84話「持ち物検査と大きくなった相棒と商人ギルドと」
ここ最近書きかたに迷子になっていて思うように文字が進みませぬ……
ビスク帝国帝都『ナイルダム』
国を1つにまとめ、創立されて70年。
皆が帝都の事を王都と言うのには理由がある。
ビスク帝国に名前が変わる前、そこはナルビーデュ共和国と言う国だった。
帝国が嫌われているわけではない。
長命な魔法使い、エルフ、ダークエルフたちが昔なじみにそう呼んでいるのが、今の若者達に影響を与えているのだ。
帝国が創立に至った経緯としてあげられるもの。
それは黒髪の存在が大きかった。
黒髪は異世界から召喚、または転移してくる。
今までにこの世界に召喚された黒髪は歴史上3人と少ない。
それに対して黒髪は月に3人以上が確認されている。
そして転生してくる黒髪に共通するのが特殊能力。
例えば、魔法が女性にしか使えないという世界の理を無視して、召喚術、錬金術、精霊術、死霊術の類が使える男性が多い。
死霊術は黒髪が作り出した新しい魔法とも言われている。
黒髪が転生する度に、魔法は世代を越え、進化を遂げてきた。
そう、ビスク帝国が創立された理由。
それは新しい魔法と共に、力をつけたからである。
1世代前の魔法は直筆詠唱によるものだった。
これは、魔線 を左右どちらかの手から『引き』、呪文を綴ることで魔法を発動させるものだ。
今の魔法は、口頭による呪文詠唱。
こちらは、魔法の呪文を喋ることによって詠唱するものだ。
呪文詠唱が世に広がり始めてから、新しい魔法ができた。
精霊術、召喚術、死霊術である。
なお、錬金術は魔線の応用で作られた魔方陣を、魔力を込めた籠手に刻むことで使用が可能になったそうだ。
直筆詠唱と、呪文詠唱との違い。
まず直筆詠唱は、定められた魔力消費量、呪文ごとに同じ威力が特徴だ。
つまり、魔力が少ないものでも詠唱することが可能と言うことだ。
対して呪文詠唱は完全な魔力依存だ。
魔力が高い者ほど威力が高く、消費量も変わってくる。
先立った呪文詠唱の研究の末、帝国は今だ不敗を誇る島国となった。
そしてここに、男の身でありながら魔法の直筆詠唱が行なえる少年がいた。
少年の名は、ニケ・スワムポール。
黒髪の綴り手。少年は噂でそう呼ばれている。
人差し指と中指で魔線を引く、通称『双線』の使い手であり、同時に両手でも引くことができる。これは、歴史上に存在する英雄の一人の成し得た詠唱の進化系。
英雄は右手から双線を引くと共に、口頭による別の魔法の呪文詠唱を成した。
人々はその詠唱方法を『多重詠唱』と名付けた。
今だ多重詠唱を成し得たのは、ニケを含め世界で3人。
そして、魔法の類も複数習得している。
実際、魔法のみを習得すると、錬金術、精霊術、召喚術の類の習得は才能がない限り無理とされている。
少年は、その全ての魔法を使い、なおかつ詠唱も行なえる。
そんな少年が、ナイルダム北側防壁門に到着したようだ―――
―――ニケを乗せたガメリの馬車が王都に到着した。
夕暮れが影を伸ばす時間。
夜に着く予定が少し早めに到着したのだ。
ガメリは商人なので通行書を持っていると言う。
「ニケ。中に入ったら真っ直ぐ進んでくるんだ。
突き当たりにわしのギルドがある。そこで待っているぞ」
そういい残し、ニケを荷物検査の列に並ばせた。
「わかった。すぐに向かうよ」
「あぁ。道草食うんじゃないぞ? がっははははは」
高らかに笑い、ガメリは門を潜った。
列は思っていたほど長く、少し時間がかかりそうだ。
荷物検査の順番が来るでの間、ニケはシロとじゃれあっていた。
ニケの手を噛もうとする、シロと遊んでいると順番がすぐに回ってくる。
「次、ん? 君は黒髪か」
「うん。黒髪」
「とりあえず、そこのホワイトウルフは君の召喚獣か?」
「そうだ。シロは俺の相棒なんだ」
男は黙々と何かに書き込んでいる。
「まず鞄の中身を見せてくれ」
言われたとおり、ニケは鞄をひっくり返した。
魔編みの鞄は、鞄に入れた者にしか取り出せない。
