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勇者の代わりは剣神様  作者: 冬空孫久
15/20

部屋、まだ見ぬ王女

眠りについたカフィを抱き上げる。今日はもう疲れただろう。部屋で寝かせてやろう。


そこへ、ネクロス公爵と国王がやって来た。2人共、なんか怒ってる。


「レスト君!今まで一体何処にいたのだ⁉︎」

「皆で探し回っていたのだぞ⁉︎」


え?そなの?数分いなかっただけだぞ?カフィが泣いていた理由もそれか?いや、こいつは恋か。


「いや、ちょっと海に…

「「はあっ⁉︎」」


2人揃って驚きの声を上げる。なんかお騒がせしたようで、ごめんなさい。


「海って君……釣りでもしていたのか?」

「海竜と戦ってた」

「「……………」」


2人共、呆れた表情になる。


「……もう驚かんぞ」

「……ついに〈上ボス〉にまで手を出したか」


手を出したって…俺が変な事したみたいな言い方はやめろ。


「君の強さは全く測れんなあ」

「それだけの実力を持ちながら…勿体無い」


ため息を漏らす国王と公爵。少しの沈黙の後、声を揃えて、


「「やはり君、騎士団に入らないか?」」

「カフィの部屋は何処だ?寝かせてやらないと」


ずっと抱えてるわけにもいかんしな。


「……ナチュラルにスルーしないでくれたまえよ」

「え?何が?」

「なかった事にされたぞ!」


実に面倒な兄弟だ。付き合ってられん。



「お嬢様のお部屋なら、そこの角を曲がった先だ」


そう言いながら階段を降りて来たのは、王宮警備隊副隊長のファレス。


一見、無口でクールな印象を受けるが、親しくなった途端感情を全面に出してくるので面倒だ。


「そうかありがとう。じゃあな!」


明るく笑って返すと、急いでその場を後にする。冗談じゃない。2人相手するだけでも大変なのに、これ以上増えたら流石に敵わん。撤退!


俺はカフィを抱えたまま早足で歩きだす。


「お、おい何処へ行く?」


ファレスが問うてくるが、無視。返事をしたら多分会話を続けてくるからな。


角を曲がる。また長い長い廊下が続くが、奥の方に一際扉の大きな部屋が僅かだが見える。恐らく、あそこがカフィの部屋だろう。


俺が走りだそうとしたその時、カフィの部屋より手前の階段から、派手な衣装に身を包んだ人が大勢降りて来た。何だ?舞踏会でもあったのか?人の波は、あっという間に廊下を埋め尽くした。



