8話「明日へ向けての準備」
書庫から持ち出した、魔道書を読むニケ。
ふとした疑問から、魔法について一人で講義を始める...
夜の風が吹き抜けていく。
魔法の灯りを元にニケは、『雷魔法の書』を読んでいた。
明日は、村長の依頼で魔物退治へ行くのだ。
数が多いと、ミーチェは言っていた。
なら、範囲魔法のひとつくらい覚えておきたい。
ミーチェの力になりたい。
今のニケには、その気持ちが大きかった。
異世界に来て、1日目が終わりを迎えようとしていた。
「明日は、朝早くからでるんだっけ?」
昼間と違い、夜は時間がわからない。
書物に、目を通す。
呪文の種類は、ばらばらに記載されておりどれがどれだか...。
ふと、目にした呪文があった。
第一位階魔法範囲攻撃系列『雷電の咆哮』
この呪文なら使えるかなと、ニケは左手を構えた。
ふとした疑問、人差し指のみじゃないと魔線は出せないのか...。
ニケは、自分の手を見ながら考えた。
学校で教わることには、順序がある。
数学で習うのは、計算式だ。
どこかで間違えれば、答えは合わない。
それは、魔法に置き換えても言えることだ。
呪文の一字一句に、属性、効果、範囲、対象の意味を成すスペルがある。
スペルを間違えると、威力が下がったり、範囲が狭くなったり、対象が変わったりする。
魔道書に目を通すとわかるように、第一位階魔法から第三位階魔法との違いは、スペルの多さ。
基本的に第一位階魔法は短いが、第三位階魔法になると文字数が大幅に変わる。
例えば、『ライト』の魔法は、「″光よ我に灯りを″」と言う感じに短いが。
雷魔法第三位階魔法、『ツインライトニング』あたりになると長すぎて頭が痛い。
ツインライトニングの呪文は、″双方の雷電よ、力を我が手に。我は雷の力を求めるもの。雷電の名の下、敵を焼き尽くせ″という感じにすごく長い。とりあえず長い。
ミーチェの言っていた、人間が使える最大の位階魔法は第七位階。
想像するだけでも、長そうだ。
位階序列が高い魔法ほど、必要なスペルが増えていく。
魔法は、奥が深すぎる...。
第一位階魔法が足し算なら、第三位階魔法は分数に入ってレベルだ。
そして、第七位階魔法となると、それはもう因数分解レベル...。
正直頭が痛い...。
とりあえずピックアップした、雷魔法を覚えて明日に備えなければ...。
その前に、やってみたいことがあった。
ニケは、左手を構えた。
意識を人差し指から、中指へ...。
俺の理論があってれば...。
意識を集中させた。
すると、中指からの魔線が引けた。
「やった、成功したぞ!」
あとは、人差し指と中指で同時に魔線が引ければ...。
改めて、ニケは構えた。
人差し指と中指に意識を...!
だが、ニケの思っていた通りには事は進まなかった。
「やっぱ、だめかぁ...」
これが、成功していれば、理論上二重での直筆詠唱が可能になるのに...。
「なんとしても、習得したいものだ」
今夜は、この辺でやめておこう。
「時間は、たくさんある。焦らず、ゆっくりやればいいさ」
そういえば、さっきやろうとしていた呪文...普通に忘れていた。
「えーっと、どこだっけ」
雷魔法の書を開き、先ほど見つけた範囲魔法を探すニケ。
どこだったかな...。
少しして、先ほどの見つけた呪文のページにたどり着いた。
ニケは左手を構えた。
「えっと、″雷電よ、我に力を、音共に敵を弾け″雷電の咆哮!」
魔方陣が展開され、魔法が発動した。
魔方陣から放たれたのは、薄い膜のようなものだった。
膜は扇状に広がった、膜の後を追いかけるように稲妻が走った。
「ん、ん~...衝撃波のようなものかな?」
威力はあまりないようだった。
明日、使う場面があるようなら、使ってみよう。
そういってニケは、家の中へ入って行った。
明日は、怪我などなければいいのだけれど...。
今回は一人で魔法に対して苦闘する、ニケの姿を描いた物語になりました。
もともと、登場人物が少ないので話が長く続かず、基本的に魔法の哲学のような話になっていました。
今後は登場人物などが増えるので楽しみにしていてください。