表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢にまで見たあの世界へ   作者: ゆめびと
第0章~転生、そして長い旅路~
79/93

79話「綴り手と不死者と」

文字の神、リーディアの顕現。

初めて見るその姿に、ニケは驚いた。

文字の精霊たちが、魔編みの鞄に集まる。

ニケの取り出す雷魔法の書を精霊達が持ち上げ、4つの呪文をニケに見せた。


 文字の精霊と共に、呪文を綴る。

 手に纏わりつく文字の精霊たちは、どこか楽しそうだ。

 唸り声が近づく。

 振り向く先にはアンデットと化したデオドラ。

 その後ろに続くアンデットの群れ。

 

「綴ろう。

″我、稲妻を司る物。

撃ち抜け、汝が誇る稲妻で!″」

 

 呪文を綴り終えると共に、文字の精霊達が重なり始める。

 6層に重なった呪文。

 全ての呪文に魔力が帯びた。

 

「貫け、ライトニング!」


 魔法名を叫ぶ。

 呪文が光を放ち、魔方陣と化す。

 ニケを背に、24の魔方陣が展開された。

 それぞれが重なることなく展開される魔方陣。

 ニケは、手で銃の形を作った。

 そのままデオドラ目掛けて銃を構える。

 魔方陣がデオドラを捉えた。

 

「一発ずつなんて勿体無い……」


 銃の形を成した手。

 その手を、バンっと言う声と共に少し上に動かしてみせる。

 魔法の発動。

 24発の稲妻が、デオドラ目掛け放たれた。

 その身体を貫通する。と、同時に焦げ臭さが漂う。

 膝をつくデオドラ。

 だが、デオドラの回復力は凄まじく、すぐに立ち上がる。

 ただ魔法を放つだけでは倒せない。


 だが綴れる魔法は雷属性のものばかりだ。

 このままでは、長期戦になり魔力が尽きる。

 それだけは勘弁だぜ。

 徐々に近づくアンデットの群れ。

 攻撃を仕掛けてくる様子がないデオドラ。

 両手から双線を引き始める。

 

