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勇者の代わりは剣神様  作者: 冬空孫久
7/20

護衛、手紙

翌朝_____



「やっちまった……」


俺は後悔していた。昨晩、少しなら大丈夫だと眠ってしまった自分を。


結局、朝まで眠ってしまった。



「夜中に町を出るつもりが……」




いや、待てよ。別に夜じゃなくても良いのでは……?


俺はまだ今日部屋から出ていない。俺が朝までこの町にいたことを証明できる人物はいないのだ。

もちろんカフィ達にも会ってないし、俺なら町の外まで「《瞬間移動》」できる。


………これは……いけるのでは…?


「レストさーん。おはようございますー。」


突然、ドアの外で声が聞こえた。


うおっ!…全く、驚かせるなよ、カフィ……


「レストさーん?あれ?いないんですかー?」


いますけどいません。


「それともまだ寝ているんですかー?」


起きてます。


「それとも、女の人を連れ込んで……

「連れ込んでねえよ‼︎」


さらっと恐ろしいことを言うな!


「ふふふ、冗談です。やっぱりいたのですね、レストさん。」


はっ!……やられた…

なんて恐ろしい女だ。


「で、なんの用だ?」


俺はドアを開けて、そこに立っていた青髪の少女に言った。


「朝食をとりにいきましょう。」

「ああ……ん?」


俺の視線は宿屋の廊下の奥にいる2人の黒服の男を捉えていた。全身黒づくめだから、男かどうかは知らんが。

その2人が、こちらに向かって何か構えている。

あれは……


「ファイアアロー」

「ライトアロー」


攻撃魔法!


「カフィ‼︎」

「え?」


俺はカフィの手を引き、部屋に転がり込んだ。


直後、部屋の前の廊下に、2本の魔法の矢が突き刺さった。1本は眩く輝き、もう1本は燃えている。


「あの野郎共…」

「レストさん?」

「無事か?」

「は、はい。大丈夫です。」


追ってくるか…?


タタタタッ


廊下を走る音が聞こえる。

くるか。


俺は〈影斬〉を手に取る。


部屋の前に、黒服の男が現れた。1人だ。


「ライトア__

「遅えよ」


男が魔法を放つ前に、俺はそいつの腕を斬り落とす。そして、首を斬る。


もう1人は___


「ファイアアロー」


右から矢が飛んでくる。

俺はその矢を躱し、飛んできた方を見た。もう1人は最初に矢を飛ばした位置にいた。


「ファイアアロー」


その魔法を放ったのは、男ではなかった。炎の矢は的確に黒服の首を射抜いた。


「お前、魔法使えたのか。」

「はい!火属性は中級まで、水と回復は上級まで使えます。」


たった今人を殺したというのに、何やら嬉しそうだ。冒険者って恐い。


そこへ、護衛のファレスが来た。護るべきお嬢様が狙われてたってのに……こいつもしや無能では?


「お嬢様⁉︎なぜここに?」

「レストさんを朝食へ誘いに来たのです。」

「どうやって部屋を出たのです⁉︎私は昨日の夜からずっと部屋の前に立っていたのに!」

「窓からこっそり……すみません」


そんなことなかった。ごめんファレス。


「はあ…無事だったから良かったものの…今後は勝手に部屋を抜け出すのは控えて下さい。」

「はい。反省しています。」


絶対してないな、あいつ。


ファレスが俺の方を見た。


「また助けられたな、恩にきる。」

「いや、あんたこそ大変だろうよ。」

「私は貴方を疑い過ぎたかもしれない。これから、王都まで共に旅をする仲間として、よろしく頼む。」


ちょっと待て。何故俺が護衛になってるみたいに話してんだ。

「俺護衛するなんて一言も言ってないぞ。」

「「え⁇」」


ファレスとカフィの声が揃った。


「一度も言ってません。」

「じゃあ今言って下さい。」

「イヤです。」

「何故だ!何故断る!これから王都まで、いや、その先もずっと、一緒にお嬢様をお守りしていこうじゃないか!」

「俺は護衛もしないし、その後騎士団にも入らん。」

「な ぜ だぁ〜〜‼︎」


ファレスが泣きついてきた。は?


「だぜだんだあ〜!何故ぞんなに嫌がるんだよぉ〜!」


うわっめっちゃめんどくさくなったな、こいつ‼︎


「何事ですか⁉︎」


ネメスさんがやってきた。


「この状況は一体?」

「ああ、なんか護衛やらないよって言ったらこうなった。」

「え?…」


「いやだから護衛やらない……」


ネメスさんはその場で固まっていた。


「はあ⁉︎なんでどいつもこいつも俺に護衛やらせようとすんの?なんで?」


「レストさん…王都まで一緒に……旅……」


カフィまで泣きそうだ。


「お、おい泣くなっての。」

「だって…断るって……ぐすっ」


……………………仕方がないか。


「あーーもうわかったわかった!やるから!護衛やるから!」

「……本当ですか?」

「本当だ。無事にお前を王都まで送り届けてやる。」

「…ぐすっ……やったぁ…」


何故泣く⁉︎

人間ってこんな面倒だったっけ?


「いやーありがとうございます。報酬は弾ませて頂きますよ。」

「うおーん!よどじぐなぁ!」


こいつら………まあいいか。降りてきたばっかだし、しばらくこいつらと一緒にいても。






周りを見ると、大勢の人々が俺達を見ていた。町の衛兵もいる。


「おい、これは一体どういうことだ!」


ああ、そういえば2人ばかり死んでたな。


カフィが衛兵にヘルド家の紋章を見せて、事情を説明した。


「そういうことでありましたか!大変失礼致したしました!」

「ああ、いいよ。ご苦労様。」

「では、我々はそこの2人を回収して撤退しますので。」

「はい。お願い致します。」


外面がいいカフィお嬢様。



「で、いつこの町を出るんだ?」

「今日です。さっき決めました。」

「さっき決めた?」

「はい、今朝、王宮から手紙が届いたのです。」

「手紙の内容は?」


カフィが悲しそうな顔をした。

なんだ?何があった?


「……お父様が、国王反対派の刺客に刺されました。」


カフィの……父親?


「……お前の父親ってことは…」

「…トレン国王の弟…です。」

「…そうか…。お前の父親は生きてんのか?」

「はい、でも、気を失っだぎり、目をざまざないぞうでず……」


カフィが涙声になる。父親が目を覚まさないんだから、そりゃ心配だよな。

今朝俺の前では隠していたのか。


「よしわかった。朝食を食べたら、すぐに出発しよう。」

「はい…」


朝食のときもカフィはずっと元気がなかった。食事もほとんど口にしていない。





「なんとかお嬢様を元気づけられないものか…」


ファレスが悩んでいる。


「王都につくまでの2週間、あんなお嬢様を見るのは辛い…。」

「飯も食べてねえぞ。体が持つか?」

「やはりあの手紙を見せるべきではなかったか……」


朝食後、出発までの時間に、俺、ネメスさん、ファレスの3人は、『お嬢様を元気づけるにはどうすればいいか』という議題で話し合っていた。


「やはり、私の変顔で、笑わせるしか……」

「バカ、それで笑わなかったらもっと空気が重くなんだろ!」

「せめてネクロス様がお目覚めになられれば……」


さっきからずっとこれの繰り返しだ。

これ以上は拉致があかん。

本当はやりたくなかったが、仕方がない。


「カフィ、準備は?」

「出来ています……」

「よし、出発だ。一瞬で着くぞ。」

「え?…一瞬?」

「ああ、一瞬だ。」


仕方がないので、「《瞬間移動》」使うか。


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