なおかつ、ひっくり返しても出てこないのだ。
「空か」
男は書き込み始める。
「次に、指につけているものを見せてくれ。
要は指輪を見せろっと言うことらしい。
ニケは指輪をはずし、男の隣にいた虫眼鏡を持った男に渡した。
「これは、はじめてみる指輪だね」
「それはこいつとの契約の際に」
「あぁ、そういうことか。
んで、この指輪なんだが。効果が書き換えられている」
「書き換え?」
「そうだ。何体か魔物を倒したときに変わった可能性が高い。
防御力が上がる効果が、装備している者の魔力を半減させるものになっている」
指輪を返されてはじめて気づく。
ニケの体内に蓄積されていた魔力が漏れ出していることに。
足元から砂埃が立つ。
ニケを取り巻くかのように、魔力の流れが生まれていた。
身体全体を覆う魔力も増幅したようにも感じられる。
シロの指輪をつけ、緑色の指輪は仕舞った。
「他に武器等はないな? ならば、行ってよし!」
ニケは、門をくぐる前にやりたいことがあった。
魔力が今まで以上に使える現状。シロを再度召喚したらどうなるのか。
思うが早く、シロを指輪に戻した。
「おいで、シロ!」
シロの召喚。
いつもなら小さな魔方陣が展開されるのだが。
今回は少し大きめに展開された。
突然魔方陣が展開されたことに、周囲にいた者たちが集まり始める。
魔方陣から姿を現しのたは、いつもよりふたまわりをど大きくなったシロだった。
体格も筋肉が増えたように感じ、4mはいっていると見える。
見物人たちが腰を抜かしたり、逃げ出したりと騒がしくなっていた。
ニケはシロの上に跨り、門を潜った―――
―――王都の中は夜と言うこともあって静かだった。
時々店の中から笑い声とかが聞こえる。
月明かりと松明の灯りを頼りに、ニケは突き当たりまで進んでいった。
聳え立つ大きな建物。
4階建てだろうか、窓の数からそう見える。
大きな扉を、ニケは叩いた。
「はーい」
中から声がした。
扉が開き、女性が顔を出した。
「どうかしました?」
「あの、ガメリさんにここに来いと」
「君がガメリさんが言ってた人だね!」
扉を全開にすると、女性は中へどうぞっと言った。
その言葉に甘え、ニケとシロが中へ。
豪華な内装。
敷物は手のこった物であり。
床材に使われている木材なんて、木目ひとつない上質なものばかりだ。
少ししてからガメリが階段を降りてきた。
「おぉ、やっときたか。って、シロのやつなんで急に大きく……」
「さっき、指輪鑑定してもらってさ、魔力が半減していることがわかったんだ」
「それで魔力が増えたことでシロも大きくなったと」
「そういうこと」
「この大きさだと通路通れないな……」
「あ、そうなんだ。ちょっと戻っててね、シロ」
シロは光と共に弾け、指輪へと消えていった。
「今日はもう遅い、ここに泊まって行くといい」
そういうと、ガメリは階段上り、部屋の前で止まった。
ニケはその後に続き、部屋へと案内される。
入り口とは違い、部屋は家具が少ない。
ベットと机、他は上着掛けなどしかない。
「とくにおもてなしもできないが、ゆっくりしていってくれ」
「ありがと、ガメリさん。泊まれるだけでありがたいよ」
「そういってもらえるだけでも嬉しいぞ! がっははははは!」
笑いながら、ガメリは部屋を後にした。
ニケはシロを呼び出し、ベットに寝転がった。
シロもニケの傍に寄り添うと、寝転がった。
シロの上でも寝れるんじゃないか。
思い立ったらすぐに行動。
シロの上に、ニケが寝転がる。
シロは嬉しそうに尻尾を振っていた。
「明日から師匠さがそうな、シロ」
ひとりと1匹の夜は更けていった……
ブクマ、コメント、評価ありがとうございます。
この調子で執筆していこうと思うので、これからも応援よろしくお願いします。
なお、新しく読まれた方。
最初のほうは文法も初心者の状態で、今の書きかたになり始めたのはここ最近です。
ブクマをして読まれる場合は笑って読んで下さい。
では、次回もお楽しみに!