「綴ろう。

″我、雷を操りし物。

汝、我が声に応え天から駆ける稲妻を。

敵を弾き、叩き伏せよ!″」


 文字の精霊達が、呪文に重なり始める。

 5層に重なる呪文。

 先ほどより1層少ない。

 制限でもあるのだろうか。もしくは位階序列と関係が。

 呪文が魔力を帯び始める。


「雷電の落砲!」


 呪文が形を成し、デオドラを中心に魔方陣が頭上に展開。

 他のアンデットの頭上にも幾つか展開される。

 ニケは、魔法を発動させようとした。

 だが、目の前にいるデオドラの姿がない。

 一体どこに。

 気づくが遅く、デオドラはニケの背後へと移動。

 急いでデオドラに意識を向け、魔方陣の座標指定をする。

 ニケの腹部へと、デオドラの腕が猛威を振るった。

 かわそうとするが、ニケの反射神経の上を行くデオドラの動体視力。

 反応できずに、腹部へと幾度となく攻撃を食らった。

 腹部への痛みは並外れた激痛だ。

 腹部を押さえるニケに、デオドラの蹴りが襲い掛かる。

 顔を目掛けて足が迫る。間に合わない……。

 ニケは歯を食いしばった。

 顔に伝わる足の感覚。

 痛みより先に、身体が吹き飛ぶ。

 水辺に身体を転がされた。

 濡れる服。

 次第に感じる痛み。

 いや、痛みを通り越して熱と錯覚しているようだ。

 起き上がるが遅く、デオドラがニケの頭を掴む。

 持ち上げられる身体。

 腹部の痛み、頬の熱。力なくうな垂れる腕。

 トドメを刺すかのように、デオドラは腕を振り上げる。


「まだ終わらせる気はないぜ」


 終わらせる気がない、その言葉に、デオドラは動きを止めた。

 まだ言葉が通じるのか。いや、危険を察知したのだ。

 頭上に展開された魔方陣。

 瞬時に魔法が発動した。

 降り注ぐ衝撃波。

 首の骨を折り、背骨、股関節、膝、足首を粉砕していく。

 横目に見えるアンデットの群れも、同じ状態でミンチになっていた。

 ニケは、すぐさま水辺を避けた。

 魔法による、稲妻の感電を回避するためだ。

 すぐさま双線を引く。


「綴ろう。

″我、捕縛を望むもの。

汝、その流れる稲妻を鎖と化し、捕縛を成せ!」


 ニケの意識内での文字の精霊の制御。

 数はいらない、動きさえ止めれればそれだけで充分だ。

 呪文に魔力が帯びた。


「サンダーチェーン!」


 魔法の名を叫ぶ。

 呪文が形を成し、4つの魔方陣を展開する。

 すぐさま、デオドラに意識を向け、魔法を発動させた。

 魔方陣から放たれる、紫色の光を帯びた鎖。

 手首、足首を掴み、その身体を宙へと晒した。

 錬金術を発動させる。

 左手の練成の籠手に魔力が宿る。

 そのまま刀を練成。

 右手で双線を引く。


「さぁ、これで終わりにしようじゃないか。

綴ろう。

″我、稲妻、雷と共にある者。

汝の力を我の物とし。

我を稲妻と化し、共に駆けよ」


 文字の精霊達が、呪文に重なり始めた。

 位階序列があがるにつれ、文字数が増える。

 呪文が魔力を帯びる。

 ニケはデオドラを見据える。


「……ライトニングステップ」

 

 姿勢を屈め、小さく呟く。

 呪文が形を成し、20の魔方陣がニケの足元に展開された。

 発動させると同時に駆ける。

 その身体が、稲妻と化した。

 一瞬で移動する視界。

 気づくと、デオドラを通り過ぎていた。

 目に意識を集中させる。

 徐々に遅くなる世界。

 ニケの能力。反射神経、動体視力を人の領域からかけ離れた領域へと踏み入れる。

 見える世界は0、1秒の10分の1秒。

 その状態から魔法を発動させた。

 刀を振るい、なんとかデオドラの身体を斬る。

 往復による剣劇。

 切り刻まれる身体は、無残にも両断されていく。

 視界が速度を取り戻し始めると同時に、魔方陣を使い切った。

 名の通りのミンチになったデオドラの身体。

 この状態からでも再生ができるのか、ミンチとなった身体が動き始める。

 間に合うか。

 最後の魔力を使い切り、最後の魔法を綴り始めた。


「綴ろう。

″我、火を志す者。

汝、その火の力を敵にぶつけよ″」


「ニケちゃん、私も力を貸すよ」


 いつの間に傍にいたのか。

 リーディアが呪文に手を添える。

 綴られた呪文が複成される。

 その数、8。

 それぞれの呪文に文字の精霊達が重なった。

 かなりの数だ、発動したら魔力不足は回避できないだろう。

 だが、この攻撃に賭けるしかない。


「ファイヤーボール!」


 成された魔方陣の数々。

 72の魔方陣が、デオドラを中心にドーム状に並ぶ。

 

「これで終わりだッ!」


 一斉に発動された魔法。

 中央にミンチとなったデオドラ目掛けて。

 着弾する火の玉が、デオドラを燃やし始める。

 赤く燃え上がる炎。

 その中に見える黒き陰。

 人影になるが早く、形を失う。

 炎の柱が高らかとそびえたった。

 ニケのもとへと歩いてくるアンデットが崩れ落ちていく。

 炎が消え、その場には白き灰のみがあった。

 

「じゃぁな、デオドラ」


 ニケの言葉に応えるかのように、白き灰は北風と共に遥か彼方へと消えていった……。

 

書くのに時間がかかりました。

少し意識するどころか、かなり意識してました。

今後も成長できることを祈ります。

では、次回もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