きな口を開き、ジリジリと迫ってくる



幼い頃からナザルに教えてもらった力


打棍技


昔ナザルが稽古してくれてた時の声が頭に蘇る


「不動の構え」


背中の狩猟銃を取り出し横にあるスイッチを押す


ガシャンっと変形し長くなり、棒のようになった狩猟銃『狩猟棍』を脇に構え、左足を前に出して腰を落とし、目をつぶりゆっくりと呼吸を整える


「基本動作は突き、払い、突き。とめどなく打ちつける雨のごとく、早く細かく。これが」


『雨の型 時雨』


サンドワームは細かいトゲトゲした歯がびっしりと並ぶその奥の喉から先程と同じ様に半透明な触手を出すと、カザに向けて伸ばす


目を見開いたカザは素早く前進すると、襲ってくる触手を狩猟棍で突き、払い、また突いてを繰り返し打ち倒してゆく

打たれた触手からは白い液体が飛び散り、先っぽが変形してしまっているが、ぽこんと元に戻りカザに巻きつこうと伸びてくる


突き、打ち払い、触手を避けては突いてを繰り返す


時折奇声を発しながらも襲う手を休めないサンドワームだったが、心なしか後ろに後退し始めているのをシグは見落とさなかった


「カザぁ!!効いてるぞ!!そのままいけぇぇぇ!!」


「そうです!いけます!やっちゃってください!!」


とアズーも叫ぶ


「…が、頑張れカザっ!!」


と普段あまり声を出さないバサロも車両の中から応援する


他の救援部隊の連中も「いけぇぇ!!」「やっちまぇぇ!!」「うゔぉぇぇぇ!!」と声援を送るなかミゲルだけ飛び散る白い液体を見てまた吐いている


ジリジリと後方まで押しやるカザの猛攻にサンドワームの触手もあからさまに弱ってきている


「時雨だけでは決め手に欠ける。そんな時の大技」


『砂の型 大砂嵐』


カザは構えを下段から上段に変えると、狩猟銃にあるサイトと呼ばれる銃口の真上にある照準器を触手に引っ掛けて、そのまま屋根に突き刺す

めり込んだ触手から狩猟棍の先端を引き抜くと、ピンッと張った触手に足をかけて駆け上ってゆく

それを阻止しようと触手で止めようとするが、流れる様な動きでかわされ、突かれ、打ち落とされ、最後には全ての触手でカザを飲み込もうとした

しかし、カザは強く踏み込み触手向かって真っ直ぐに跳躍すると、体を捻り回転させてまるで竜巻の様に風を切って触手に突っ込む


無数に切り刻まれ飛び散る触手と切り口から白い液体が噴き出す


これは流石にたまらないとサンドワームは砂列車を追うのを諦めて砂の中へと逃げてゆく


回転を止め、空中に放り出されたカザは砂の上にボフンっと落ちる


「やったぁ!!やりやがったぁ!!」


と子供の様に喜ぶ救援部隊の連中とは別にすぐさま落ちていったカザのもとへ向かうシグとアズー


脇のあたりまで砂に埋まり少しバンザイしてるような格好になってしまったカザと目が合う


遅れてバサロも来て目が合う


ぷっ


と誰かが吹き出したのをきっかけにみんな腹を抱えて笑い出した


「何だよその格好、ぷっはははっ!!」


「勝ったのに降参ですか!?あっはっはっ!!」


そう言いながら引き抜こうと引っ張るシグとクスクス笑いながら手伝うバサロ

それを指差して笑うアズー


「お前ら!!笑うなっ!!」と言いながら自らも笑ってしまうカザ


「やべー抜けねー!ぶぁはっはっは!!」


もう笑って力が入らないのか、しりもちをつくシグとバサロ

それを見て泣きながら笑うアズー


停車した砂列車の屋根の上からその光景をタバコをふかしながら眺めるナザル


「…すげーよ……お前達の息子は」


そう言いながら口元を少し緩めた

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