ちっ。……この状況はかなりまずいぞ。理由は2つ。


1つ目は、人が多いので、カフィの部屋まで到達するのが大変なことだ。しかも、公爵家の令嬢を抱えたまま通れば、間違いなく怪しまれるだろう。


2つ目は、舞踏会というのは、金品の強奪や暗殺にはうってつけだということ。

地球でもつい最近、200年くらい前に舞踏会の最中、国王が暗殺される事件があったと記憶している。あの中にそんな奴らが紛れている可能性も決して低くない。


つまり、あの中に飛び込めば、カフィは相当な危険に晒される。俺がいる以上、暗殺なんぞさせんが、カフィの部屋のおおよその位置が特定されたりすると後々面倒だ。


はい、なので、透明化します。


「《透明化》」


これで周りからは俺とカフィは見えない。俺たちからは見える。なんて素晴らしい魔法だろう。変態4人組がこの魔法を使えたら、絶対覗きやら何やらしてたと思う。

勿論、神であり紳士でもある俺はそんな事はしない。うん、しない。…………よし、しないぞ。


俺はゆっくり歩き出す。俺たちが近づいても、人混みの中の誰1人気づかない。魔力の感知に長けた者なら気づく事もできるが、そんな奴はいないようだ。


しかし、これで通り抜けられる程簡単ではない。このまま突っ込めば、確実に誰かにぶつかる。


そこで登場するのが、『浮遊』の魔法。

正確には複合魔法なのだが、その説明は今は省く。


ふわりと浮き上がり、人々の上を通り過ぎる。何人かと目が合った時はヒヤリとしたが、よく見たら天井を見つめているだけだったので安心した。

誰にもバレる事なく無事着地。人混みから離れ、カフィの部屋へ向かう。


その後は何事もなく部屋に到着。透明化を解除し、部屋の扉を………開かない。鍵がかかっている。


まあそうですよね。扉には鍵かけますよね。今まで普通に部屋に入ってたのがおかしいんですよね。俺がかけてなかったのが変なんですよね。


……カフィなら鍵を持ってるはずだ。探すか。寝ている女の体をまさぐる趣味はないので少し気が引けるが。

どこだ?ポケットか?あれ?こいつの寝巻き、ポケットが付いてない。


他に入れておける場所もないし………鍵持ってない?え?じゃあ何で鍵がかかってんの?誰かが中に入って内側から鍵をかけたとか………それって結構ヤバくね?


斬るか?斬ろう。いや、中から出て来た所をとっ捕まえるって手もあるな。少し待つか。


壁に寄りかかり、コソ泥が出てくるのを待つ。


3秒後_____出て来ない。


5秒後_____出て来ない。


10秒後_____出て来ない。よし、斬るか。



「扉だけでいいか。中まで斬ると後でカフィに怒られるからな」


「誰に怒られるのです?」

「うおっ⁉︎」


突如として聞こえてきた声に、腕の中で眠っているはずの少女に視線を向ける。カフィは、今起きたのですよと欠伸をひとつ。


俺は彼女を床に下ろしてやる。彼女は眠そうに目を掻きながら、


「で、何故私がレストさんを怒るのです?」


眠そうな声で問うてくる。まだ寝てりゃいいのに。


「いや、鍵かかってんだよ、お前の部屋、お前鍵持ってないのに」

「……!な、何故私が部屋の鍵を持っていない事を⁉︎」

「探した」

「ふぇっ⁉︎」


赤面し、自分の体を抱きしめるカフィ。これはまた見事に誤解を生んだな。


「いや、ポケットが付いてなかったから」

「あ、ああ、それで……ならいいです」


次からはもっと詳しく説明しよう。


「で、お前が鍵を持ってないのに鍵がかかってるんだよ」

「ええ、いつもの事です」


平然と答えるカフィ。


「……じゃあいつもどうしてるんだよ」

「中にいる人に開けてもらっているのです」

「部屋の中に誰かいるのか?」

「はい、お姉様です」

「お姉様?お前姉妹がいたのか?」

「実姉ではありません。従姉妹です。つまり、王女。この国の王女です」


なるほど、そうきたか。王女とは。そういや、王女と王妃はまだ見た事ねーな。ノルフのときもいなかったし。


「で、何でその王女がお前の部屋に?」

「あっ、レストさんは部屋に入っちゃダメです。部屋の中を見るのもダメです」

「お、おお、分かった」


俺の質問には答えず、思い出したようにカフィは言う。

年頃の女の子だもんな。プライベートを大切にしたいと思うのはどの世界でも一緒か。

もとより、俺はカフィを部屋まで送る事が目的だったので、それが果たされた今、カフィの部屋に用はない。俺も部屋に戻るとするか。


「でも、部屋に戻っちゃダメです」

「え?」


俺の心を読んだような一言。何でだ?どんどん行動が制限されていく。


「いいから、そこで待っていてください、許可が取れたら呼びますから」

「許可?何だか分からんが、待ってりゃいいんだろ?」

「ありがとうございますっ」


カフィが此方にまぶしいほどの笑顔を向けてきた。くそっ、それは反則だぞ………


「お姉様ー、私ですよー!」


カフィは扉に向かって言う。直後、部屋の扉が少しだけ開き、カフィが中に入ると、勢いよく閉じてしまった。廊下に1人残された俺は、国王達に見つからないよう、静かに透明化の魔法を発動した。


タイトルの「!」を消しました。

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